【短編】黙って答えてください

本編

　今から私が質問する事に頷くか、首を横に振ってください。

　決して声に出して話さないように。

　それでは行きます。

『あなたは人間ですか？』

　はい、そうですよね。

　次は『あなたは結婚していますか？』

　はい、未婚と。

『あなたは男性ですか？』

　そうですよね。見るからにそうです。

『あなたはペットを飼っていますか？』

　飼っていない……でしょうね。

　いや、何でもないです。次に行きましょう。

『休日は何をしていますか？』

　パチンコ……ふーん。

『ご職業は何をされていますか？』

　無職……ふーん。

『年上の女性が好きですか？』

　違うと。

　では、『年下の女性は好きですか？』

　好きと。

　なるほど、なるほど……では、最後の質問です。

　あなたは『神楽みお』をご存知でしょうか？

　おや？　どうかされましたか？

　知らないだったら首を振っていただかないと。

　それとも何か考えているのですか？

　あぁ、知らないんですね。

　そうですか……では、質問は以上……あ、すみません。

　まだ一問だけ残っていました。

　えっと……『神楽みおさんとあなたは午前四時頃、ラブホテルに入り、行為をした後、多目的トイレに立ち寄り、神楽みおを殺害。

　その後、ガソリンスタンドで灯油を購入後、みおさんにかけてライターで燃やした』……違いますか？

「おい、ちょっと――」

　喋るな。

　ルールを守りなさい。

　コホン、私が今述べた事に間違いがあるか、ないかを聞いているのです。

　いかがです？……そうですか、『知らない』と。

　では、防犯カメラの映像を流します。

　ほら、このトイレから出てきたのは、間違いなくあなたですよね？

　最初は女性と入っていたのに、あなた一人だけが出てきて、少し経ったあと灯油を持って入りました。

　　急いで出たかと思えば、ドアの隙間から煙が出てきて……あとはお分かりですよね？

　あなたが神楽みおを殺した。

　首を振っても無駄ですよ。

　こんなにも動かぬ証拠があるんですから。

　このまま警察に突き出したい所ですが……ただ刑務所に入れられるだけでは、私の気が済まない。

　後ろをご覧ください。

　あら？　質問をしている訳ではございませんよ。

　首を振り続けても何も進展しません……チッ。

　さっさとやれよ、ゴミクズが。

　早く、後ろを向け。

　そうだ。早く。

　そこに灯油があるだろ。

　蓋を開けて、頭からかぶるんだ。

　早くしろ。

　そうだ、そう……うん、それでいい。

　灯油が置いていた場所にライターがあるだろ。

　持て。持つんだ。

「ま、待ってくれ！　あいつが別れ話をしたからカッとなって押し倒して、事故だったんだ……」

　誰が喋っていいと言った？！

　いいから、ライターの火をつけろ。

「や、イヤだ」

　つけろ。

　つけろ、つけろ、つけろぉおおおお！！！

　そうだ。ためらうな。

　うんうん……ハッハ！

　アハハハハハハハハ！！！！

　あー、燃えてる。

　綺麗に燃えているよ、ハッハッハ！

　思い知ったか、クソ野郎。

　妹を殺した罰だ。