似合う似合わない

赤城ハル

第1話

 俺は青色、妹はピンク、弟は緑色。

 そんなイメージを母は持っているのか、子供の頃、いつもそのイメージ色の服を買ってくる。

 さらに「あんたはすぐ汚すから」という理由で群青色が多かった。まあ、ピンクはさすがに着ないけどさ。それでも青ばかり買ってくるのは異常だ。

 それで中学生の頃からは自分で服を買うことにしている。パーカーとかは一色系が多いけど、シャツとかチェックやボーダー、英字やマークのあるシャツを買った。でも結局は別に服に対してそんなに興味はなかったのか、似たような色ばかりになった。

 青が多く、次に黒。

 さらに歳をとるにつれ、明るい色は減り、黒かグレー、青色ばかり。


  ◯


「ムムムッ」

 ベッドの上にシャツを並べるが、似たようなものばかり。

「買いに行くか」

 そして俺は全国展開している衣料品チェーンストアに向かう。

 青、黒、グレー以外の色として緑、白、……赤は歳的にちょっと抵抗があるな。

 それらシャツを手にしてレジへ。

 最近はスーパーだけでなく、衣料品店でもセルフレジになってきた。

 服を買って、家に戻ると妹が俺の買った服をしつこく聞く。

 別にどうでもいいのに、なぜかいつもうるさく聞いてくる。

 仕方ないので買った服を見せると、勝手に広げて、色と大きさに文句をつける。

 もっと明るい色をとか言うが、もう歳なんだよ。明るい色なんて若作りではないか。

 そして俺が試着をせずに買ったら、さらにあれこれとケチをつけてきた。

 妹ととしては服は試着してナンボのようだ。

 俺としたら服は着れたらいいだけ。

 それ以上は求めていない。

 俺個人イケメンでもないし、どんなに様をつけても同じ。

 というか俺は言いたい。

 鏡の前でポーズをとるのはなんの意味があるのかと。

 お前は普段からポーズをとるのか。

 日常生活でポーズなんて鏡の前か写真の時だけだ。

 それにポーズをとったからといって、見栄えがよくなるわけでもない。

 気に入った色。そしてサイズが合えば、それでいい。

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似合う似合わない 赤城ハル @akagi-haru

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