第8話 夢を見る

 ベッドに横になっていたらいつの間にか眠ってしまったらしい。

 これは、夢だとわかる夢……。


 私は鏡お兄ちゃんと美鶴の、兄弟三人だけで出かけていた。

 街でアイス食べて、美鶴が私のアイスを欲しがって……。鏡お兄ちゃんが「仕方ないな」って困った顔して笑って、新しくアイスを買うんだ。

 美鶴はそれを受け取ると、凄く嬉しそうに笑うんだよ。

 凄く幸せで、でもすぐにその幸せはお別れになる。

 あの殺人鬼がやってきて、私達兄弟を引き裂くんだ。

 鏡お兄ちゃんがまず殺されて、私が殺されて、美鶴が逃げていく。

 光の先へ。

 絶対に、こっちに来ちゃダメ。

 逃げて。美鶴。美鶴にだけは、生き残っていてほしいの。姉ちゃん達は大丈夫だから。

 アイスだって、いつか、また会えたらいくらだってあげる……。

 それが無理だとしても、他の誰かがきっと美鶴にあげるって言ってくれる人がいるから。


「美鶴ー、逃げてー。ですか?」

 突如として宇都宮さんの声がして目を覚ます。

 そこは真っ白な空間で、また死んだのかなと思った。

「いやいや、違いますよー。夢というのは神などの実体のないものと人間が非常に近いところに接することが出来るところにありますので、こうして夢を介してお話させていただいているわけです」

「あ、そう……」

 なんだか、よくわからない。

 でも、私を馬鹿にしたいであろうことはわかった。

「いえいえ、とんでもないー。そんなつもりは全然ございません。ええ。神ですから自分に誓いますとも」

「それで、人の夢を勝手に見て、話がしたいって、何? 宇都宮さん」

「いや、実はですねぇ、前世でのあなたへのギフトが予想以上に大量であることが判明しまして。どうやって使っていこうかなぁと思ったのですが、さすがに一人の人間にそんなにギフトをやってしまってはまた別の人間達に示しがつかないといいますか」

「簡単に言って」

 まどろっこしいのは嫌いなんだ。私。

「簡単に申しますと、何らかの報酬として渡すのであれば問題がないので、どうです。クエスト形式にされてみては。ああ、期限はありませんよ。大きなものと小さなものをそれぞれ夢の中でお伝えしますので、それを達成していただければと思います。あれですよ、あれ。ゲームのような感覚でやっていただければと思います」

「あー……。なんか、よくわからないけど、それでいいよ。もう」

「いいのですか? あとでやっぱり一括で貰っておけばとか後悔したりクレーム入れたりしません? クレーム処理はまた別の者が担当になってますので」

「いいってば! しつこい!」

「承知いたしました。では、分割で、クエスト形式っと。ではこちらにサインをお願いいたします」

 金色の契約書に渡された万年筆でサインをする。

「ありがとうございます。こちらでご契約は以上となります。さて、あとは目覚めるだけですが、手鞠様から何かございますか?」

「あの美男美女達は何なの……?」

「ああ、あれですか。私の趣味でございます」

「あっそ……」

「それではお時間となりましたので、お目覚めください。それではいってらっしゃいませ」

 宇都宮さんの笑顔、見慣れてきたなぁ。

 そんなことを思いながら目を覚ました。

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