6:作中用語

※この項目は随時加筆修正予定です。


◆怪異

 幽霊・妖怪・悪魔・精霊・妖精といった超常的な生き物の総称。

 国際会議等での名称はmonstrum(モンストゥルム)。

 ヒトや動植物の生きる物質世界とは層の異なる世界に生息する、精神だけのかたまりとして漂う生命体が、物質世界からの異常信号に反応して顕現けんげんした姿。


◆怪異パンデミック

 第二次世界大戦末期に行われた世界層レイヤー破断実験と、その後の人類の怪異に対する認識変化により、怪異の数が世界中で急増した事象全般のこと。


◆幽霊

 怪異の一種。

 人間(稀に動植物も)が死の瞬間に抱いた無念や憎悪に、異層の精神生命体が反応・融合して顕現する。

 外見は基盤(ベース)となった死者とよく似ていて記憶もある程度引き継いでいるが、実際には肉体を構成する物質から異なる、全く別の生き物である。

 強い憎悪による混乱状態の中で生まれたり、人工的に顕現させられた場合、口が裂ける、手足が伸びる、下半身や首を失うなど、肉体の一部が変形するケースもある。

 多くの幽霊は存在を維持する力も、認知能力も低く、寿命が短い。

 日本では仏教の影響により、顕現から五十日前後で消滅する確率が高いと言われる。

 毎年命日にだけ顕現する、週に一度だけ顕現する、といった個体もいる。

 歴史上の有名人が幽霊になって現れると、人々の間に蓄積されたイメージに引っ張られ、実際の本人と異なる姿になる事が多い。

 また奇妙にも、完全な非実在人物の幽霊が現れた事例が世界各地に複数ある。


◆妖怪

 怪異の一種。

 自然界を流れる『生命未満のエネルギー塊』、俗に『気』や『精気』と呼ばれる存在が一箇所にわだかまり、それに異層の精神生命体が反応・融合する事で顕現する。

 生き物の死骸やそれに付随する思念がベースとなる場合も多いが、一個の思念だけを材料としないのが特徴。

 幽霊と比べると平均寿命が長く、異能と呼ばれる特殊能力を生まれつきそなえる。また単純な身体能力でもほとんどの物質生命体を凌駕する。

 死者がベースの場合は経年による肉体の変化が見られない。逆に精気塊せいきかいをベースとする場合は、速度は様々だが成長・老化する個体がほとんど。

 自分に合う精気の流れが吸収可能な場所を巣として確保しなければ寿命が縮まるため、縄張り意識が強い。他の個体や集団の縄張りを乗っ取ろうとするものもしばしば現れる。

 縄張りを持たないまま長寿や強い霊威を得るには、他の生命体の思念や精気を生きながら奪い取る必要がある。ただし、縄張りを維持しながらも凶暴性を抑えられない個体もいる。

 アジア圏の似たような条件の怪異も、日本では慣習的に妖怪と呼ばれる場合がある。


◆精霊・妖精・悪魔

 異文化圏における幽霊以外の怪異の分類。それぞれの文化・信仰に合わせてカテゴリを変えるが、最初の翻訳次第という曖昧なところがあり、明確な基準については未だ議論中である。

 また日本でも、「複数人の刀鍛冶の幽霊が一つの人格として顕現し、刀剣に憑いて保存状態を良くしたり持ち主に助言をしたりする」といったケースでは、幽霊でも妖怪でもなく鍛冶の妖精と呼ばれたりする。

 妖精と妖怪の分かれ目は、攻撃性の高い異能を持つかどうか、人間に積極的な危害を加えるかどうかで、発酵と腐敗の違いにも例えられる。


◆カオティック・オーダー

 怪異パンデミックによる混乱期を経たのちの、国際社会が怪異と共存する方針を打ち出し始めた時代区分を指す。

 主には1975年、アメリカ三国戦争の休戦協定以降をカオティック・オーダーの時代と呼ぶ。

 元となったのは東アメリカ合衆国大統領ディーン・フリーマンの、休戦協定にあたっての演説から。

 以下引用。

『今や怪異のもたらす混沌は新たな世界秩序の一部となっている。私の子供達は、怪異のいる世界しか知らない。

 望むと望まざるとにかかわらず、我々人類は奇妙な隣人と共に、混沌秩序カオティック・オーダーの時代を生き抜く以外に選択肢を持たないのだ』


陰陽士おんみょうし

 陰陽庁おんようちょうに所属する職員のうち、怪異対策業務にあたる有資格者を指す。

 1950年の陰陽庁創設以降に作られた呼称で、律令制下の官職としての陰陽師おんみょうじや私的な職業の祈祷師、まじない師と区別する意図がある。

 採用試験合格証のほか、スペル・トークンの使用資格も得なければならない。

 一般市民のイメージよりも業務は地味で、怪異を直接攻撃し消滅させる機会はほとんどない。結界で安全を確保しつつ地道に交渉し、一般人との仲を取り持つか、供養などにより穏便に消滅させるのが主な仕事。

 怪異の肉体は基本的に人間より遥かに強靭で、刺激して暴走させると被害が拡大する可能性の方が高いため、交戦は最後の手段である。

 他国の怪異対策業従事者は、『エクソシスト』『シャーマン』などそれぞれ呼び名が異なり、公務員かどうかも国による。国教や財政的な事情から、全て民間委託という国家も少なくない。

 日本における階級は以下のとおり。

 (下位から)陰陽巡士おんみょうじゅんし- 陰陽副士長おんみょうふくしちょう - 陰陽士長おんみょうしちょう - 陰陽司令補おんみょうしれいほ - 陰陽司令おんみょうしれい - 陰陽司令長おんみょうしれいちょう - 陰陽監おんみょうかん - 陰陽正監おんみょうせいかん - 陰陽司監おんみょうしかん - 陰陽総監おんみょうそうかん


◆霊感・霊威

 霊感は人間の持つ、怪異を認識する能力。複層世界構造を感知する能力でもあると言われ、強い力を発現した場合は、「僅かに時間・空間のずれた別世界の現実」として、未来の出来事や遠く離れた場所で起きている事件を幻視する者もいる。

 霊感が弱いと、幽霊など存在の曖昧な怪異ほど認識しづらくなる。誰にでも見える幽霊となると全体の五割を切るという調査結果もある。

 強弱は生まれつきの体質によるところが大きいが、成長期における環境、精神的ストレスなどの影響によって発現の仕方が変わってくる。また、詳細は解明されていないが遺伝も関係すると言われている。

 霊威は怪異の持つ超常的な力のこと。

 霊威の強さは身体能力や異能の強さに繋がり、精気塊ベースの妖怪であれば成長によって大きく高める事も出来る。寿命が尽きてくると衰えもする。

 他者からの封印、または自力でのコントロールによって、見かけ上弱める事も出来る。


霊験機器れいげんきき

 怪異対策としてパンデミック以降に開発された電化製品。

 魔除けのお守りやおふだといった伝統的な道具は霊験具れいげんぐとして区別される。

 代表的な霊験機器としてスペル・トークンが挙げられる。

 スペル・トークンとは、本来長期間にわたる修行と、長大な祝詞のりとや祈りの言葉があって初めて発動させられる怪異除けの方術ほうじゅつを、ごく簡易な操作で発動させられるようにした機具。使用の際は充電が必要となる。

 さまざまな宗教圏で応用版が製造・流通しているが、元々は反怪異国の西アメリカ共和国で発明された。

 日本で普及しているのは無宗教版製品だが、仏教用、神道用、カトリック用などを使いこなす専門家もいる。


未掟時界アンコンヴィクテド

 無宗教版スペル・トークンで発動させられる、現代の世界で最も一般的な結界術。

 異層世界の精神生命体である怪異は、物質世界においては常に不確定な存在である。そのためあらゆる物理法則を無視した超常現象を引き起こせる。

 その特性を逆手にとって、怪異が影響を及ぼさない、物理的物質のみの世界層を視認し固着させる事で、あらゆる怪異被害を防ぐ方術である。

 複層世界構造のうち、精神生命体の層に住まう怪異は、物理的物質のみの世界を認識する事が出来ないため、怪異には原則としてこの結界を突破出来ない。


もがりの異能

 ごく稀に発現する怪異の異能。幽霊・妖怪などの分類は問わない。

 物質のみの世界を含む、通常怪異には認識出来ないはずの領域まで複層世界構造を見通す能力。

 ただ観察するのみの力ではあるが、怪異の存在する世界層は不安定なものであり、物質世界層までを貫通して観察する者がいる事によって、初めて現実として確定させられる。

 一説には、怪異の物質世界への顕現は、殯の異能者がいてこそ実現するという。

 科学的な真相は解明されていないが、怪異の社会では古くからもがりの異能者に敬意を払うべきとされ、『もがり大殿おとど』もしくは『殯の魔女』と呼ばれ特異な存在として扱われてきた。

 殯とは本来、古代日本にて行われてきた風習で、死者を仮の安置所に納めて観察し、その死が確定したことを認める葬礼の一種。

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