第34話 蜘蛛の出現

「ギルドマスター!!!50階層に蜘蛛の大軍勢が!!Aランクモンスター級と思われるモンスターの姿も!」


「なに!?す、すぐに冒険者達をかき集めろ!緊急依頼を発令!市民の避難誘導!領主にもこのことを伝えろ!」


「は、はい!」


「50階層まで迫っているだと?どうしてそこの階層まで接近に気づかなかったんだ?あれから調査依頼は高ランク冒険者やクランにかなり短いスパンで出していたし、ギルドの調査員も派遣して70階層まではなにかあったらすぐに感知できるようにしていた。」


まさか、こちらに戻ってくる前に全員殺されたのか?中にはAランク冒険者もいるのだぞ。

Aランク冒険者さえも逃げることもできない敵…

キバは冷や汗を全身にかいた。









「スケさん大変ですわ!蜘蛛のモンスターの大群が上層にまた上がってきているようですの!学校もしばらくは休学になりました。」


ーあぁ、絶対外にでちゃダメだぞー


「皆さんを助けに行かなくては!」


ーいや、危ないって!むしろ俺はアリアには逃げて欲しいんだが。ー


「逃げませんわ。なにか私にもできることがあるはず!スケさん行きますわよ!街に!」


ー…まぁ、それがアリアだよな。わかった。だけど、約束してくれー


「なんですの?」


ーもしも、危なかったりなにかあったら躊躇なく大召喚コインを使え。わかったな?ー


「でも、なにが出てくるのがわからないんですよ?」


ー大丈夫、出てくるのはアリアの味方だよー


「私にはスケさんがいるから大丈夫ですわ!」


ーだから、今の俺はスケルトンなんだってー

俺はそう言ってカラカラと笑った。


そうしてアリアは家の者にバレないように家を抜け出した。



俺とアリアはとりあえず冒険者ギルドに向かった。アリアはとりあえずギルドで情報を集めるつもりらしい。



ギルドは凄まじい喧騒に溢れていた。

ギルド職員もみんな対応に追われているこれでは話を聞くどころではない。


「うわー、これどうします?…逃げます?」

褐色の肌をした男の人がアリアの隣でエルフの女の人に話しかけている。


「…逃げよう!私達ではどうにもならん。」

エルフの女の人は少し考えてから少年に答えた。


「でも、ジンさんまだ帰ってきてませんよ?」


「白銀ならば大丈夫だろう。幸い緊急依頼はCランク冒険者以上の者にしか発令されておらん、我々はEランク。我々には強制力はない。」


「そうですね。ぼく、今回の蜘蛛の侵攻はやばいと思うんですよね。たぶんこの蜘蛛たち外に出てきますよ。」


「あぁ、私もそう思う。そうなってからでは逃げるのは遅い。」


おっ!アリとルーファじゃねぇーか。

やっぱりこいつらの嗅覚は鋭いな。正解だ。

早く逃げな。


「あの!どういう状況か教えてくれませんか?」


「ん?貴族の娘がなんのようだ?お前も早く逃げた方がいいぞ。最初60階層で見つかったそうだが、今はもう30階層まで来ているらしい。凄まじい速さで上層に侵攻してきている。それだけ蜘蛛達が強大で、強力に統率されていると言うことだ。もう30階層では蜘蛛達に抵抗するモンスター達もいないだろう。すぐにでも地上に上がってくる。そうしたら…おそらくクーリッヒは落ちる。」  


「市民の避難誘導は進んでいるのですか?」


「進んでいるわけないよ。僕たち冒険者と違ってここに住んでいる人はここでの生活がある。身軽ではない。かなり難渋しているみたい。」


「では、避難誘導の手伝いに行かなくては。もう時間がないのでしょう?」


「待ちなさい!貴方が行ってもなにも変わらないわ。お前も早く避難しなさい。」


「私も冒険者です!すこしでも力にならなくちゃいけないの!」


「んー、志しは素晴らしいけど。お嬢ちゃんランクは?」


「Eランクですわ!」


「やっぱり、低ランク冒険者でしょ?お嬢ちゃんはなんで低ランク冒険者が緊急依頼出されていないかわかる?」

アリはアリアに目線を合わせて言う。


「…わかりません。助ける人が多い方がいい気がしますし…」


「邪魔だからだ。弱いやつがいても守らなければ行かないものが増えるだけだろう?足手まといなのだよ。だからお前は避難しろ。」

ルーファが薄目でアリアをみながら言った。


おぉ、いいこと言うじゃないか。


ー俺も避難した方がいいと思うぞ。アリア、やりたいことをやるにはやる事に釣り合う力が必要だ。アリアはまだその力はない。ここは避難しよう?な?ー


「うわ!このスケルトン喋るの!?なんか気持ち悪。」


「珍しいスケルトンだな。」


アリが驚いてのけぞり、ルーファが興味深そうに顎に手を当てる。


よし、アリは一発今度殴ろう。


「スケさん、だから私は逃げませんってば!」

アリアが頬を膨らませる。


ドカーン!!!!


その時迷宮の入り口の方からなにかが崩れ落ちる音がした。


「おい、まさか、いくらなんでも早すぎる!」

ルーファが焦ったように言った。

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