ゴリラ物語特別編🦍🍌✨ 〜トリあえずバナナ〜
ほしのしずく
第1話 どうも雉島と申します🐓
ゴホン! 皆さんおはようございます。こんにちは。こんばんは。
私は、ゴリラ君の上司である
年齢は55歳で、妻と息子と娘が1人ずついる4人家族の大黒柱というほどではありませんが、夫として父親として頼られるように過ごしております。
仕事につきましては、大手電機メーカーで課長代理という役職で任されております。
えーっとですね……会社名は一応あるのですが、お話の流れ的に、今言うのは得策ではないと判断致しましたので、それはまたの機会に。
うむ……何か意味があって、ここに現れたような気もしますが、あまり人気のない私が呼ばれたということは、作者の話題が尽きたか……何かのバーターといったところでしょう……悲しいことですが。
ということで、ゴリラ君や読者の皆さんには、大変申し訳ないのですが、今回のお話は私が主人公となります。
それではどうぞ。
🐓🐓🐓
8月某日、金曜日。
昼間の日差しは強く、外はアスファルトからの照り返しも相まって、気温は40℃に迫る日。
もう時代は昭和から平成、平成から令和へと移り変わろうとしているのに、私が青春を過ごしてきたように、金曜日を若い子たちも”華金”と呼んでいる。
「課長代理、今日は呑みですよね?」
時刻【17時15分】
定時後の工程管理課オフィス内で、声を掛けてくるのはゴリラ君と双璧をなすと言っても過言ではない、
サラサラヘアに、端正な顔立ち。
身長も165cmの私と比べて、目測ではあるが10cmは高い。
性格は一見、冷たそうな感じに見えるが、実はかなり面倒見が良く、仕事に対する情熱は目を見張るものがある。
この課はもちろん、他部署の女性社員からも人気だ。
しかし、私は彼自身のことをあまり知らない。
唯一知っていることがあるとすれば、ゴリラ君との会話で小耳に挟んだ、はちみつ好きだということくらいだろうか?
本当は、自分の部下でもあるので、私自身が会話の糸口を見つけ出したいところだが、今のご時世、一個人に踏み込むことはあまり良くない気もする。
こんな時、私にもバナナがあればいいのだが……。
そんなモヤモヤする気持ち抱えた続けた結果。
社会人として、”ポピュラー”で”オーソドックス”な”コミュニケーション”を取ることにし、1週間前に佐久間君に声を掛けた。
いわゆるお酒を酌み交わし本音で語り合う。
呑みュニケーションというやつだ。
こうした変な英語の使い方は、家族からやめた方がいいと言われているが、語感が心地よくてやめられない。
まぁ、口に出さなければ問題はないだろう。
「――ああ、めぼしい店を見つけているからな」
「おお、それは楽しみですね!」
「うふふ、楽しみにしていてくれ! なんせゴリラ君おすすめのお店だからな」
実はゴリラ君に聞いていたのだ。
それは、今でこそ部下たちに声を掛けられることが多くなり、一緒に食べに行く機会も増えてきたが、以前の私は……残念なことに、自分の人と関わること自体に魅力を感じていなかった。
というよりは、自分より秀でた人間やゴリラをやっかむといったところだろう。
だから、人が喜ぶお店と選ぶといっても、ピンと来るものがなく、ゴリラ君に頼ってしまったのだ。
本来であれば、自分で選ぶべきなのだろうが……。
それは次回、チャレンジしてみようと思う。
「ゴリラ主任のおすすめですか! 美味しいのは間違いないのでしょうが――」
ゴリラ君のおすすめというと、途端に表情を明るくする佐久間君。
だが、少し不安に思うこともあるようだ。
口元に手をやり考え事をしている。
「――少し気になりますよね」
ただ、彼の言わんとしていることは何となくわかる。それはゴリラ君がゴリラだからこそ気になってしまうこと。
「その――ゴリラ主任は普段からバナナばかり食べていますし……となると、今回のお店も8割方バナナ関係ですよね?」
「うむ。そこは私も気になったので聞いたのだが、ゴリラ君が言うには、美味しい天ぷらのお店らしい」
私も今の佐久間君のように、ゴリラ君にバナナじゃないのか? と聞き返してしまったのだが、ゴリラ君はあの時優しい笑みを浮かべてはっきりと「天ぷら」と言っていた。
「ほう、天ぷらですか……渋いですね。でもセンスがいい! さすがはゴリラ主任」
犬太のように、豪快に笑うことはしないが気に入ってくれたらしい。
これでひとまずひと安心だ。
「うふふ、そうだな! 気遣いの化身のような彼のことだ。私たちに配慮して選んでくれたのだろう」
「そうですね」
「――さて、では着替えを済ませて向かうとするか」
「承知致しました! では、私も着替えてきますね」
「うむ」
時刻【17時30分】
こうして、私たちはゴリラ君イチオシの天ぷら屋へと向かった――。
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