第12話 誘拐騒動でメスガキをわからせた!
くぱぁの扉を通り抜けた俺たちは、ヤーラシア大陸の東の果てにあるバーキアの街へとやってきた。何でもこの街には、ビルのような大きな建物でアダルティなグッズを扱うお店があるという。
早速そこへ行ってみると、店内は俺たちのような氷河期おじさんで溢れかえり、汗臭さとイカのような臭いが充満していた。これだから実店舗でエロ系の買い物はしたくないのだ。
俺はネットでポチってコンビニ払いできた元の世界を懐かしく思った。まぁそのせいで、こっちの世界へ転生してきたんだけどな。
悪臭に耐えながらアクメス3世から頼まれたモノを探して回るが、似たような商品ばかりでどれがいいのかさっぱりわからない。そもそも、そういうおもちゃについての知識も全くない。
「これなんかいいんじゃないかしら」
そう言ってトヨーコが勧めてきたのは、なんとトロール用のおもちゃだった。
「アホか! こんなバカでかいのなんかあの女王様が使えるわけないだろうが!」
「そう? あたしならこんなサイズ余裕だけど。じゃあこっちのかしら」
次に勧めてきたのはドワーフ用のおもちゃだった。これもかなりゴツくて女王様にはムリだと思うのだが。
さてはこのババア、メスガキのことだからって本気で探す気がないな。ていうかお前、トロール用でも余裕ってマジかよ……。
ここは素直に店主に聞いた方がよさそうだ。
「幼女に合うおもちゃ? すまんが今日はもう店じまいだ。じつは私の愛娘アニータが……」
店主におもちゃについて尋ねてみたところ、今はそれどころではないとの答えが返ってきた。何でも娘がならず者にさらわれてしまったのだという。
「店主殿、つかぬことをお伺いしますが、その娘さんの年はいくつですか?」
娘というワードに敏感に反応したシコルが店主に尋ねた。
「え、年ですか? 私の娘は12歳ですが、それが何か??」
「おぉ、それは素晴らしい! それで12歳というとJCですか? それともまだJSですか? で、できればJSの方が望ましいのですが……」
「は、はぁ? JCかJSか? それは一体何のことでしょうか??」
シコルの質問に店主はすっかり困惑している様子だ。
いやお前、この世界の人間にJCかJSかなんて聞いてもわかるわけないだろう。ていうか、それ重要なわけ?
「ま、まぁ12歳ということでしたら、それはどっちでもいいでしょう。安心してください、娘さんは私たちが必ず助け出します! そういうわけでコドージ殿、娘さんを助けにいきましょう!」
目の色を変えたシコルが勝手に引き受けてしまった。まぁ、俺も話を聞いて助けるつもりではいたけどさ。
そこで、まずは街の住民にあれこれ聞いて回り(いずれもメスガキでわからせ済み)、ならず者どもが街の北にあるガキ捨て山の洞窟をねぐらにしているということを突き止めた。
俺たちは早速その洞窟へ行ってみると、一人の女の子がおじさんを土下座させている場面に出くわした。
「おじさんさ~♡ あたしに声かけてこんなところに連れ込むってどういうつもり~?♡ これって誘拐っていう犯罪なんだけど~♡」
「いや、こ、これはその……、キミが家出して行くところがないっていうから、と、とりあえずうちに泊まってけばって思っただけで……。こ、これは誘拐なんかじゃない!」
「だ・か・ら~、それは未成年者誘拐罪っていう立派な犯罪なんです~♡」
女の子は見たところ10代前半くらいだろうか。黒髪を編み込みカチューシャにして一見すると可愛いのだが、その顔は侮蔑に満ち溢れた笑みを浮かべてなんとも言えないメスガキ臭が漂う。だが容姿は店主が言っていた娘のアニータの特徴と見事に合致している。
そして土下座をしている男なのだが、どこか見覚えがあると思ったら、ロリアマ王の《メスガキのわからせブルーレイ》を盗んだヤルタダじゃないか。
あの時はせっかく見逃してやったのに、こんなところで何やってんだよまったく……。
俺はすぐに助けに入ろうとしたのだが、ここはもう少し様子を見てみようと思い直した。
「い、いや、本当に俺はただキミが困ってそうだから一時的にうちに泊めてあげようと思っただけで、ゆ、ゆゆ、誘拐とかそんなつもりじゃないんで!」
「こうゆうことするおじさんってさ~、みんなそうゆう言い訳するんだよね~♡ 下心もなしに女の子を泊めるわけないじゃん♡」
「そ、そそそ、そんなことないって! 本当にただ泊めてあげようと思っただけだから!」
「はいはい♡ そうほざくのは勝手だけど、今から衛兵に連絡するから♡ 震えてシコってろ、ざ~こ♡」
「そ、それだけはどうか待ってください! お願いしますううううう!!」
ヤルタダは惨めなくらいに動揺して、アニータの脚にすがりつき懇願した。だが、どさくさに紛れて脚をすりすりしてるようにも見える。
「ちょ、キモっ♡ このざこ、放せっての♡ それもアウトだから♡ 誘拐罪に強制わいせつも追加ね~♡」
アニータがすがりつくヤルタダに何度も蹴りをお見舞いする。
「うぐっ! あ、いたっ……♡ がッ! あたっ……、あっ♡」
蹴られているヤルタダが喜んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
それはともかく、これまでのやり取りを見ていると、アニータが誘拐されたというのが何だか疑わしく思えてきた。
経緯はどうあれ、ヤルタダがアニータに声をかけてここに連れ込んだのは事実なのだろう。だが果たして、それをもって本当に誘拐と言えるのだろうか。
元いた世界でも、この手の事案で多くの氷河期世代のおっさんが冤罪で涙を飲んできたのを俺は知っている。
もちろん、ヤルタダに全く下心がなかったのかというと、きっとそうではないのだろう。あわよくば、ムフフな展開なんてのも期待していたはずだ。
だがアニータの言動を見るにつけ、こいつは紛れもなくメスガキであり、最初からヤルタダをはめるつもりだったに違いない。
となると、もはやこれはヤルタダだけの問題ではない。俺たちのような氷河期おじさん全ての尊厳に関わることだ。
そして何より、目の前にクソ生意気なメスガキがいるならばわからせるのみ!
「おいメスガキ! そこまでだ! お前の悪だくみ、俺は全てお見通しだぞ!」
「は? あんた誰?♡ あんたもこのおじさんのお仲間?♡ 見たところいかにもな氷河期だし~♡」
「あ、あんたは確かティンポーニの塔で会った勇者の旦那か!?」
「久しぶりだな、ヤルタダ。安心しろ、俺はお前の味方だ。今助けてやるぞ!」
俺は《わからせ棒》を使った。
「ちょ、いきなり何すんの! いや、放して! 触んな、ざこ! こ、これって犯罪だからね! いやあああああ!」
俺は《わからせ棒》を使った。
「やだやだやだ! お願い、やめ……ひゃあ! くふぉお゛お゛お゛お゛お゛……、あっ、あんっ、はッ、おんッ、いっ、はぁ……♡」
俺は《わからせ棒》を使った。
「おっ♡ はっ♡ あ゛っ♡ ん゛ぁ♡ い、いい♡ お店のおもちゃより……、ハっ♡ ふひっ♡ すっごくいい♡ あッ お゛んっ♡ もっと……、あっ♡ もっとお願あああああい♡」
こうして俺は、冤罪に散っていった全ての氷河期おじさんの無念を晴らすべく、この舐め腐ったメスガキを徹底的にわからせた。
「ありがとうございます、ありがとうございます! さすがは勇者の旦那だ! 本当に助かりました!」
「いや、礼には及ばない。これは氷河期おじさんとしての矜持みたいなものだからな」
我ながらちょっとカッコいいことを言ってみた。
「ところで旦那、助けてもらったついでにひとつお願いがあるんですが……」
遠慮がちにヤルタダがそんなことを言ってきたので聞いてみると、こいつもアニータをわからせたいという。
まぁシコルやヤラヨソも今か今かと待ちわびているので、その後でよければと好きにさせてやった。
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