スーパーウルトラクッキング

タヌキング

鳥肉と野菜の和え物

私は西村 千春(にしむら ちはる)34歳独身、絶賛彼氏募集中の女である。

そんな私は、お料理番組のアシスタントをやっているのだが、この番組のお料理の先生(女性 42歳 バツイチ)が厄介な人で毎回、毎回困り果てている。


「先生今日の料理は何を作るんですか♪」


「うるさいわねぇ、アナタにそう言われると作る気が無くなるのよ。」


この様に、見事なクソババァぶりを発揮して、私の殺意を煽るのである。藁人形じゃ無くて、直接先生の心臓に五寸釘を叩きこんでやりたいが、それだとただの殺人になってしまうのでやめておこう。

さて、気を取り直して、今日は鳥肉と野菜の和え物を作っているのだが、先生にしては料理の進みが早く、あとは調理した鳥肉と野菜を和えるだけといったところだ。

ふぅ、収録終ったらエステにでも行こう。

しかし、ここで問題が発生した。


「和えるのやーめた。」


「はっ⁉」


先生のあまりの意味不明な言葉に思わず素で反応してしまう私。いい加減にしてくれよ。


「あ、あはは♪せ、先生、冗談キツイですよ。早く和えていきましょうよ。」


「冗談じゃ無いわよ‼和えてたまるもんですか‼」


怖っ‼急にキレたし‼どうしたのこの人‼

スタッフの人たちから笑顔が消え、収録現場の空気がどんよりとしてきた。これは私が何とかしないと。


「ま、またまたぁ、それじゃあ料理が完成しないじゃないですか。」


「完成なんてしないで良いわよ‼何が鳥肉と野菜の和え物よ‼こんな料理の名前は、【鳥和えず】がお似合いよ‼」


マジで何言ってんのこの人⁉そこは和えろよ‼美味しくなるから和えろよ‼


「せ、先生が和えないなら、私が和えちゃいますね。」


私は早く撮影を終える為に、和えるのを強行しようとした。へへっ、和えてしまえばこっちのもんである。


「アシスタントが舐めたことするな‼」


“バチーン‼”


「あいたっ‼」


料理に手を伸ばそうとした私の手を思いっきり引っ叩く先生。これってコンプライアンス違反ですよね?訴えようかな?


「意地でも和えさせないわよ‼キーーーーーーーーッ‼」


もう、うるさい。金切り声が頭に響くのよ。何なのこの人?何がしたいよ。


「せ、先生。どうして和えたく無いんですか?何か理由があるんですか?」


私がこう質問すると、先生は今度は顔をくしゃくしゃにして、目から大粒の涙をこぼし始めた。情緒が不安定にも程がある。


「ひっく、だって私ね。別れた夫に親権取られて、息子にもう五年も会ってないのよ。それなのに鳥と野菜は会えちゃうなんておかしくない?」


・・・やべぇ、やべぇとしか言えない。サイコパスだろこの人。

結局この後、鳥と野菜は和えられることはなく、鳥肉と野菜の和え物・・・いや鳥和えずの回はお蔵入りになる事になった。

こんなお料理番組が人気番組なのは業界の謎である。




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