ぬくもりシェアハウス

@wakke

1日目

今日は2024年3月16日。

暖かい太陽と柔らかい風が気持ち良い。

『 今日はすっごくいい1日になりそう... 』

と私は一言呟いた。


私はスーツケースをコロコロと引きながら

軽やかな足取りで桜並木を抜けていく。

例年より早い桜の開花に驚きながらも花の美しさに思わず足を止めて見惚れてしまった。


その時、私の腕の中にいるもふもふの愛らしい生命体が私の腕をぽんと叩く。

『そーだね‼︎ 眺めてないで早く行かなきゃ‼︎ 』

私は並木道の先に見える小さな家へとにこにこ笑顔で足を進めた。


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『 ここがシェアハウス...‼︎‼︎ 結構大きい⁉︎⁉︎ 』


そう、わたくし譯(わけ)はこれから憧れのシェアハウス生活を始めようとしているのだ。

ここはシェアハウス『シャルール』、私が知り合いの建築家の力を借りて手がけた建物だ。

内見で一度内装も外装も見たものの、再度眺めてみると家賃とは釣り合わないぐらい立派な建物だなと感動する。

また道中と同じように見惚れていると、

次は後ろから誰かがとんと私の肩を叩いた。


『 わっすずち‼︎‼︎‼︎ おはよっ‼︎‼︎‼︎ 』

『 わけちおはよう!

てか恐竜さんも連れてきたんだ!?』


そこに居たのは鈴音。譯の相方で推しだ。

私はすずちとあだ名で呼んでいる。

黒と青の綺麗なオッドアイに黒髪ショートで、今日も黒パーカーを身に纏っている。

鈴音はいつも優しく接してくれて譯のことを理解してくれる。かっこいいし可愛い。 推し。

シェアハウスの同居人の1人であり、自分が1番最初に誘った信頼できる人である。


そしてすずちが言っていた恐竜さんとは、

私の腕の中にいるもふもふ生命体のことだ。

自分が物心ついたときから一緒にいるので

恐竜さんが自分の何なのかはわからないが、

ずっと共にいるので家族みたいな関係だと勝手に思っている。


会話を迷っているとすずちが口を開く。

『 シェアハウス、呼んでくれてありがと!』

『 いえいえ逆に来てくれて嬉しいっ‼︎‼︎

早速お家入って重い荷物置いちゃお‼︎‼︎ 』

そうして2人はシェアハウスの玄関を開けた。


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『 内装もめちゃめちゃ綺麗だね‼︎‼︎‼︎‼︎ 』

『 んね!外観からわかってたけど広っ... 』

『 同感すぎる...早速自室行きますか‼︎‼︎ 』

『『 れっつごー‼︎ 』』


このシェアハウスは3階建で、1階につき3部屋ずつ配置されている。

2階にはリビングルーム・ダイニングルーム・キッチンがあり、1階には洗面台とお風呂場、更には防音室もついている。

防音室は私が無理を言って渋々受け入れてもらった。本当に感謝しかない。


自分とすずちの部屋は1階にあり、お互い隣室にしてもらった。契約の際に1番に取り決めたかったことがこれと言っても過言ではない。


『 わけが1番奥ですずちはその隣‼︎‼︎

隣人同士よろしくです‼︎‼︎ 』

冗談混じりに敬礼をすると、すずちも敬礼を

返してくれた。

ぐっ...可愛い...なんて可愛いんだ...と私は心の中で呟いた。


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自分は荷物を自室に置き終わり自室から出て、隣にあるすずちの部屋のドアをこんこんとノックする。

すると目の前の扉でなく玄関の方からガチャと扉が開く音がした。


『 やっと着いたぁ〜!』

可愛らしい声がした方向を見ると、特徴的な白色の猫耳パーカーを身に纏い髪の毛先を紫色に染めている、いかにも「可愛い」を具現化させたような人が玄関に立っていた。


『 いらっしゃい‼︎‼︎ こととっ‼︎‼︎ 』

と、私はにこにこ笑顔で手を振った。

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