KAC20245 彼女の秘密

久遠 れんり

有名人の彼女

 彼女は、大学の人気者。


 その上、彼女は美人で有名人。

「彼女だろ」

「ああ、そうだ」

 本人は清楚な感じで、多分意識的にコーディネイトをして、まさにお嬢さんというのにふさわしい。


 だけど、噂がある。

 月に何日か、獲物を漁る。


「それって何で?」

 友人が見せてくれたのは、アングラな調教日記。

 当然目線やぼかしが有り、ぱっと見わからない。


 だけど、意図的かフィルターがズレているところがある。

 あーほくろとか、そうかもね。


 他の男とさせるモノもあり、それが月に数日。


「付き合う相手が糞だと、彼女も不幸だよな」

 友人はそう言うが、本当にそうだろうか?

 無理矢理とは思えない。

 その時の、ビデオ。


 いつも少し薄暗いビデオなのは、ピンホールカメラ?


 そこに映る服。

 かなりカジュアルっぽい。普段と違うな。


 彼女は大学を出ると、駅に向かう。

 コインロッカーで、バッグを出すとトイレに向かう。


 幾人かが、大学から彼女を付けている。


 トイレから出てきた彼女は、ショートカットで前髪が下ろされている。バッグは、さっきとは違うカバーが掛けられていた。

 服装は、膝丈のブラウンでチェックのフレアスカートにデニムのジャケットを合わせていた。


 俺は、追いかける。


 他の奴らは、なぜかまだトイレを見張っている。

 捕まるぞ。そんな余計な心配をしてしまう。


 またロッカーにバッグをしまうと、小さなショルダーバッグを持ち町中へ入って行く。


 居酒屋経由で、パブへ。


 彼女は、誰かを誘う気配もなく、静かに飲んでいる。

 マスターに聞いてみる。

「あの子よく来るの?」

「いや。見ない顔ですが、騒動は困りますよ」

「ああ、大丈夫」


 彼女を、じっと見る。

 目が合ったときに、ふっとそらす。

 それを二度ほどすると、彼女は変な顔をする。


「ごめん。かわいいんで、つい気になっちゃって」

「あっ、ありがとうございます」

「一人? 待ち合わせ」

 そう聞くと、一瞬だけ上から下まで見る。


 昼間の彼女は、幾度となく俺を見て知っているはずだ。

「どうしようかな?」

「おごるよ」

 少しカッコを付けて言ってみる。


 すると、真面目に言ったのだが、どこかツボに入ったようだ。

 クスリと笑い、マスターにことわり移動してきた。


「大学生でしょ。その格好」

「よくわかったね。そう。バイトをして、たまの息抜きさ」

「へーそうなんだ」


 などと軽い会話をして、ダメ元で誘うと、OKされる。


 一夜限りの関係。


 彼女が置いたバッグ。

 多分あれに、カメラが仕掛けられている。


 見られるのがいやで、上着をかぶせる。

 あれ? 予想に反して彼女が反応しない。


 カメラでの撮影は、彼女の意思ではない?


 好き者だと予想したのだが、少し違ったようだ。


 いや好き者だった。

 単純にエッチが好きみたいな?

 でもそうとも違う。甘えんぼ?

 よくわからないが、離れることを嫌い。ずっと甘えてくる。

 背中に残る、みみずばれのような傷。


 うーん。わからない。

 とにかく、朝まで抱き合い。過ごした。


 そうして朝になり、離れると静かに着替える。


「ねえ。奥瀬さん」

 彼女の背中がビクッとする。

「夕月ちゃんだろ。同学年の」

 彼女が、こちらを向き直る。


「黒瀬さん、いつからわかっていたの? それとも最初っから?」

「最初から。君が好きでね。友人に相談をしたんだ」

「私が…… 好き?」

 そう言って、目をぱちくりされる。


「そんな変なことは、言っていないはずだが?」

「ええ。その、ありがとうございます」

 そう言って、なんかもじもじし始めた。


「それでだ。友人に相談をしたら、こんなモノを見せられた。これは君かい?」

 あの調教ページ。


 思った予想と違い、彼女の目が丸くなり、スクロールを始める。

「そんな…… うそ」

 俺のジャケット下からバッグを取り出す。

 中を見て、気が付いたようだ。

 四方向カメラ付き。


 そして彼女は話してくれた。

 高校から付き合っていた彼氏。だが性癖が変で、確かに幾度か彼に言われて他の男に抱かれた。

 その方が、好きになれると。

 だけど彼女は、我慢が出来ず別れた。


 だが、別れた後も、見られていたこと。

 今は、命令ではなく淋しくて、男を捜していたこと。

 最初から、俺のことはわかったし、噂を聞いて付き合いたいと思ったこと。


「噂? どんな」

「黒瀬有希という人がかっこよくて優しいって。その…… 女の子が噂をしていて…… えーと。気に入って見ていたから。その、良いなあって。ちょっとした他人に対する優しさが」

「そりゃどうも」


 そう言ったが、彼女はもじもじする。

「あの、こんな。汚れちゃった私なんですが、付き合ってもらえませんでしょうか?」

「そうだね。元彼を何とかするのと、そのページだな。それが先だ」

 期待した返事ではないので、少しがっかりしたようだ。


 だが、「手伝うから」そう言ったら、彼女は抱きついてきた。


 部屋を出るとき、彼女は言った。

「その…… 全部終わらして、その時は、その、私を

 彼女はうるうるした瞳で、そう言った。

 


 だけど、一連の処理する中で、奴に刺されてしまった。

 むろん、やつは、捕まったし情報関係も余罪として上乗せされた。


 だがしかし…… そんなこともあり、彼女は予想以上にかわいく。甘えんぼだった。


 ケアしている先生に言わせると、元彼の長年に渡るいじめのような性癖がストレスになり、助けてくれた俺に対して依存があるらしい。


「ふーむ。この感じ。気を付けないと。彼女に冷たくしたりすると、刺されますからね。ご注意ください」

「おい先生」

 目をそらし、逃げていく先生。彼女は、地雷女とかメンヘラ女系のジョブまで手に入れたようだ。

「ご注意ください……」

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