第4話 ヤベー奴らが仲間に加わった!

 ヤダーハンの城内であれこれ情報収集した俺は(いずれもメスガキでわからせ済み)、城下町にあるハロギルで仲間を募った方がいいと言われたので、まずはそこを訪れてみることにした。


 ハロギルとはハローギルドの略で、冒険者どもが様々なクエストを求めて集まる場所だという。まぁ現実世界でいうところのハローワークみたいなものだ。


 実際に行ってみると本当にハローワークみたいなところで、そこには死んだ魚のような目をした覇気のかけらもない失業者、いや、冒険者どもがたくさんいた。


 しかも、どいつもこいつも俺のような氷河期世代のおっさんばっかりだ。このおっさんらも、俺と同じように氷排法によって日本から強制的に転生させられた奴らなのだろうか。


 こいつらを仲間にするのって何か嫌だな……。


「あなたは神を信じますか?」


 ここにいる連中に同族嫌悪みたいなのを感じて吐き気を催した俺は、ハロギルを出ようとしたところ一人のおっさんに声をかけられた。

 

 僧侶の風体をしたそのおっさんは見るからにクソざこそうで、そして胡散臭い。しかも神を信じますかって、露骨に宗教の勧誘かよ。


「は? 神なんて信じるわけないだろ。むしろ、神が本当にいるならわからせてやりたいわ!」


 神と聞いて俺は吐き捨てるように答えた。


 この世界では、スカーラという氷河の女神を崇める宗教が広く浸透している。しかもその女神が、俺たちのような氷河期世代をこっちの世界へ転生させているらしいのだ。だから俺のような氷河期にとって、そんな忌々しい女神なんか信じるわけがない。


「おぉ、それは素晴らしい! あなたは同志だ!」


 僧侶のおっさんがいきなり俺の手を取りそんなことを言ってきた。


 ちょ、手汗とか色々ぬめっとしてて気持ち悪いから離せっての!


 このおっさんの話によると、こいつもやはり俺と同じように日本から転生させられた氷河期世代なのだという。そして自分を転生させた氷河の女神を憎み、同じような仲間を探して旅をしているそうだ。


「じゃあ何で、お前は憎んでる氷河の女神を崇める宗教の僧侶なんてやってるんだ?」

「確かに私の見た目はこの通り僧侶ですが、それは世を偽る仮の姿。真の姿は女神スカーラへの復讐とわからせを誓ったなのです! あ、せいは性欲のせいですのでお間違いなく」


 ……そ、そーすか。熱っぽく語るおっさんの眼には一点の曇りもなかった。


「それに、信徒である私にわからせられる女神を想像してごらんなさい。何とも背徳感があって萌えるじゃありませんか。くっくっく……」


 こいつ、ガチでヤベー奴だ。だが、こいつのこの頭のネジが何本かぶっ飛んだような考えは嫌いじゃない。


 何より女神をわからせたいというその心意気やよし!


 そこで俺はこのヤバいおっさん僧侶を仲間にすることにした。


「私の名はシコルと申します。ともに女神を、そして世のメスガキどもをわからせてやりましょう!」


 見た目や中身だけじゃなく、名前もかなりヤバかった。ま、俺も人のこと言えないけどな。


「ワシも仲間に加えてもらえぬかのう?」


 熱い抱擁をしてきたシコルを拒んでいたところへ、またしてもヤバそうな男が声をかけてきた。


 その風貌からすると魔法使いのようなのだが、半世紀以上も子供部屋に引きもこもっていた見るからに胡散臭そうな、いや、臭そうなおっさんだ。


「何やらわからせという言葉が聞こえてきたが、お主らも日本から来た氷河期じゃろう? ならば頼む、ワシも仲間に加えて欲しい」


 このおっさんも氷河の女神によって転生させられたようだが、どう見ても俺ら氷河期世代よりももっと上のジジイのように見える。


「まぁ、わからせに興味があるのなら仲間にしてやらなくもないが……。その前に、まずは風呂に入ってきてくれ。臭くてたまらん」


 おっさんは何年も風呂に入っていないのか、ドブのような臭いがしていて、さすがにこれは俺ですらドン引くレベルだ。


「むむっ、そんなに臭うかのう? これでも風呂には三年前に入ったのじゃが」


 やっぱりそんなに入ってなかったんかーい!


「そうじゃそうじゃ、申し遅れたがワシは大魔法使いのヤライソじゃ」


 自分で大魔法使いって言うのかよ。しかも名は体を表すの通り、童貞のまま50を過ぎてしまったのだという。となると、大魔法使いと言うのも強ち間違いではないようだ。


「ワシの得意とする魔法は睡眠魔法の『スカピー』と覚醒魔法の『キメル』じゃ。どっちもメスガキをわからせる時には重宝するはずじゃぞ。ひゃっひゃっひゃ」


 ヤライソは生まれてこのかた剃ったことがないような、足まで伸びるひげを撫でながら得意げに笑った。


 これまでその魔法を使って、たくさんのメスガキをわからせてきたというわけか。


 いいだろう、合格だ。俺はヤライソも仲間にすることにした。でもその前に、とにかくお風呂に入ろうね。


「ねぇねぇ、そこの氷河期のおじさんたち。これからあたしと遊ばない?」


 そんな女の声が聞こえたので、メスガキが声をかけてきたのかと思って振り向くと、見たところ40は過ぎてそうなババアが立っていた。。


「ねぇちょっと、聞こえてんの? あたしと遊ばないって言ってんの!」


 ババアに用はないとシカトを決め込んでいたのだが、しつこく絡んできやがった。


 改めてよく見ると、そのババアはどっかの公園の路肩で突っ立ってそうな、けばけばしいでたちをしている。もうそれだけで絶対に無理なんだが。


「俺たちはこれからメスガキをわからせる冒険に出るところなんだ。だからババアと遊んでる暇はない!」

「何ですって? あんたたち、メスガキをわからせる冒険に出るの?? それならあたしも連れていってよ!」


 なぜだかババアが食い気味にそんなことを言ってきた。ババアなのにメスガキのわからせに興味があるというのか?


 よくよく話を聞いてみると、こいつも日本から来た氷河期世代で、前世でもこっちの世界でもメスガキにはいつも商売の邪魔をされていて激しく憎んでいるのだという。何の商売だよってのは敢えてつっこまないでおいた。


 ぶっちゃけ、ババアを仲間に加えるメリットなんてなさそうだが、メスガキをわからせたいという強い気持ちに押されて、俺はしぶしぶ承知してしまった。


「ありがとう。あたしの名前はトヨーコよ。冒険の途中でムラムラしたらいつでも言ってね。お仲間価格でたっぷりサービスしてあげるわ♡」


 いや、ムラムラすることはあっても、お前のお世話になることは絶対あり得ない。


 こうして、ババアで遊び人のトヨーコも仲間に加わった。


 後で改めてシコル、ヤラヨソ、トヨーコの三人のステータスを確認してみたのだが、揃いも揃ってレベルが10以下のクソざこだった。


 あれ? 何かこいつらを仲間にする意味ってなくね??


 俺は地味に後悔しつつ冒険に出発したのだった。

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