第3話 ついにメスガキの女王をわからせた!

 ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、ドゥードゥルン♪

 

『残念ですが冒険の日記が消えてしまいました』


 何やら頭の中で、おどろおどろしい音楽とともにそんな言葉が聞こえてきた。


 そして目を開けてみると、そこはいつもの見慣れた子供部屋の天井だった。


 あれ? 確か俺はかーちゃんにヤダーハンの城へ無理やり連れて行かれて、メスガキの女王に会い、そこでミミックに食われたんだよな。


 それなのに、どうしてまた俺の部屋に?


「コドージ! 出てきなさい、コドージ! もう部屋に引きこもって40年よ!」


 母親の怒声とともに部屋のドアを激しく叩く音が聞こえてくる。


「今日は女王陛下にお目通りして冒険の許可をもらう日でしょ! もう何年も先延ばしにしてるんだから!」


 え? これって、さっきも同じようなことがあったよね??


「どうしても出てこないっていうのなら、このドア叩き壊すわよ!」


 その声と同時に母親が部屋のドアを叩き壊した。


 ちょ、相変わらず怪力だな、うちのかーちゃん。


 そして俺は、再び母親によって無理やりヤダーハンの城へ連れて行かれたのだった。


「きゃはは♡ あんたが勇者ヤリテガの息子のコドージ?♡ ただのおじさんじゃん♡ マジでウケるんですけど~♡」


 謁見の間で、俺はメスガキの女王から再び同じように馬鹿にされた。その後の流れもさっきとまるで一緒だ。


「だからさ~、お前に跡を継いで魔王をさくっと退治してきて欲しいんだよね~♡ ま、お前もクソざこだろうから全然期待してないけど~♡ きゃははははは♡」


 さっきはここで、俺はこのメスガキ女王をわからせたいと強く思ったのだった。


 今度もまた小憎らしい顔で煽ってくるので、むくむくとわからせ願望が込み上げてきた。


 わからせたい。そう思いぐっと拳を握ると、目の前にウインドウが浮かび上がった。


 はいはい、どうせレベル1のクソざこですよね。わかってますって……。


 ――!?


 俺はウインドウ内にあるステータスに目を見張った。なんと、レベルが99になっているじゃないか!


 しかも、能力値も全てカンスト状態となっている。魔法も全て習得済みだ。


 これは一体どういうことなんだ?


 まぁ、あまり深く考えてもしょうがない。それよりも、レベル1のクソざこだった俺が、なぜかレベルがカンストして最強になったというわけだ。


 メスガキ女王め、これでもう俺のことを馬鹿にはさせないぞ!


 そう思いつつふと道具一覧を見ると、そこに何やら見慣れないものがあった。

 

 ――《わからせ棒》――


 こ、これは、さっき俺が心の底から欲しいと願ったあの伝説の道具じゃないか!?


「レベル1って超ウケるんだけど~♡ ……って、あれ!? レベルが1じゃない? う、嘘、何そのレベル……。お前、クソざこおじさんなんじゃねーのかよ??」


 さっきまで散々イキっていたメスガキ女王のクソ生意気な顔が見る見る青ざめていく。ははは、じつにいい表情だぞ、このメスガキ。


「これまでよくも散々煽ってくれたな。誰がクソざこだ? しかも、親父のことまでざこ呼ばわりしやがって! お前のようなメスガキはこうしてやる!」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「は? ちょ、何それ?? キモッ! そんなの近付けんな!! ひゃあ!?」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「ちょ、待って! いやぁ! ふぉあああ……、い゛い゛い゛……、やだっ、あんっ……」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「あんッ、んあっ♡ あ、あたしは女王なんだぞ! こんなことしてタダで済むと思って……あんっ♡ あッ♡ んッ♡ いい♡ んおっ♡ もっと……♡ あぁ♡ おほッ♡ おッ♡ あぁ♡ もっと……、もっとお願あああい♡」


※ ※ ※


「ふんっ、ただの引きこもりおじさんかと思ったけど、さすがはヤリテガの息子ね♡ 父親と同じくなかなかのやり手じゃん♡ いいわ、あんたが旅に出るのを認めてあげる♡」


 乱れた衣服を整えながらそんなことを言うメスガキ女王は、もうすっかりメスの顔になっていた。


 どうやら俺は、このクソ生意気なメスガキ女王をわからせることができたようだ。


 ていうか、父親と同じくなかなかのやり手って、それってどういう意味だ?

 

 もしかして親父のやつ、冒険に出る前にこのメスガキ女王をわからせたっていうのか??


 いや、ないない、それはないな。だって、親父が冒険に出たのは数年前のことだし、そうなるとこのメスガキはまだJS2、3くらいの年のはずだ。。


 それはいくらなんでもあり得ない……と思いたい。


「あ、そうだ♡ 旅に出る前にそこの宝箱あんたにやるよ♡ 開けてみ~♡」


 メスガキ女王が腹黒い笑みを浮かべて玉座のそばにある宝箱を指差した。


 その宝箱は確かミミックだったよな。このメスガキ、この期に及んでまだ俺をコケにしようってか。


 どうやらまだまだわからせが足りないようだな。


 俺は《わからせ棒》を使った。


「ひ、ひゃん♡ はあああ……♡ あっ♡ ふッ♡ んあっ♡ あんッ♡ あひっ♡ ご、ごめんなひゃい♡ はぁ♡ ハァ♡ あッ♡ んあああ♡ ゆ、ゆるひて……、ゆるひてくだひゃ~い♡」


 俺は再び《わからせ棒》を使って、もう二度と俺を馬鹿にする気が起きないように徹底的にわからせてやった。


「旅の途中でお金が必要になったらいつでもあたしに言ってね♡ 好きなだけあげる♡ あ、その時はあたしのこともわからせてよね♡」


 こうしてメスガキ女王に再教育を施した俺は、いつでも自由に現金を引き出せるATM化に成功したのだった。


 よし、これで冒険での資金面の心配はなくなったというわけだ。


 ぶっちゃけ、今日までただの引きこもりおじさんだった俺にとって、冒険に出て魔王を倒すなんて面倒臭くてやりたくはない。


 けどまぁ、ミミックに食われて一度死んだ俺は復活して、しかもどういうわけかレベルもカンストして最強になった。


 それに今は、あの伝説の道具わからせ棒まで持っている。


 これなら世界中を旅して、あちこちにはびこるメスガキどもをわからせて回るのも悪くはないか。


 そう思った俺は、意気揚々と謁見の間をあとにしたのだった。

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