先生!はなさないで!

羽弦トリス

先生!はなさないで!

愛知県名古屋市の私立高校、桜山高校で世界史を担当している、米異よねい達也45は、毎日のようにケンカの仲裁や校内喫煙を指導をする。

ある日、2年3組の竹中が事件を起こした。

竹中がカツアゲした生徒の親が反社だったのだ。

竹中は米異に、泣きついた。

そして、親と会い話しを付けることにした。

「うちの馬鹿がすいません。夫が単身赴任で海外に出てますので、何とか先生のお力で解決して頂けませんか?これは、気持ちです」


竹中の母親は米異に、現金を渡した。

米異は、

「こんな事されても、私は申し訳ないです」 

と、言いながらスーツの内ポケットに札束を仕舞った。


「先生、太って強面だからサングラス掛ければ、間違いなく反社に見えるよ」

「僕が〜?先生が話しを付けるのか?」

「はい、頼むよ先生!それと、『僕が』と言っちゃダメだよ!相手とは、はなさないで」

「分かった。僕のかわいそう生徒だ。見放すことはしない」


当日

「今回はうちの息子が問題を起こして申し訳ありません」

米異はブランドモノのスーツにレイバンのサングラスを掛けていた。

相手の父親は今にも殴りかかろうとしていた。

すると、米異先生は封筒のお金を父親に渡した。

父親は、

「こういう事してもねぇ」

「うちの父は、米異会よねいかいの、人間です」

と、竹中が言った。

「……米異会?知らねぇな」

「ここは何とか、お父さんこれで何とかなりませんか?」

と、分厚い封筒を前に謝る。

「おいっ、ヒデキ、これで我慢するか?」

封筒の中身は、300万円だった。先日、竹中の母親から受け取った金だ。


向こうの父親も、あまりに米異先生が落ち着いて、きっと組織の上の人間だと勘違いして帰ろうとした。

「じゃ、竹中、僕たちも帰ろうか?」

「せ、……親父、はなさないでよ」


ちょっと振り向いた向こうの父親は怪訝に思ったが、喫茶店代を支払って事は無事に解決した。


帰り道。

「竹中、もうお前は来年受験生だ!」

「うん、オレも先生みたいな、教師になりたいな!」


大団円

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先生!はなさないで! 羽弦トリス @September-0919

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