第12話 先生とクラスメイト

「なるほど。それで転移魔法を。使うなとは言いませんが、なるべく使わないように。まだ高校生なので、それだけ魔力消費の激しいものを使うと授業の前に疲れてしまいますよ。……普通ならね」

「あはは……すみません」

 登校して職員室に着くなり、銀髪の左耳にタッセルピアスを着けている先生と思われるエルフの先生に、転移魔法を使ったのかと聞かれて理由を言ったら困った顔をされてしまった。

 そりゃ、そうだよね。年齢的に普通使ったらとんでもなく疲れたり、失敗してしまうことの方が多いもんね……。

「授業に支障のない程度なら、まあ、いいでしょう。さあ、教室に行きましょうか。ホームルームの時間ですから。椚木手鞠さん」

「は、はい。えっと……」

「うん、ああ、私は慈恩じおんです。あなたのクラスの担任ですから、ぜひ覚えてくださいね。あと、呼び方はお好きにどうぞと言いたいのですが、じーちゃんだけはやめてください……」

「……それは、もちろん。よろしくお願いします。慈恩先生!」

「はい。よろしくお願いします」

 とてもにこやかな微笑みだ。この世界で一番似ているのは……ルナさんの微笑み方かな!

「ところでそのお化粧ですが」

「えっ、ダメ、でしたか?」

 校則までは全て把握してないよぉ……。

「ダメじゃないですよ。とても可愛らしいです。もちろん当校では自由なので、好きに楽しんでくださいね。でも、すっぴんでも可愛らしいと思いますけど。ふふっ」

「は……はい……」

 な、なんだか顔に熱が集中していくのがわかる……。

 なんでこの世界はこんなにも美男美女が多いのよ!

 平凡な私は……。

 化粧くらいしないと、皆に釣り合わないんだけどな。

 そんなことを思いながら軽く学校の説明を受けながら教室に向かって行く。

 さすが有名どころの魔術高等学校。大きいからそれだけ中も広くて歩く距離が長い! 体力ないと無理じゃないって思うくらいに歩く。

 日本の小さなスケールの学校なんかと全然違う大きさで、私は……早速疲れ始めていた。

 元々歩くのだってゆっくりだし、長い距離歩かないんだから、仕方ないか。これから少しずつ体力作っていくしかないや。


「皆さーん、新しいクラスメイトがやって来ました。まだこの街に来て間もないので、学校だけではなく、いろいろな面でサポートしてあげてくださいね。それでは手鞠さん、自己紹介をどうぞ」

 後ろの黒板でチョークが宙を舞って私の名前を書く音がする。

「椚木手鞠です。あの……。体調の関係で、これまで学校生活というものはあまり送れなかったので、いろいろ教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします!」

 そう言って頭を思い切り下げると、パチパチと拍手の音が聞こえ始めて、頭を上げる。

 皆私を快く迎えて……くれているんだよね。


 いや、違う。

 明らかに、敵意を感じる。

 敵意を向けてきた人を見てみると、そこにはピンクの髪のお嬢様としか言い表せない子が、私に冷たい視線を送っていた。

 でも、私と目が合うと、にこりと微笑み拍手をしてくれた。

 気のせい……だと思いたいけど、多分気のせいじゃない。

 気をつけよう。

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