第3話 ゴルディロックスの鉱石ラジオ

瀬戸大橋の周辺に広がる番の州工業地帯は世界的シェアの企業が工場を立てている。

その街並みを背に私は瀬戸大橋に沿ってバイクを走らせ、瀬戸大橋記念公園に向かった。

 私はそこで上映される番組を見るためにバイクを走らす。道の行き止まりに着くと、駐車場はどこか辺りを見回す。何とか見つけた私はバイクの止められそうな場所が見つからないため、自動車用の駐車スペースにスタンドを立てた。

 階段を上り終えると、目の前には潮風と泡立つ瀬戸内海に、本州にまで伸びる白い橋と東山魁夷の先祖が住んでいた沙弥島と芸術的な建物が見えた。

「しかし、いつ見てもミスマッチだな」

 瀬戸大橋記念公園の建物を見た時の私の感じる印象だった。

 階段から歩いていると、外のコンサートホールでは音楽会が行われていて、音楽が潮風に乗って流れてくる。

 瀬戸大橋記念公園の建物の中に入ると、香川県の立体地図と名所などを伝える映像が流されていた。

 小学校五年の頃に行った時とはかなり様変わりしていた。映像番組が始まるのがまだ時間がかかる。それまでに瀬戸大橋の歴史についてみていくことにした。

 最初に香川の鉄道の父ともいえる大久保諶之丞の銅像を通り過ぎて、紫雲丸と伊予丸型連絡船の模型を見て、次に瀬戸大橋の建設過程を見ていった。

 次に昔はなかった映像番組を鑑賞した。ゴルゴ13でも登場した伝説の千トン列車の実物映像やプロジェクトⅩの番組を懐かしく見ていた。

「うわあ、これニコ動で見たことある」

 十両近くの電気機関車が時速一〇〇キロで走る姿は鉄道ファンの心を擽るものがあった。

 またプロジェクトⅩの番組も改めてみて今度は4Kディマスターで再放送したら録画しようと考えてしまった。

 ふと、大久保諶之丞の昔はほらとされた言葉に目が付いた。

(私は財田山に灯台を作って、そこで月まで行くんだ)

 昔は大ぼら扱いだが、今ではガンダム00やエースコンバット7で登場している。

「軌道上エレベーターを無理やりくっつけたな」

 そうつぶやいて、私はブリッジシアターに戻り、無料WiFiで動画を見ていた。

 そろそろ時間になる、私はブリッジシアターに入り感傷の場所を探す。映像はおじゃる丸のエンディングだった。

 一番後ろの席に腰を下ろすと最初の番組である『星屑の鉱石ラジオ』が始まる。光り輝く瀬戸大橋のたもとで少年はニホンイタチとハドロンサウルスという恐竜が鬱陶しい会話をしながらも、鉱石ラジオで宇宙の音を聞くという物語。やがて後半になると少年は東大の名誉教授佐藤勝彦に変わりそこからは普通の人間には理解できない宇宙創成とインフレーション理論の論文をある程度分かりやすく教えてくれた。

「おい、子供が理解するには厳しいだろう」

 実際、大人じゃないとわからないと言いたくなる内容だった。やがて佐藤勝彦氏の人生を紹介して二匹の生き物がエンディングを飾って終わった。

 次にプラネタリウム番組の『グッドナイト・ゴルディロックス』を鑑賞した。女優の中越典子が童話三匹の熊の話をして始まった。そしてそのあらすじの後に古谷一行がケプラー宇宙望遠鏡の発見した一癖も二癖もある地球型もしくはスーパーアースを紹介する。名前も神々の名前を取ったものでオシリスやベレルフォンなどと呼んでいた。

 また、地球と太陽によって丁度良い軌道をさっきの話の主人公の名前を取ってゴルディロックスゾーンと説明した。最も私はハビタブルゾーンの方がしっくりくると思うが。

 惑星の組成などを調べるためにドップラー効果などを使っていることを説明し、ゴルディロックスゾーンが太陽家は勿論その他の星系に銀河系に至るまで存在すると説明した。

 そして、タイトルの『グッドナイト・ゴルディロックス』という言葉を中越と古谷が口にして終わった。

「後者の方はまた見てみたいな」

 その時の率直の感想がそれでかなり面白いと言えた。

 映画鑑賞から外に出てストレッチしながら、自販機で買った炭酸水を飲んだ。

「鉱石ラジオでも聞いてみたいな」

 その一言の直後に快速マリンライナーが橋の下を走っていた。その轟音を耳にして私はゴルディロックスが鉱石ラジオを使って宇宙の音を聞いているのを想像してしまった。

 勿論さっきの童話の時代に鉱石ラジオという進んだ機会があるとは思ってはいないが、銛で迷った彼女にはひと時の幸せかもしれない。

 炭酸をゴミ箱に入れて駐輪したバイクにまたがると僕は瀬戸大橋沿いを走っていった。

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