【KAC20246】放浪彼女

龍軒治政墫

起きたら彼女がいない

 彼女が、またいなくなった。


 かわいいけどちょっと変わった彼女は、画家だ。

 そんな彼女が突然いなくなるのは、一度や二度じゃない。その度に探しに行っている。

 ふらっとどこかに行く上に方向音痴なので、探すのには苦労している。


 見付けると、

「あ、見付けてくれたぁ……」

 と嬉しそうにしててかわいいので、再びいなくなっても探しに行ってしまう。

 多分、自分以外だったらサジ投げていると思う。



 そんな彼女に一度、ふらっとどっかに行ってしまう理由を聞いてみた。

 すると、

「なんとなく旅に出たかったから……」

 と言っていた。

 ちょっと放浪癖があるのかもしれない。


 別に、旅先で貼り絵を製作しているわけじゃない。それだったら、彼女はタンクトップにハーフパンツで放浪しているだろう。そうじゃない。


 だけど、放浪して作品にいい影響を与えているらしく、帰ってきてからはアトリエにこもって作品を一気に仕上げている。

 帰ってきて絵を描くって、やっぱり俺の彼女は裸の大将なのでは……。

 いや、ぽっちゃりというよりむっちりだし、違うよな? おにぎりは好きだけど。


 まず、彼女を探そう。


   ★


 あちこち探してみたが、一向に手がかりがない。

 一旦新潟の自宅に戻ると、自宅前で近所のおばさんと会った。この人は彼女のことをよく知っている。


「あら? またあの子探してるの?」

「どこ行ったか、知ってるんですか?」

服部ハットリあいずあえずキャンディーとえろんぴつ買いに行くってよ」


 あいずキャンディー……聞いたことがある。福島の太郎庵で売ってるというアイスだ。

 それに色えんぴつ……近所の文具屋や画材屋じゃダメだったの? 彼女、絵を描く時に使ってたっけ?


 まあいいや。

 とりあえず行き先は分かったんだし、服部さんを探しに会津へ行こう!

 きっとまた道に迷ってるだろうから。




 この時、まさか旅先のトラブルを解決したあとに画家だとバレて追いかけられるという、リアルで裸の大将な流れを体験するとは、微塵も思ってもなかった。

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