第4話 恋愛相談

俺が高校に入学してから一ヶ月が経過した。


「それでは問題です!!!この一ヶ月で俺は何回、葉狼はがみさんと話したでしょうか!」


「え、あ、は?急にどうしたのよ、頭おかしくなった??」


「正解は……」


「いや、無視すんなし」


俺は愛彩あいかに思いっきり頭を叩かれる。


「痛っった!!!、はッ!お、俺は何を……」


「目が覚めた?どうしたのよ急に頭おかしくなって。いや、いつもがおかしくないわけじゃないんだけど」


「辛辣」


「学年最下位がどうこう言えることじゃないわ。留年とかしない?」


「流石に頑張るわ。最近、頭いい人に教えてもらってるし」


「氷真、あたし以外にも友達いたのね……」


「どういう意味だこら」


たしかに最近まで居なかったし、プラチナもなんか特殊な付き合いだけれども。


「そのままの意味。それで、急にどうしたの?相談があるとか言って昼休みに呼び出しておいて何もないわけ?帰って良い?」


「いや待って、待ってください!ちょっと助けてほしくてさ」


「お金なら貸さないわよ」


「俺そんな風に見られてたの!?」


「冗談よ、それでなんなの?もしかして来夏らいかのこと?」


「なんでわかったんだ、エスパー?……?」


「ヒント このエピソード一言目の氷真の発言」


「ウーン、サッパリワカラナイゾ」


愛彩は大きなため息を吐き、俺の肩に手をのせた。


「まぁ、その大丈夫よ、他にも女子はたくさんいるわ。きっといい出会いがあるわよ」


「まてまてまて、俺が振られた体で話進めるんじゃない!!!」


「え?違うの?どうせ、一回も話せてないんでしょ?もう無理よ」


その言葉が心に深く突き刺さった。


「いーけないんだ!チクチクことばは、わるいことなんだよ!」


「高校生男子が幼児退行するんじゃない!」


「しょうがないだろ!流石に焦っってんだよ。こんなに話せないとは思ってなかったからさ!!!」


そう、そうなのだ。中学校の時は高校にさえ入ってしまえば後はどうにかなると何故か思っていたのだ。


なんとなく、幼馴染だし?前みたいに話せるだろうという甘えがあった。


何が言いたいかって?簡潔に言おう。


ノープランってわけさ!!!!


「と、言うわけで。アドバイス求む」


「告っちゃえば?振られたらあきらめも付くでしょ。靴箱に手紙でも入れて呼び出してさ」


「雑!!!あまりにも雑!!なんか他にないの!?」


「えー、そんな事言われても。あたしそもそも応援してないし」


そうだった。人選ミス。


「でも聞ける人、他にいないんだよ」


「もう一人の友達に聞けば良いんじゃない?」


「いや、あ、うーん……」


いやねぇ?ちょっとプラチナは……ごめんなさい。


「もう一人の友達はぶっちゃけ、参考にならん。一ミリも!!!」


「そんな言い切るほど???」


「頼む!まじで愛彩だけが頼りなんだ!まじほんと少しアドバイスしてくれるだけでいいから!先っちょだけでいいからさ!」


「先っちょだけのアドバイスって何よ……。まぁ、でも、あたしだけ……かぁ」


愛彩は暫く悩んだ後、


「まぁ、良いわ一つだけね」


と快諾してくれた。よっしゃ!!まじで助かる……


ほんとまじで。


「あたしなら……」


「わくわく」







「積極的に話しかけるわね」


愛彩の発言にポカンとしてしまう。え、他になんかないの?


それが出来ないから困ってるんですけど???


クスクスと笑い声が聞こえた。前を見ると愛彩が涙目で必死に笑いを堪えている。


コイツ、話しかけられないのがわかってて……ッ!!!


そこで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。


「あ、やば。もう行かないと。じゃ、アドバイス通りに頑張ってネ(笑)」


「(笑)じゃねぇんだよ!!!」


俺は愛彩の後を走って追いかけ、他になにかないか問い詰めたが、「もう教えたでしょ?」以外何も返ってこなかった。


うん、もう愛彩には聞かないことにしよう。


俺は心にそう誓った。
























「ここの問題は、この公式の応用だ。一見、使えなさそうに見えるが、ほらここを展開すると……」


「うお、マジだ。公式の形になった」


今日の放課後は学校に残ってプラチナに勉強を教えてもらっていた。


毎日のように教えてくれるのでマジでめちゃくちゃ助かってる。ぶっちゃけ頭が上がらん。


なんでこんなに良くしてくれるのか聞いたら「魂の契だから」だそうだ。


要するに、友達ってことだと思う。たぶん。厨二病の変なやつだが、中身は優しいやつだ。変なやつだけど(二回目)。


「おい、立花たちばな。いま失礼な事を考えただろ」


「き、気のせいだよ〜」


「無駄だ。魂の契を交わした以上、お前の考えは手に取るように分かるぞ」


何その仕様。怖いんですけど。


てか、俺は出来ないの不公平じゃね?


「私は世界の監視者だからな。造作もないことだ」


「わー、すごいね(棒)」


「当たり前だ。私は白銀之堕……プラチナなのだからな」


ちゃんとプラチナ名乗ってんのな。純粋かよ。ちょっとかわいいな!!!


そんな事を考えていると、プラチナが急に話題を振ってきた。


「そういえば、前から聞きたいことがあったのだが」


「ん?どうした改まって」


俺が首をかしげると、


「いや、大した話ではない。立花は葉狼来夏のことが好きなのか気になってな」


「ブフォッ!!」


「どうした!!狙撃されたか!?敵はどこに……」


「……いや、違うから。大丈夫」


「そうか、なら問題はないが……」


まさかプラチナに勘づかれていたとは……、意外と鋭いのか?


「よくわかったね」


「まぁ、陳腐な言い方をするなら、女の勘、というやつだ。それに立花はわかりやすいからな。嫌でも気づく」


「そんなにか……」


「よく、立花は私に葉狼来夏がどれほど魅力的か話してくれるからな。気づかれたくないのなら控えたらどうだ?」


「……しょうがないだろ!!!あんなに素敵なんだから!誰かに話したくなるんだよ!(逆ギレ)」


「良いと思うぞ。私も好きなものは誰かに自慢したくなる気持ちは理解できる」


私の場合は魔術とかな。とプラチナが魔術について語りだしそうになったので話題を変える。


「じゃあ逆に、プラチナは好きな人とか居るのか?」


プラチナは少しも考えることなく、


「居ないな」


と答えた。


「即決?珍しいな。この歳の女子だと一人や二人居るもんじゃないのか?」


「他の人は知らないが、私はあまり人間に興味がなくてな。よく人に避けられるし、話す機会もなかった」


なるほどな、まぁ、そんな感じはした。


関わってきてわかったことだが、プラチナは意外とコミュ力が高い。


始めて話したときだって、話しかけてきたのはプラチナだったしな。


しかしなにか壁を感じた。


決して厨二病だからではない。


なんて言ったら良いんだろうな……自分は一人でも生きていける、そういった壁があったのだ。


……やっぱ少しは厨二病も関係あるかもしれんが……


「まぁ、だから好きな人云々は分からん。だから少し立花が羨ましい。私にはわからない感情だからな」


「そっか。なんか悪かったな。変なこと聞いた」


気まずい雰囲気になったと思い謝罪したが、プラチナは特に気にしていない様子だった。


「そういうわけだから、私の好きな人は居ない。恋バナできなくて悪いな」


「いや全然。好きな人できると良いな」


「そうだな。まぁ、今は立花が居るから好きな人なんて居なくても幸せだぞ。私と話してくれる人なんて中々居ないからな」


「そりゃ良かった。俺で良ければいつでも話聞くよ」


「助かる。……考えてみれば、ある意味私の好きな人は立花になるのかもな」


「え?」


「私を気味悪がらずに話してくれるし、一緒に居て楽しいからな。立花と居る時間は大好きだぞ。……む、どうした、そんな顔を赤くして。暑いか?」


「……だ、大丈夫です」


恥ずかしげもなくこういうこと言える人はずるいと思う今日この頃であった。


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