反旗を翻して~チートを与えられてハーレムを満喫していたが魔王の娘に言われて社会の闇に気付く~

黒金 影輝

第1話 俺は全てが間違っていて償わなければならない彼女に

 俺は、何時ものように酒場で気に入った風俗女の肩に両腕を乗せて、二人の女といちゃコラして雑談をしながら遊んでいた。

 風俗の女の格好は、服の胸の所が谷間が見えるくらい開いていて、とても俺のスケベ心に火がつく。

 残念なことは、髪型が髪留めで縛っていて短めになっていたのが本当に、ほしい。 

 それにだ、金髪ってのも俺の好みとは言えないし、自分の彼女の魔法使いの女の子みたいに、黒髪ロングストレートの初々しいのがいいってのによ。



 何せ、俺の彼女マホナ・グレーツは絶世の美少女で、由緒正しい魔法使いの家柄グレーツ家の跡取り娘であるから。

 今度、町長見付けたら目の前に居るアーナとディルアのことで、滅茶苦茶文句でもいってやろうと思う。


「ギャハハハハ!!」


「お上手ですね!」


「勇者様! 流石ですね~」


 俺はそう言いながらも本当に、楽しかったのか高級な酒の瓶を次々と開けて、いよいよ10杯目に突入して、ベロベロになりながらご満悦だった……明らかにおべっかだった楽しかった。

 だが、その時!


 俺の気分を害するような、ボロボロの布を全身に覆っている、見るからに怪しげな少女がドアを開けて俺のもとへと近付いてくる。

 俺は、何とか無視しようと風俗女どもの顔を凝視して、まるでその場にいる不気味な少女がゴーストのモンスターのように、存在しない生き物のように扱う。


「おい! 声をかけとるだろ……聞こえぬのか?」


 怪しげな少女は、何度もしつこく俺に声をかけようとしてきたが、相手をせずに風俗女どもとの会話を楽しむ。

 まだ、このイカれたガキと関わるよか良かったから。


「アドルくん、カッコいい~!」


「そうよね~、勇者で世界を救ったもの~」


「そんなことないよ~、君たちのような可愛い子に比べたら、魔王を倒して世界を救うぐらい楽勝さ!」


「「キャァァァァ!! 強くて、カッコよすぎよ!」」


 俺は、お世辞と分かっていても風俗女達に褒められて満更でもない。

 それに、俺アドル・ペルソナは勇者で魔王を倒して世界を救ったのだ、強ち間違いではないので別に嘘をつかれてるわけでないからな。



 そんな俺を見てかいなか、分からないが不服そうに頬を膨らませこっちを見ている、怪しげな少女はおもいっきり声を張り上げなから、俺に怒鳴りごえを上げて説教。

 しかも、店にいる店員や客にさえ全員聞こえる大声で。


「お主! 分かっているのか!! このままでは、大切にしているもの達でさえ傷付くのだぞ!」


「はぁ~! さっきから、うるせぇな~!! 何なんだよ! お前は!!」


「よくぞ、聞いてくれた!」


 怪しげな少女は、顔にかかった布を首から下の位置まで下げて、首に巻き付け腕組みをしながらえっへんと言う鼻息荒くしながら、ニコニコして自分の名を名乗った。


「我の名は、ダリア・ルルージュ! 魔王、デビル・ルルージュの娘で、いずれ大魔王になるものだ!」


 俺は、呆れて思わずため息をつき、ヤレヤレと両腕を横にして広げて首を振り適当に話を受け流した。


「あっそ! 良かったね!」


「真剣に話をきけぇぇぇ!!」


 怒った怪しげな少女は、俺の膝に蹴りを入れてきてその衝撃に、立ち上がり俺は思わず痛み跳び跳ねる。


「いてぇな!! 何すんだよ!」


「お前が、話を聞かないのが悪い!」


 俺は、どう考えてもお前の頭と態度が悪いと思ったが、怪しげな少女には届かなかった。

 それに、ダリアとか名乗っていたがまさかと思い、顔の方を見てみると頭の上には角が2本生えていた。

 しかも、よく見ると俺が倒してきた魔王に似ている箇所があった。


「お前……ま、ま、ま、まさか!」


「そう! 我が、あの大魔王の娘! ダリア・ルルージュだ!」


 俺は、本当に信じられない。

 この、ちびっこ幼女小娘があの恐ろしい顔をした、世界をもと牛耳っていた魔王の娘なんて。


「嘘だろ~お前みたいな、見るからに弱そうなガキがあの恐ろしい魔王の娘なんて~」


「本当のことだ」


「嘘を付くなら、もう少しマシな話をしろよな~」


 俺の顔はひきつっていた、娘もこうしているのだから、もしかしたら今もまだ魔王が生きていると思い。

 そうだとしたら、この世はまた邪悪なモンスターに支配されて、あらゆる人間が殺されると予想し緊張感が走った。


「じゃあ……魔王も生きてるのか?」


「いや……父様は、死んでいる」


「はあ? じゃあ、何でお前がここにいるんだよ?」


「それはじゃな……」


 俺は、ダリアとか言う魔王の娘の話を唾を飲み込み、滝のような汗を流しながら聞く。

 まるで、何か不吉な物が纏わりついてきたかのような、震えかたをしながら。


「実は、お前は騙されてるんだ!」


「はあ? 何が?」


「お前を慕っていた、全員にだ!」


 俺は、ダリアの言ってることがわけが分からなかった、だって俺はこの世界を救った最強の勇者だ。

 俺は、しかも女神様からチートを授かった選ばれし者、そんな俺がぞんざいな扱い受けるわけない。


「嘘だ! 嘘に決まってる!」


「本当だと言っている!」

 

 俺は、信じたくなかった。

 自分が、そんな最悪なことが起きるわけないと、このまま楽に豪遊して皆から慕われて生きていけると思って。


「なら……見せてやろう……本当の、この世界を!」


 そうダリアは、手を前に付けだして呪文を唱えている始める。


「汝……私に……必要な力……ステルスを与えたまぇぇぇ!! ボディースケルトン!!」


 ダリアが、唱え終わると手の平の下から煙が出てきて、それが消えると大きなマントが出現した。

 マントは、そのまま床に落ちる。

 俺は、その出来事に呆然としながらも何とか平静を保った。


「何だ……これは?」


「これは、闇魔術アイテム! スケルトンマウントだ!」


「そのままじゃねぇか……」


 ダリアは、スケルトンマウントを拾い上げてそのまま、体を包み込むように被ると全く姿が見えなくなった。


「どこだ……ガキ! 何処にいる!」


「ガキとは、なんじゃ! ガキとは! ここにおるわ!」


 ダリアが、突然目の前から現れた。

 どうやら、マウントを被ると他人からは見えなくなるらしい。


「凄いな! これ!」


「じゃろ~、これは我の父様が作ったのじゃ!」


「これで、風呂も覗き放題だし。泥棒し放題じゃないか~」


「何を言っておる! そんなことを、するために出したのではないぞ! それに、お主本当に勇者か? それでも!!」


 俺は、ダリアに冗談と言い納得していたものの、顔から疑われてるようにしか見えない、目は細めていて呆れた表情で冷たい目線をこっちに向け凝視していた。



 俺は、一旦部屋から出てダリアの案内に従い、薄暗い廊下を淡々と進む。


「ここで……あってるのか」


「あっとるわ、それにあまり声をだすのではないぞ……バレてしまうのでな」


「なにがそんなにバレたらヤバイのかな~全然わからん」


 俺は、冷や汗をかきながら怯えていたダリアと対極的に、余裕シャクシャクだったので何にそんなに、ビビっているのか正直分からない。


「ちょっとまて!」


「何だよ~、何かあったのか?」


 ダリアは、そう言うと俺の前に手を広げてこれ以上進まないように防ぐ。

 まるで、何かこの先とんでもないものがあるように。


「これを、とりあえず被るぞ……」


「ああ……分かった」


 俺は、わけが分からなかったがとりあえず従い、透明になれるマウントをダリアと一緒に被り進んでいくと、何やら槍を持って見まわりする雇われ兵士が五人くらいすれ違ったので、漸く自分でもなかなか危険なことに首を突っ込んでいること気付く。


「おいおい……これは、どういうことだよ」


「言ってなかったな……これから、町長の部屋に行くんだ」


「何で、町長の部屋何かに……しかも、こんな大勢の見張り前でつけて」


 俺は、全くわからない特に町長とは親しかったし、あの女を用意してくれたのはその本人だ。

 そんな、優遇してくれた人物が何故俺に隠し事を、しかも見張りまでつけて。


「とりあえず……信じられないと思うが聞いてくれ」


「何だよ?」


 俺は、嫌な予感がしたダリアからとてつもなく、酷い現実を突き付けられる気がして。


「お前の……好きな魔法使いの少女は……町長に、性的な解消に使われている……」


「はぁ? ウソだ……ウソだろ?」


「本当だ……そして……この世界の上の人間は、下の民を自分等の欲を満たす道具としてしか思ってない」


「そんなの……ウソに決まってる」


 俺は、信じられなくその言葉を連呼する。

 町長が、そう言う人物だったことではなく、自分の恋人のマホナ・グレーツの純潔が奪われたことに。


「そんなのって……」


「やめてぇ!!」


「!!!」


 部屋から、ドアから突然悲鳴みたいな声が上がる。

 それは、馴染みのあるマホナの声。


「いいじゃないか~ああああ!! 気持ちいい~!!」


「やめて……やめて……」


 部屋のベッドが、キシキシと激しく動く音がする俺はそれを聞いて、気分が悪くなり過呼吸に。 

 何となく、もうマホナは町長に犯されてソイツに色に染め上げられたと。


「マホナ……うぅ……」


「悲しんでいる場合ではない……とりあえず、中を確かめるぞ」


 ダリアは、部屋のドアをゆっくり開けて確かめる、そこには何とベッドで裸にされたマホナと、汚く醜く太った町長の上半身裸になっている。

 布団を被っていて、全身見えなかったがスケベな行為をしていたことは分かる。


「あああ! 気持ち良かったよ~もう一回したいな~」


「もう……やめて下さい」


「そう言わないで……やろうよ~……ジュル!」


 町長の嫌らしい、舌なめづりはねっとりしていて気持ち悪かったが、それよりマホナが性の捌け口にされていた現実に絶望した。


「やめろ……もうやめろぉぉぉ!!」


「何だ!? 何処だ!」


 俺は、絶えきれなくなり被さっていたマントを引き剥がして、腰にぶら下げていた剣を引き抜き町長に向かっていき、剣を振るい下ろすが何か透明な物に塞がれて止まる。


「何だよ……これは!!」


「あははははは!! バリアを作っておいて良かったわ! しかも、一級の魔法使いの張ったものだからな、そうそう壊れはしない」


「クソ……クソクソクソクソクソ!!」


「あははははは!! NTR気持ちいい~!! この、背徳感! 更に、ワシの心と性欲が満たされる! 至高の喜びよ!」


 俺は、何度も斬り上げるが全く歯が立たずそれどころか町長は、そんな俺を見ながら優越感に浸っていた。

 町長は、ニヤリと笑いみわりをしていた兵士達を口笛で呼び、現れた数十人の兵士に俺達は囲まれて逃げ場が無くなる。


「もう逃げられんぞ! 諦めるんだな!」


「クソ!」


「大丈夫だ……まだ、策はある」


「何を世迷い言を……」


 ダリアは、何か提案があるらしく俺は仕方がないので、その作戦とやらに乗ると見せ掛けてコイツら、クズどもをぶち殺そうとチート魔法を唱える準備をする。


「とりあえず、我がコイツらをねむ……」


「我は勇者……女神の火の力を与え、この者達を消し炭にしたまえ!」


 俺の体は、光っていたが火がでたものの手のひらから少量しか出なかった。


「ふざけるな……女神……助けろよ」


「無駄だ……女神も、コイツらとお仲間だ」


「どういうことだよ!」


「それは後だ! とりあえずコヤツラを眠らせて、一旦この場から出る! ナイトスリープ!!」


 ダリアは、闇魔術の呪文を唱えると黒い霧に部屋中は覆われて、一斉に兵士達は倒れていき眠りにつく。


「よし! とりあえず逃げるぞ!」


 ダリアと俺は、その場を後にして逃げ出そうとしようとすると、町長が止める。

 どうやら、バリアのお陰闇魔術は防がれたが。


「まて……勇者アドルよ!」


「何だ! バリアでも解くのか!?」


「解くわけなかろう……言っておくが、これから貴様ら魔王の小娘と勇者アドルには刺客がくるであろう。アドル! 貴様は、元仲間達に裏切らるのだ! そして、絶望しこの世界はワシのユートピアになるのだ! だははははは!! 実にいい!!」


 俺は、町長の笑い声とその欲望にまみれた予想を聞き、腹が立って仕方なくなり体を振るわせて、歯を食い縛る。


「ふざけるなぁぁぁ!! お前なんかぶっ殺してやる!!」


「挑発にのるな! とりあえず、逃げるぞ!」


 俺は、不服だったがこれ以上なにもすることが出来ないと思い、ダリアに従い外へと走って出ていった。



 外に出ると、誰も居なくとりあえず町から出ていき、何もない静かな風が吹く草原へとつく。


「何だよ! 女神! 俺の味方じゃないのかよ!」


「はぁ~!! 貴様程度の、人間の味方なわけなかろう!」


「女神様!?」


 何処からともなく、女神マリシアの声が聞こえてきた。


「いいか……所詮、貴様は私の目的を達成する操り人形でしかなかったのだ。魔王を倒すためのな!」


「ふざけるな……俺は、今まで騙されて従っていたのか!」


「そうだ……我等、魔族は罪人ではない……最も、罪深いのは神や人間なのだから」


 俺は、信じられなかった町長が自分を騙してきたり、女神が俺を利用していたことではなく、この世界の人々がろくでもなかった真実に……

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