引くほど笑えない黒歴史(半裸の談)

逢坂 純(おうさかあつし)

雨の中を半裸で散歩

黒歴史という言葉を調べてみると「過去に起こった恥ずかしい忘れてしまいたい記憶」とあります。忘れてしまいたい記憶なら、アホほどある僕ですが、今日は本当に忘れたい黒歴史の話をします。

あなたには、半裸で土砂降りの雨の中を歩いた経験があるでしょうか?僕にはあるんです。そんな変態行為が。

僕はてんかんを小さい頃から患っていて、大学時代には一人暮らしをしていて生活が荒れていたことから、薬を飲んでいなかった日々が続いていました。それが原因で、てんかんの痙攣の発作をよく起こしていました。てんかんの発作が起こると、頭は痛くなり、身体は重くなりその直後は自由に動けなくなり、必ずと言っていいほど、もよおすのです。それで身体を引きずってトイレに行き、おしっこをするのです。発作が起こると、ほぼ100%の確率でおしっこがしたくなるのです。その朝もてんかんの発作が起こったらしく、僕はアパートの外にあるトイレに行きました。その日は、外は土砂降り雨でした。まだ朝早くだったので、雨も相まって人通りも少なかったように記憶します。トイレに行った筈でした。トイレに行った筈だったのです。

僕は気が付くと、もうろうとした頭で雨の中、傘もささずに外を歩いていました。なぜか半裸でした(下が)。服薬をしていなかったせいで、症状がピークの時のことでした。頭の中で雨の音がすごくするなー、と思っていると、僕は雨に打ち付けられて、外を歩いていました。雨の音で段々、我に返りました。家から100メートル程歩いていました。その頃の僕はよくてんかんの発作を起こし、道でぶっ倒れてもいました。雨の音が鳴りやみませんでした。もうろうとしていました。半裸でした。トイレに行きたかったのだと思います。僕は雨の中を只、歩いていました。雨の音で意識が戻ってくると、土砂降りの雨の中で、半裸で歩いている自分がいました。僕は、雨の中でこれ以上、隠しようがない状況にあり、着ていたトレーナーを手繰り寄せ、下半身を隠して、家に向って駆け帰りました。

明け方で人もいなかった朝のことです。車が遠くを走っていました。反対側の歩道を傘を差した人がいたようにも思います。あまり覚えていません。部屋に戻ると、自分が土砂降り雨に打たれて、半裸でずぶ濡れだったことを振り返り、もう死んでしまいたいと思いました。その数十分後、アパートの大家から電話が掛かってきました。「隣の住人の人が、逢坂さんが目を虚ろにしながら、半裸で雨の中、傘も差さずに歩いていたと聞いたけれど、それ本当?」と。

「変態確定、変態確定、変態確定……」(テッテケテッテテー!!)

僕の頭の中で、変態確定のテーマが流れ、こだましました。

ここで僕がこの行為を肯定してしまったら、僕はもうこれから、生きていけない。生き恥晒しながら、これ以上、ここでは暮らせない!僕はあったことを無かったものにして、大家からの電話を切りました。でも事実は事実。消せなかったあの日の黒歴史。

あれから20年以上が経ちます。今は新薬のお陰で、まったくてんかんの発作もなくなりました。あの頃の暗黒な日々はもう過去のものとしたいです。この体験を文章にすることで、浄化したいのです。

皆さん、服薬はキチンと守りましょう。土砂降りの中、半裸で歩くのはやめましょう。


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引くほど笑えない黒歴史(半裸の談) 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

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