意外な展開

 幸は星奈の手元をみていた。

 ウットリしながらコリュカは幸をみている。

 それに気づくも幸は知らないフリをした。

 星奈は両手を岩石に翳している。


 《妄想生成-≫幻獣!!》――「いでよ! 炎龍マグブロス!!」


 そう言い放つと岩石が激しく発光した。すると、徐々に姿を炎龍マグブロスに変化させていく。


「あーえっと……それ数年前に流行ったアニメのモンスターだよな……」


 幸はそう言い、呆れ顔になる。


「数年前……そ、そうか……もうそんなになるんだ。てか、お前も観てたのか?」

「ああ……三年前に終わっているぞ。最後は、感動して泣いた」

「……そうか。ボクも好きで観てた。だけど……戻れたとしても、観れないかもしれないんだな」


 そう言い星奈は、ガッカリし俯いた。


「ネット動画でなら観れるはずだ」

「ネット動画? そんなのがあるのか……」

「あるが……月々の支払いが発生するけどな」


 それを聞き星奈は目を輝かせる。


「そうか……元の世界に帰って観たい。今まで観れなかった分のアニメを……でも、今は……」

「そもそも……なんでこんなことをしている?」

「お前……何もしらないのか?」


 そう言われ幸は頷いた。


「知らない。俺は、転移してきたばかりだ」

「なるほど……じゃあ、転移者同士のデスマッチってことも知らない訳だな」


 それを聞き幸は、顔を引きつらせる。


「ちょっと待てっ! それって女神の指示なのか?」

「いや、違う。これを始めた転移者が居るってこと」

「そういう訳か。だけど……なんでそんなことを。いやそもそも……なんで、その転移者のいう事を聞いているんだ?」


 そう言い幸は、真剣な表情で思考を巡らせた。


「みんな怖いからよ。だからボクは、ここで仲間と隠れているんだけどね」

「なるほどな。だが、なんでここを通る者を襲っている?」

「どういう事?」


 そう問いを返されて幸は、ムッとする。


「とぼけるのか? 五年前からここを通る者を襲っていただろ!!」

「……五年前って。ボク達は、半年前にここに住みついたんだけど」

「それって、どういう事だ? それが本当なら、この森に居た巨大な怪物は……」


 それを聞き星奈は、ニパッと笑った。


「それなら、ボクがジェルスラキングに変えてカードに封印したよ。それと可愛くない魔獣や魔物もジェルスラやジェルスラキングに変えて封印した」

「ほう……自分の都合のいいように、森の生態を変えたってことか」

「うん、その方が森で住むのに都合がよかったからな」


 そう星奈が言うと幸は、ムッとし思いっきり星奈の顔を殴る。

 星奈は殴られて、ドサッと地面に倒れた。

 殴られた星奈は、幸の動きが早すぎて何が起きたか分からず放心状態だ。それに、なんで殴られたのかも分かっていない。

 それをみていたコリュカは、ただその様子をみている。……なんとなく幸が言いたいことが分かっているみたいだ。


「最低なヤツだな……いや、自分勝手って言うのか。お前がこの森の怪物を、どうにかしてくれたことは感謝する。だがな……やっていいことと悪いことぐらい分かるだろう?」


 そう言い幸は、一呼吸おいた。


「さっきの話を聞く限り、俺よりも年上だよな?」

「グスンッ……お前の歳なんか知らないし、勝手に年上にするなっ!」

「歳か……俺は十八だが、もしかして……もっと下なのか?」


 それを聞き星奈は、殴られた顔を摩りながら立ち上がり幸をマジマジとみる。


「……マジか、自分よりも上かと思った。ボクは、二十二だ」


 そう言い星奈は、なぜかモジモジし始めた。


「それよりも、どうする……やるのか?」

「話によっては、戦わない」

「なるほど……それで?」


 そう聞かれ星奈は口を開く。


「さっきも聞いたけど、コウの能力が知りたい」


 なぜか幸に対する星奈の態度が変わっている。


「それを言わなかったら?」

「戦う。だがもし能力のことを教えてくれたら、この森に居た魔物や魔獣を元にもどす」

「……そうか、それはありがたい。ただ巨大な怪物だけは、戻さないでほしいんだが」


 それを聞くと星奈は頷いた。


「分かった……だが笑うなよ?」


 そう幸が言うと星奈は頷く。

 そして星奈とコリュカは、ゴクリと唾をのみ込み幸が口を開くのを待った。

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