アイシャの日記〜せんせいを止めろ!!

タルタルソース柱島

アイシャの異世界日記 第528日目 怪しい夜のお店

「トリあえずナマでいってみるか・・・・・・」

え!? 今、生でいくって言った???

 あたしはハッとして顔を上げる。

 目の前でお品書きっぽい冊子を片手にモジャモジャ銀髪の男が呟いた。

「ちょ! ちょっと待って! 待ってくださいせんせい!!!」

テーブルをバンっと叩き、身を乗り出す。

 あたしの赤髪が激しく揺れた。

 生でいくって、そのトリだかなんだか分かんないけどトリっぽいヤツを未調理のままかじるって事だよね!?

「ん? どうしたのアイシャ」

オーダーを告げかけた彼の手が止まる。

 よし! 初手は上々ね!

 優速を利してナントカ。

 戦いの鉄則だ。


「生はダメです!!」

まずは端的に結論を告げる。

 話術における必殺技だってお婆ちゃんが言っていた。

 だからあたしは戦いが始まると名乗りあげたりせずに「おまえをころす」とだけ告げる。


「いい? せんせい! 鶏肉の生食は食中毒になる危険性が高いからダメなんだよ! カンピロバクターやサルモネラなどによる食中毒菌が付いてることがあって少量でも食中毒症状を起こし、重症化する危険あるんだ!!」

彼の目が驚き見開かれる。

「ほお。アイシャ、賢くなったねえ」

パチパチと拍手するせんせい。

 普段、原人かバーサーカーみたいな事は慎みなさい、とかいうクセに。

 このまま畳み掛けるッ!!

「鶏肉を調理する際は、十分に焼くの!! そうしたら食中毒菌は死滅。これは戦いだから仕方ないの。生のトリ肉を食べてしまった場合、腹痛、下痢、発熱等の症状が出ちゃうんだよ!!!」

相手に反撃の機会を与えず猛攻をかける。


「うんうん。アイシャは賢くなったなあ。でもね僕は食材を生で食べたりしないよ」

「え、でも」

確か、釣った魚を頭からボリボリと食ってたような。

「まあ、それはともかく一杯やらせてもらうよ」

油断した隙にせんせいが『トリあえずナマ』とやらを注文する。

「ああー」

あたしの間の抜けた声、そして指差す先に気がついたせんせいが向き直る

「もしかして、このマスコットの事かい? これは食材じゃなくてカク◯厶っていう作家集団の紋章だよ」

そして、運ばれてきた黄色のお◯っこみたいな液体をガブ飲みしながらせんせいが鼻で笑った。

「異世界に転移したんだ。せっかくの機会だよ。アイシャももっと順応しないと」

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