救援物資

Grisly

救援物資

地球宛に、

宇宙から、数え切れない程

大量のコンテナが送られて来た。


付属の映像が再生される。


「私達は、R星人。

 私達の星はとても豊かで、

 資源が余り、経済もとても発展しています。


 そこで遂に、余った物資で

 ボランティア活動をすることにしました。


 是非、あなた方の星でお役立て下さい。」





恐る恐る、中身を開いてみると、

そこには大量の食料、衣服、

おもちゃ、映画、

遊具、薬品、娼婦、タバコ…


ありとあらゆるものが入っていた。


思いがけない贈り物。

素晴らしい星もあるものだ。


豊かさとは、人にこんなこともさせるのか。

どんな星なのだろう。


色んなことを考えながら、

地球人はその恩恵を受けたのだった。








3ヶ月後。


地球の文明は荒廃の一途を辿る。



R星からの贈り物は

そのどれもが、

地球のものとは比べ物にならぬ程

素晴らしく、品質の良いものだった。



何を買うにしても、食べるにしても、

一度享受した贅沢が基準になり、

喜びを感じられなくなった。


働く気力もなくなる。

当然である。

どんなに頑張って

最高級の物を手に入れても、

それはR星のものに遥か遠く及ばないのだ。






人々は話し合った。


「慈善の心が、

 こんなにも被害をもたらすとは。」


「余った物資でも、

 こんなに品質が良いのだ。

 R星とはどんなに豊かなのだろう。」




すると、全てを理解した男が一言。


「何が救援物資だ。

 そんな良い物が

 都合よく残っているはずがない。


 きっと莫大な予算を使った、

 星を上げてのプロジェクトだ。



 星中から最高の物を

 取り揃えたに違いない。



 考えてもみろ、

 これ以上ない合理的な方法だ。

 たった一度の贅沢で、

 文明一つ丸ごと滅ぼしてしまった。」


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救援物資 Grisly @grisly

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