五人そろって

十三岡繁

五人そろって

「総司令、全員集まりました」そう言ったのはリーダーのレッドだった。


「うむ。みんなご苦労様。今日集まってもらったのは本部からの通達の件だ」


「なんですか、また隊員の男女比の話ですか?これは差別じゃなくて、体力とか技能で選抜した結果がたまたまこうなってるって、まだ納得してもらえないんですか?」レッドは不満顔だ。


「いや、それも相変わらずなんだが、今回はその唯一の女性隊員ピンクについてなんだ」総司令が言う。


「え!?私なんかやっちゃいました?最近夜遊びも控えてるんだけどな…」


「唯一の女性隊員がなんでピンクなんだというクレームが入ったらしい。ピンクは女性の色だという間違った先入観を子供に植え付ける可能性がある。だから隊員同士で色をチェンジしてくれないかとの事だ」


「なんだそんな事ですか。くだらない。色なんて何でもいいですよ。それなら僕がピンクと入れ替わりましょう」レッドが笑いながら言った。


「いやレッドじゃピンクとチェンジしても大差ないんだよ。先日便所のサイン取り替えたろ?男子が青で女子が赤というのは間違った固定観念だという本部からの指示だ」そう言って総司令はまたピンクの方を見た。


「ピンクは何色がいいとかあるかな?」


「そうね、私は黄色が好きかな」


 ピンクの発言を受けて総司令はイエローの方を見る。


「おいどんは別に何色でも構わんですたい。しかしイエローと言えば大食いのカレー好きというのが伝統でごわす。ピンクは辛い物苦手じゃろう?」イエローが言った。


「カレーには甘口もあるでしょう?今はフードファイターだって女性が活躍してるじゃない」ピンクが言い返す。


「ピンクは僕と一緒で食細いよね」グリーンが言った。


 そのやり取りを聞いていた総司令も口を開く。

「大食いはともかく黄色じゃ中性的なんだよな。それだと納得してもらえるかどうか…。やはりグリーンかブルーあたりじゃないとOKが出ないような気がする」


「イエローが中性的だっていうなら、グリーンも似たようなもんですよね」グリーンが言った。


一同は一斉にブルーの方を見る。

「…俺はピンクなんて嫌ですよ!!」ブルーが叫ぶ。


「なんで?」ピンクが聞く。


「そんな女みたいな色、嫌に決まってるだろ!ピンクになれっていうなら俺は戦隊を抜ける」ブルーは声を荒げた。


「ほーらあんたみたいなのがいるから、こういう話になるのよ。大体あきらは男尊女卑よね。普段からそういうの漏れ出てるんだから」


「勤務中は名前で呼ぶなって言ってるだろっ!」


「え!?二人はつきあってるんでごわすか?」


 話が良く分からなくなってきたので、総司令がまとめに入った。

「ならピンクがブルーになって、ブルーはグリーンをやればいい。グリーンはレッドになって、レッドはイエローになる。レッドも結構大食いだったよな。最後にイエローがピンクになる。これでうまく納まるんじゃないか?ブルーもグリーンなら文句ないだろう?」


「…まぁグリーンならいいですよ」ブルーは不満げに答えた。ピンクはまだブルーの方を睨んでいる。なぜかレッドは少し落ち込んでいるように見えた。



……二週間後


「総司令どうでした?」レッドが聞いた。


「ブルーにも『母なる海』みたいに、女性的なイメージがあるんじゃないかという意見が出たらしい」


「そんな事言ったら何色だってだめじゃないですか?!」グリーンが言った。


 総司令は答える。

「そう、だから色自体割り振るのをやめてはどうかという事になった。マンセル値で言えば色相はNで彩度はゼロにして明度で区分する」


「良く分からないでごわすな」


「そうだな分かりやすく言えば…ホワイトとブラック、それにグレーみたいな感じだ」総司令が言った。


「残り二人はどうするんですか?」レッドが聞く。


「ライトグレーとダークグレーとかかな…」総司令の言葉を受けて一同は黙り込んでしまった。その静寂をピンクが破る。


「うん。でも想像したら結構クールでかっこいいかもしれないわね。じゃあ私は純白のホワイトで決まりね」


 それを聞いて総司令が言った。

「それはそれで問題になりそうだから、ピンクはグレーがいいだろう」


「いやよ!ねずみ色なんて可愛くないじゃない!!」


<了>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る