53 いや、ハーレムじゃないから

勇太はリーフカフェで新たに軽食を増やす関係で、パラレル純子と繋がりが出来そうになっている。


一夜が明け、カフェとパン屋の交渉は大人に丸投げ。


今日は学校。ルナと一緒に登校している。そして謝っている。


「ルナごめん。ルナの妹に関わらないつもりだったけど、会ったら手助けしたくなった・・」


正直、ルナは寝不足だ。勇太の愛情の深さを信頼している。


だけど去年は、自分の彼女になってくれそうだった女の子が双子の妹・純子に寝取られている。


そのときは平気だった。しかし今度は違う。


勇太なら大丈夫だと思っても、不安なのだ。


「勇太、正直に言うね。前に純子に女の子を取られても平気だった。そんなの何度もあった・・けど」


ルナは勇太と向き合った。ちょうど人の流れが途切れた。往来に2人きりだ。


「勇太が純子に取られていなくなったら、私、涙が止まらないと思う。我が儘でごめんね」


「いや、そんなに思っててくれて嬉しい」


勇太はパラレル純子に関わっても、ルナを裏切ったりしない自信がある。前世では長い時間を一緒に過ごしたのに、純子に対して恋愛感情は芽生えなかったから。


それは別人のパラレル純子に当てはめていいのだろうか。根拠にならない気もするが・・


それに前世で恋愛感情が芽生えなかったのは、勇太だけだ。


「じゃあさルナ、先に純子に会おうよ。昼休みにでも話してみなよ」

「それがいいかな。勇太と会った頃から2か月も、避けられてきたけど、このままじゃダメだよね」


「でさ、話してみてルナがまだ抵抗感じるようなら、もう俺は純子には個人的には関わらない」

「え、カフェの仕事も絡むのに、私が優先?」


「当たり前じゃん」


このへんは勇太はブレない。


パン屋の手伝いをするにしても、早朝だけやって純子が顔を出す前に帰ればいいと思っている。


それに臼鳥麗子から聞いた話では、9月には入院中の母の片方が仕事に復帰する予定だという。


商売のことは詳しく分からないが、肉体労働は自分が補えばいいやと、軽く考えてる。



「なんで、そんな風に・・」


「だからルナ優先だもん。純子に関わるのもルナのため。ルナが家族とも仲が良くて笑ってる方が、俺もうれしいもんね」


ルナは、そこまで考えてくれる勇太の顔を見た。


「梓も今朝言ってくれたよ。ルナがOKならパン屋の手伝いは止めないってさ」


「カオルは?」


「そこのパンって、うめえのかって・・」

「ふふ、カオルらしい」


◆◆◆

ルナに純子への連絡を取ってもらった。純子と麗子も交えて、一緒に昼ご飯を食べることになった。


ルナは恐れないことにした。


この2ヶ月間、勇太と一緒にいていいことばかり。いつも予想以上に喜ばせてくれる。


ネットに晒されるのがセットだが・・


迷う必要はなかった。心の中で勇太に謝った。



カフェの商売、そして美女も絡む。今日は梓も追加で参加することになった。


なぜか伊集院君も付いてこようとしたが、先約だらけで断念した。


パラ高では昼休み、冷房を入れた空き教室が幾つか解放されている。女子生徒が3グループ11人いる。


みんなざわついている。スマホで撮影もされている。


勇太、ルナ、梓の校外で目立っていっているグループに、純子と麗子まで加わった。


純子が断罪されたのが2か月前、同時期に勇太が大変身した。


ルナと梓は、それから勇太ばかり見ていた。そのせいか純子や麗子に関する情報にうとかった。


悪役令嬢ものに比べたら、釘を刺された程度。それでも本人はきついが、そこまで噂になっていない。


ちょっとした事情で集まった5人。だけど周りには勇太のハーレムに映っている。


梓、純子、麗子は間違いなく美女。ルナはモブ顔。


だけど、モブ顔ルナは勇太と伊集院光輝君のモテ男2人に公開プロポーズされている。


ネット民からしたらルナが、美女3人を押さえて最もホットなのだ。



お昼ご飯を食べながら、ギクシャクすること20分。純子がルナに話しかけた。


「ルナお姉ちゃん、きちんと話すの久しぶりだね」


「うん、なんかずっと話していない気がする。純子は元気?」

「元気。お姉ちゃんも元気だよね。活躍はネットで見てるよ」


「あ、あれは、あの、ともかく、パン屋頑張って。よければ私も手伝うから」

「だけどお姉ちゃんには迷惑かけてきたのに」


「いいよ。今は勇太がいてくれるし、気にしてないって」


「ルナお姉ちゃん、昔から、最後は許してくれるんだね」

「純子絡みで冤罪かけられたときだけは、まいったけどね」


「あああ、ごめんなさん」

「大丈夫。純子も雰囲気変わったし、麗子さんと頑張ってるんだよね」


「・・うん、麗子には感謝しきれない」


「じゃあ、仲直りしようよ」

「いいの?」

「うん。お母さんとお父さんも心配してるし、たまには早めに帰って安心させてあげてね」


「良かったですねルナさん、純子さん」

「純子、良かったね」


「なんだ、やっぱ姉妹で仲良しなんじゃん」



純子は下を向いた。恐らく涙が出ている。


みんな、純子を囲んで黙っている。


見ている女子達も最近の評判が微妙な純子が、姉のルナと和解したんだと思っている。


暖かなムードになった。




「けど純子・・ひとつだけ言っておくことがあるの」


ルナが口を開いた。真剣だ。


「・・な、なに、お姉ちゃん」


「あんたと麗子さんも勇太の彼女になりたいときは、まず梓に話を通してね」


「え」「は」「へ」

「お姉ちゃん、何の話?」


梓、麗子、勇太は思考が止まった。純子は涙が止まった。


ルナは、少し話してみて、純子とのギスギス感がなくなっているのが分かった。


そうしてくれた勇太に感謝している。


そして頭のスイッチが切り替わると、またも『目指せ勇太の10人目の嫁』が表に出てしまった。


女性の愛が深いほど、嫁を増やそうと女性自身が言い出すことがある、男女比1対12の世界。


これで梓、カオル、純子、麗子、自分。5番目まで嫁順位が下がってくれと思っているルナだった。



勇太は、この極端な部分もルナだけど、なんで俺のハーレム前提なの?と心の中で苦笑した。


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