バナナミルク

奈那美(=^x^=)猫部

第1話

 学校について靴箱を確認すると、遠藤君はもう登校してきていた。

ゆうべはさんざん迷ったあげくに遠藤君にあげるがさっぱり思い浮かばなかった。

 

 この時期、下手なものをあげるわけにはいかない。

バレンタインデー当日ではなくても、妙な噂が立ってしまう。

噂が立つのが嫌なわけでも、遠藤君と噂されるのが嫌なわけでもない。

ただ、風にからかわれるのが面倒なだけ。

 

 ──とりあえず、学校に行こう。

なにをあげよう?

いや、それよりもあげよう?

 

 どこかに呼び出して渡すなんてもってのほかだし。

かといって教室で渡すのも……なんだかなぁ。

それ以前に何を渡すか自体、ぜんっぜん思いついてない。

ノロノロと教室までの廊下を歩く。

 

 多分、遠藤君は話さないでくれるはずだから、改めて口止めって感じで渡すわけにはいかないものね。

『言わないでね』なんて言っちゃったら、『なになに?』って詮索されるのが目に見えている。

(あ、そうだ)

 

 私は購買へと足を向けた。

お店自体はまだ開いていないけれど、飲料の自動販売機は購入可能。

私は紙パック飲料の自販機の前で足をとめた。

小銭を取りだして一本買った。

そしてもう一本……違う飲料を買った。

 

 二本を手に持ったまま、私は教室に向かい中に入る。

「おはよう!」

「おっはよ!」

クラスメイトとあいさつを交わしながら、自席にかばんを置く。

そして飲料のパックを持ったまま遠藤君の席に向かった。

 

 「おはよう、遠藤君。悪いけど、これ飲んでくれる?」

飲料の片方を差し出しながら、教室に着くまでに必死で脳内でシュミレートした台詞を言った。

「おはよう、安藤さん……ってこれ?どうして?」

 

 遠藤君はびっくりした顔で私を見た。

「昨日のお礼……と、言いたいところだけど。こっち買おうと思ったら間違えて隣のボタン押しちゃったの……前に飲んでるの見たことあったからよかったら飲んで?」

そう言って私はお気に入りのイチゴミルクのパックを見せた。


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バナナミルク 奈那美(=^x^=)猫部 @mike7691

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