第2話 口裂け女って

「夏だなぁ」

 放課後、いまだに自分の背中よりも大きいランドセルを背負いながらダイキは言う。

「夏といえば、納涼だな! 納涼といえば、怪談!」


「こんなに暑いもんね」

 ゴローは汗を拭いながら応える。


「おい、口裂け女って知ってるか?」


「マスクを着けた女性で、『私奇麗?』って訊いてくる妖怪みたいなやつだよね。マスク姿はすごくキレイだけど、マスクの下の口は大きく裂けてるっていう」

 ヒカルが眼鏡の位置を直しながら言う。

「その口裂け女がどうかしたの?」


「最近コロナ禍でマスクつけていること増えただろ? だからあいつも自由に動き回れるようになったんじゃないかと思ってな」


「なるほど」


「それでさ、もし今あいつに遭ったらどうすべきかと考えようと思う」


「妖怪なんて、本当にいるのかなぁ」

 半信半疑のゴロー。


「ポマードって言うのが一説には有力だと言われているよね。匂いが苦手だとかで」

 またヒカルが口裂け女について知っていることを話す。

 ヒカルは本好きで、そういったジャンルも読むので詳しいらしい。


「じゃあそれでいいんじゃないの?」


「いや、それはどうかな!」

 待ってましたと言わんばかりの間で、ダイキはキリリとした表情で二人を見る。

 その表情は何を考えているのか。

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