第29話

「そういえばさ、ナビィってナノマシンにも干渉できるのか?」


『ナノマシンも分類すれば機械ですからね。リュウの体に入っていれば、干渉することは簡単です。ナノマシンにデータを送れる通信機があれば、他人の体であっても干渉は可能ですね。


 今の時代には、ナノマシンにデータを送れる通信機なんてありませんので、実質無理ですけどね』


 予想以上にヤベエ能力だったけど、今の時代はナノマシンに干渉できるモノは無いようだな。でも、シリコン生命なら干渉できそうだけどな。


 旧世界の病院などにあった機材であれば、ナノマシンとデータを送受信できたようだ。持ち運ぶとしたら、4トントラックを持ち運ぶレベルで、かさばるらしい。


「しばらくは、配給所に行かない方がいいか?」


『いえ、むしろ行くべきだと思います。痛みは残りませんが、痣などは残しています。食事をとらないで、痣が治ると余計な疑いが増えるかと。後は、治るまではハンターギルドの件は、お預けです』


 そっか、ただでさえ食事が食べられなかった俺が、アジトに籠って体の痣とかが治ったら、反対に不審がられるな。


 痣が治るのには、2週間はかかる予定らしく、その間はアジトの中にいると思わせた方がいいだろうな。


 この間に遺跡の遺物回収へ行くのはどうかと、ナビィに相談してみたが、


『これ以上あそこから持ち出すのは、難しいと思います。特に売り捌くのに問題があるので、回収したところで立場を固めた後でないと、安く買いたたかれるだけです』


 だってさ。それなら、もう少し遠くに足を運んで、周囲の確認や遺跡歩きに慣れておいた方がいいだってさ。


 ハンターに見つかると厄介だけど、街の外を歩き慣れる必要はあるのか。


 そうなると遺跡から持ち出した靴を履く必要があるから、ハンターにあった時のリスクを考えると、大人しく勉強するか。


 そこから2週間は、リンチされて体がボロボロであると印象付けて、アジトでは勉強をする日々を送っていた。


 ハンターをする際に必要な知識を中心に、街の外の歩き方や注意すべき点を、何度も何度も頭に叩き込んだ。


 しつこいくらいに同じことを叩き込んだのは、これを疎かにすると、ナビィのサポートがあっても、死ぬ可能性がかなり高くなるからだと言われた。


 俺も死にたくはないので、必死に頭に叩き込んだ。


 覚えた内容に番号を付けて、不意に質問されても内容を答えたり、シチュエーションを言われた際に、もっとも適した行動を答えたり……と、座学をいやというほどやった。


 あくまで座学……実践に応用出来て初めて、自分の知識として誇れるものになる。


 そう考えると、あの遺跡では、何もできてなかったんだな。ナビィの指示に従って動いていただけだと、強く実感した。


 座学で印象深かった点といえば、生身でも専用のデバイスを付ければ、義体やナノマシンによる改造を受けている人間と同じレベルで、索敵装置を使えるようになるらしい。


 専用デバイスを使っていない場合は、基本的には最初に設定した索敵方法で作動し続けて、変更したい場合はあらかじめ設定したショートカットキーを使うか、その場で修正する必要がある。


 だけど、義体やナノマシンで肉体改造をした人や、専用デバイスを使っている人は、思考操作が可能になるらしい。


 ショートカットキーだけで済むのなら専用デバイスなどはいらないが、初探索の場所で設定値を随時いじって最適解を探すのには、専用デバイスが無いとかなり厳しい。


 グループに所属しているハンターであれば、先輩たちにデータを貰えるため、既知の場所であれば気にせず迎えるのだが、新しい場所へはなかなか許可が出ないと言われている。


 最低でも、自分たちで索敵の最適解が現地で見つけられるようにならないと、不確定要素の強い遺跡や地域へは行かせてもらえないんだとか。


 不確定要素の強い遺跡は、まだ探索の進んでいない見つかって新しい遺跡の事で、いわゆるお金になる場所の事だ。


 ある程度のサポートが受けられるかわりに、報酬の何割かをグループへ入れる必要があるそうだ。


 自分たちの不相応な装備は貸し出されないし、一定以上の装備は自分で購入する必要はあるが、先達たちに教えてもらえることを考えれば、高くはないだろう。


 中には、搾取するタイプのグループもあるが、そういう所は遅かれ早かれ潰れることになるそうだ。


 人的資源の浪費は、ハンターギルドの嫌がるところなので、少しでも黒いうわさが流れると、グループに監査が入って、アウトだったら強制労働行きになる。


 だから、不良ハンターはグループに属さずに、少数で動いている奴らが多いらしい。


 上手く管理されているというよりは、上手く逃げ道を使っているって感じだな。法といっていいのか分からないが、自分が不利にならないように立ち回るって奴だな。


 グループに属さなくても、情報交換などはしているようで、情報共有などは普通にしているから、コミュニティーのようなモノはあった。ろくでもない情報ばかりが書き込まれてたけどね。



 俺が情報をリークしたハンターギルドマスターは、1日悩んだ後、知り合いに手助けを求め、副ギルドマスターを隣街へ行く用事を作らせた。金儲けの企みを話したら食いついて、速攻で街を出ていった。


 その間に俺のリークした情報が正確なものか調べるために、各所の調査へ入り……そこから芋づる方式で悪事の証拠が掘りだされた。


 一度見つけると要領を得たとばかりに、様々な悪事の証拠を見つけ出していた。


 こちらがリークしていない情報まで、しっかりと探し出していたのは、ナビィの送り付けた例の映像を見たからだろうな。何が何でも、処刑してやると意気込んでいたと教えてもらった。


 リークから1週間、副ギルドマスターが隣街へ行って6日目、何も知らずに帰ってきた副ギルドマスターは、門番にその場で拘束され、即日裁判がひらかれ、そのまま死刑が確定する。


 生きてたら困る奴らも多いので、死刑が確定すると同時に特別室へ連れていかれ、首ではなく腹をギロチンのようなもので切られ、死ぬ間際まで苦しんで死んだそうだ。


 処刑の方法では、非人道的とまで言われていた処刑方法を持ち出してきたのは、ギルドマスターの意向だとのこと。それだけ、許せなかったんだろうな。


 痛みで気絶しない限り、30分程は死なずに生きることもあると言われている。体を何かしらの改造をしていれば、絶望する時間だけが長くなる……という事らしい。


 憂いなく、ハンターギルドへ行くことが出来るな。



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