ササマツさんに関する記述

すみはし

ササマツさん

昔から私は“夢見がち”なタイプだったと思う。


とは言っても文字通りの方で、ぐっすりと安眠することが少なく浅い睡眠の中で淡く緩い夢を見ることが多かった。


小さい頃は姉の影響で怖い話が好きで、怖がりのくせにホラー漫画やゲームなどを見ていたものだから、良く怖い夢も見ていたように思う。


例を挙げると、家族が鬼になって追いかけてきたり、ジェットコースターが落ちるすれすれのところに虫が大量にいたり、そんな感じ。

良くも悪くも起きてしまえばまどろみの中でゆっくり消えていくことがほとんどなのだけど。



そんな中、中学生の時に私は彼に出会った。

地域のごみ拾いのようなイベントで、学生は皆制服を着ている。学年別に3色に色付けされており私は制服に緑色のワッペンを付けていた。

面倒だとは思いつつトングのようなもので空き缶やらクシャクシャになったチラシを拾い上げてはゴミ袋に放り込んでいく。


冬と言うにはまだ暖かく、心地よい風が吹いている。またひとつ拾おうとした紙が流され、風の向こうでふと目に付いたのは同じ緑色のワッペンがついた男性だった。


見覚えは無いが何となく目が離せなかった。中学生の私からは少し大人びて見えたので、恐らく3つ上なのだろう。

私が逃した紙は彼が拾い、ぼうっと見つめる私に気づき不思議そうな顔をしたものの、柔らかにふっと笑ってくれた。

笑ってくれたことまでは覚えているのに、そこで目が覚めてしまったせいで会話をすることまでは叶わず、爽やかなさっぱりとした雰囲気だけが頭に残っている。


たかが夢なのだけど、こんなにハッキリ最初から最後まで夢を見たのは初めてだったので、すごく不思議な気持ちだった。



二度目に彼に会ったのは高校生のとき。

修学旅行の夢を見た。同じグループの友人たちと、恐らく京都であろう食べ歩きや土産屋の並ぶ石畳の坂道を登っている。


露店のコロッケを食べながら歩いていると、向かいから数人の男性グループがワイワイと話しながら坂を下って来るのに気づく。

賑やかな話し声と何とない懐かしさに顔を上げると、一度だけ見た事のあるあの彼が笑っていて、ただそれだけ、ただそれだけなのだけど、きっと、運命だと思った。



2度の夢を経て私がわかったことがある。夢の流れは前述の通りで、夢の流れはかなりしっかり覚えており、ほぼ唯一と言っていいまともな認識をしていること。

流れは覚えているが細かい会話の内容は覚えていないこと。

大した会話はしていないものの彼が“ササマツさん”だということ。(定かでは無いが何故か“笹松さん”だと思う)


初めて見た夢から3年が経った時、夢の中の私も“ササマツさん”も同じだけ歳を重ねていること。

“ササマツさん”は黒髪、ミディアム丈の真ん中分けをしたさっぱりした顔の人で、身長はそれほど高くは無いが細身であること。

ここまで雰囲気は覚えているもののそこにどうしても確信はもてないこと。

以上が私の整理した情報である。


整理した、と言っても印象に残る2度の夢をまとめて並べただけの、確かな真実など何一つ含まれないものなのだけど。


これ以降に彼を見かけた、情報を見つけたなどがあれば追記していこうと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ササマツさんに関する記述 すみはし @sumikko0020

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ