七色仮面の秘密

永嶋良一

KAC20247 参加作品

 東京の夜はいつものように賑やかだった。街の中は七色のネオンの光に彩られていた。


 しかし、その華やかさの裏で、一つの影が静かに動いていた。それは、金色の仮面をかぶった正義の使者・七色仮面だった。そして、その正体は・・・神出鬼没で変装の名人である私立探偵・蘭光太郎なのだ。


 七色仮面は感じていた。


 「また、この街に不穏な空気が流れている・・・」


 彼の直感は決して外れることはない。すると、七色仮面の仮面の色が金色から赤に変化した。彼の仮面は、彼の感情に応じて七つの色に変わるのだ。赤は何かの直感を感じた色だった。そして、その直感が彼を古びた倉庫街へと導いた。


 一つの倉庫の扉が少しだけ開いていた。中から怪しいオレンジ色の光が漏れている。七色仮面は息を潜め、静かに倉庫の中へと滑り込んだ。そこには、予想もしなかった光景が広がっていた・・・


 倉庫の中には、巨大な機械があって、その機械からドロドロとした液体が吐き出されていたのだ。その液体からは奇妙な七色の輝きが放たれていた。すると、七色仮面の仮面の色が赤色から青に変化した。青は驚きの色だ。


 七色仮面は、七色に光るその液体を覗き込んだ。


 「これは、いったい何なんだ?」


 すると、仮面の色が青から緑に変わった。緑は彼が何かを考えているときの色だった。


 七色仮面には思い当たることがあった。今度は、七色仮面の仮面が緑から桃色に変わった。桃色は考えがまとまったり、何かを発見したときの色だ。


 七色仮面はつぶやいた。


 「これは・・・まさか、メタモルフォーゼ液?」


 メタモルフォーゼ液は、人間を瞬く間に溶かしてしまうという恐ろしい液体だった。七色仮面は一度だけ、メタモルフォーゼ液のことを都市伝説として聞いたことがあった。しかし、それが現実に存在するとは・・・


 七色仮面は周りを見まわした。周囲には多くの机があって、その上には試験管やらビーカーやらが散乱していた。


 何ということだ。ここは、メタモルフォーゼ液を開発する実験室だったのだ。

 

 そのとき、倉庫の奥から足音が聞こえてきた。七色仮面は機械の影に身を隠して、息を潜めた。彼の仮面の色が桃色から黄色に変わった。黄色は警戒の色だ。


 彼の前に現れたのは男だった。その男は鋭い目つきをして、黒いスーツに身を包んでいた。彼の手にはメタモルフォーゼ液が入った試験管が握られていた。


 謎の男の声が倉庫の中に響いた。不気味な声だった。


 「ようやく、メタモルフォーゼ液が完成したぞ。これを使えば、世界征服など簡単だ。いよいよ世界の征服に取りかかるぞ」


 謎の男が高らかに笑った。


 「ワハハハハハ」


 すると、七色仮面の仮面の色が黄色から黒に変わった。黒は怒りの色だ。


 「これは世界の危機だ。何としてでも、世界征服を阻止しなければ・・・」


 七色仮面は得意の二丁拳銃を取り出した。


 「ここからが、私の見せ場だ」


 七色仮面の仮面の色が黒から金色に戻った。金色は普段の仮面の色でもあり、彼が悪人と対決するときの色でもあった。


 七色仮面は悪と対峙するときは、必ず金色の仮面をかぶって、高笑いとともに悪人の前に現れるのだ。


 七色仮面は、ゆっくりと物陰から男の前に姿を現した。


 いつものように、七色仮面の高笑いが倉庫の中に響いた。


 「あははははは」


 その声に驚いて、謎の男が七色仮面を振り返った。謎の男も笑った。


 「なんだ、そのオモロイ仮面は? ワハハハハハ」


 その笑い声を聞いて、七色仮面が笑った。笑いは笑いを呼ぶのだ。


 「何で笑うねん。あはははははは」


 謎の男も笑った。


 「お前の仮面がオモロすぎるねん。ワハハハハハ」


 七色仮面も笑った。


 「しゃあないやろ、これしかないんや。あははははは」


 謎の男も笑った。


 「ワハハハハハ」


 七色仮面も笑った。


 「あははははは」


 謎の男がお腹をよじって笑った。


 「ワハハハハハ」


 七色仮面もお腹を押さえて笑った。


 「あははははは」


 こうして、二人は倉庫の中でいつまでも笑いあった。


 「ワハハハハハ」


 「あははははは」


 ・・・・・・・・


 すると、倉庫の外にパトカーが止まる音が聞こえた。


 倉庫の中に大勢の警官が入ってきた。先頭は警視庁の山本警部だ。山本警部が言った。


 「ここだ。笑い声がやかましいと苦情があったのは・・・」


 山本警部が叫んだ。


 「あっ、七色仮面だ。七色仮面の前にいるのが悪者に違いない。それ、逮捕だ」


 謎の男はたちまち逮捕されて、連行されていった。謎の男の「ワハハハハハ」と笑う声がパトカーの音とともに小さくなっていった。


 山本警部が、笑っている七色仮面と向き合った。


 「七色仮面、いつもご苦労様です。・・・・プハッ、ワハハハハハ・・・いつ見ても、オモロイ仮面ですなあ。・・・・ワハハハハハ」


 七色仮面も笑った。笑いは笑いを呼ぶのだ。


 「山本警部。オモロイて言わんといて。あははははは」


 山本警部が笑った。


 「せやけど、オモロイねん。ワハハハハハ」


 七色仮面も笑った。


 「しゃあないやんけ。こんな顔の仮面なんや。あははははは」


 「やめてくれ。オモロて死んでまうわ。ワハハハハハ」


 二人はいつまでも笑い続けた。


 「ワハハハハハ」


 「あははははは」


 ・・・・・・・・


 この世に悪がある限り、二丁拳銃を持ち、高笑いとともに七色仮面は現れる。神出鬼没の正義の使者・七色仮面。そして、その正体は・・・私立探偵・蘭光太郎であった。


 七色仮面は悪と対峙するときは、必ず金色の仮面をかぶって、高笑いとともに悪人の前に現れる。その仮面の金色には秘密があった。七色仮面が現れると、仮面の金色があまりにド派手なので、悪人たちは仮面から眼をそらすことができなくなってしまうのだ。そして、悪人たちは、七色仮面の金色のオモロイ仮面に笑いを耐え切れず・・・笑い転げて動けなくなり・・・みんな、捕まってしまうのだ。


 こうして、今日もどこかで、七色仮面の金色のオモロイ仮面を見た悪人が、七色仮面とともに笑い転げているのだ。・・・


 「ワハハハハハ」


 「あははははは」


            了 

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七色仮面の秘密 永嶋良一 @azuki-takuan

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