抱擁

 ミサキは、ぼくを放してくれなかった。


 ぼくの隣には いつも ミサキがいて

 ミサキが ぼくを捉えて離さなかった。


 そんな ぼくに

 あのコは近づいてきてくれたんだよ。


 それなのに、

 ぼくは あのコの想いを 踏みにじったんだ、きっと。


 離してしまったから

 あのコの想いを。


 話してしまったから

 ミサキに。


 あのコからもらった手紙を ミサキが見たいって言ったから

 解読できなかった ぼくは 見せてしまった

 その一文を


 ミサキは きっと、理解したんだと思う。


 それから

 ますます ミサキは ぼくから 離れなくなったから。


 それでも

 想いを向け続けてくれた あのコに

 今になって 感謝するよ。


 ミサキは ぼくを見ていなかった。


 ぼくの向こうに

 ミサキの理想の世界を見ていたのだよ。


 ミサキが焦がれた世界では

 男が男を愛していたから。


 ミサキの空想に

 ぼくは 戸惑いながらも 興味を示していたのは、

 ミサキの理想が ぼくだったからだよ。


 ミサキの世界で 男にされた ぼく。


 ぼくが望んた姿は

 それとは少し 違っていたけれど。


 ミサキは いつも

 ぼくの向こうに きれいな愛を追っていただけ……












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