『アルバム』

苺香

第1話

1991年、当時18歳だった女優、宮沢りえが「SantaFe]の写真集で社会現象を巻き起こした。

1992年10月「an・an]では篠山紀信さん撮影の”きれいな裸”という特集が組まれた。


 当時、女子大生だった私は、芸術大学写真学科の男と付き合っていた。

グループでスキーに行った際、スキーが初めてだった私は、

「私を置いていかないよね」

とその日、初めて会ったスキー上級者のその男に声をかけたのだ。

ただ単に、スキーを教えて欲しかっただけなのに、当たり前のように勘違いしてくれて、1日中、手取り足取り教えてくれたものだ。

 そんな二人が付き合うまでに、そう時間がかからないことぐらい、簡単にわかるだろう。

 

 写真学科の学生と、若い女子大生がその時代を過ごすと何が起こるかもわかるだろう。記念にとセミヌード写真集を作成したのだ。もちろん絡みはなし。芸術的な裸である。


 彼氏とは別れても、写真は残る。

なぜなら、フイルムの写真などというのは現像をするからだ。ましてや、記念なのだから、1冊のアルバムに纏めた。


 時が経ち、社会人になり、縁あって夫とも出会った。夫にも見せてあげたら、一晩悩んでいたが、受け入れてくれた。

 しかしながら、そんなものはクローゼットの奥に仕舞いこむに限る。2階の一番奥の部屋の一番上の棚の奥に仕舞い込んだ。親しい友人には、私に何かあったら、クローゼットの奥にあるアルバムを処分してくれるようお願いした。


 その後、最愛の息子に恵まれる。家族の世話に明け暮れ、再就職先では新しい業務に邁進し、日々は過ぎて行った…


 大学生になった長男が、あまり話をしてくれず、彼の動向を探ろうと、こっそり彼のTwitterを盗み見た私の目に飛び込んできた呟きは、

「母親の若かりし頃のセミヌード写真集が、部屋の奥から見つかったけど、こんなん息子の部屋に置いとかんとって欲しいわ」


…あぁ。いつしか、2階の奥の部屋は息子の部屋になっていたのだ。

呟きに激しく共感したがもう遅いのだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

『アルバム』 苺香 @mochabooks

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画