悪魔の王子は戦隊レッドを離さない

ムネミツ

悪魔の王子は戦隊レッドを離さない

 「くそっ! デート中に勇子ちゃんと引き離されるとは!」


 新宿で突如発生した。クライム悪魔事件に巻き込まれた進太郎。


 恋人でヒーロー仲間の勇子と、ホワイトデーのデートに来ていた所での災難。


 怒りに我を忘れそうになったが、落ち着きまずは勇子の安否を確かめる。


 左手の甲に金色に輝く山羊の頭の紋章を浮かべて問いかける。


 「勇子ちゃん、無事?」

 「進太郎こそ、私が消えてメーメー泣いてない?」

 「むしろ怒りで暴走しそうだよ」

 「こっちも同じね、変身して犯人をぶっ飛ばすわよ?」


 進太郎の手の甲の魔王印から勇子の声が響く。


 自分と勇子を繋ぐ契約の証、魔王印。


 通信や位置情報にバイタルチェックなど、多数の機能を供えた万能の魔法だ。


 安否確認を終えたら戦闘用意。


 進太郎は拳に怒りを込め悪魔の騎士、デーモンナイトへと変身する。


 客席に自分一人だけのシアター、スクリーンには何も映らない。


 「お一人様も悪くないが、勇子ちゃんがいないだけで減点だよこんな場所!」


 虚空を殴り空間を砕いて脱出するデーモンナイト。


 同じく現実空間に出て来た赤い戦隊スーツの戦士、勇子と再会する。


 出た場所は映画館のホール、スタッフも他の客もまだ閉じ込められたままだ。


 「そっちも無事ね、良かった♪」

 「ああ、さっさと二人で片づけよう♪」

 「敵の場所はわかってるの?」

 「もち、屋上から魔力が出てる」

 「じゃあ、今度はこっちが閉じ込めましょう♪」

 「よし、デーモンガーデン発動♪」


 デーモンナイトが叫ぶと同時に、その全身から闇が溢れる。


 殺風景な岩山に景色が変わると、一人の偉業の怪物が驚いた。


 「げげっ! こいつは結界か? そしてお前は、悪魔狩りの混血王子!」


 断ち切りバサミの頭部に黒タイツを着た人間と言う姿の怪人。


 魔界の犯罪者であるクライム悪魔、タチワールだ。


 「私の方はまだまだ知名度不足ね、悔しい」

 「いや、そこは張り合わないでよ? マカイレッドさん」


 敵を前にして夫婦漫才をする、デーモンナイトとマカイレッド。


 「そ、そこの赤い奴! お前はまさか、赤い悪魔狩りか!」

 「今更? ていうか何なのその安直な二つ名?」


 自分が魔界でそんな通り名があると知り憤慨するレッド。


 「はいはい、それじゃあさっさと倒して人助けしますか?」

 「そうね、さっき見てたアクション映画みたいに暴れるわ♪」

 「ええい、俺様の前でいちゃつくな!」


 タチワールが、巨大な鋏を生み出しデーモンナイト達に投擲して来た。


 「そんなもんで俺達を裂けるか! デーモンサンダー!』


 デーモンナイトが兜の角から電撃を放ち、鋏を打ち落とす。


 「ファイヤーバインド!」


 続いてマカイレッドが、炎の縄を飛ばしてタチワールを絡め取る。


 「ひいっ! 熱い、動けない!」


 炎に身を焼かれ、拘束を解こうともがき地面をのたうち回るタチワール。


 「それじゃあ止めと行こうか♪」

 「ええ、決めるわよ♪」

 「「ダブルデーモンキック!」」


 デーモンナイトとマカイレッドが同時にジャンプ。


 空中から落ちつつ、タチワールへ蹴りを叩きこんだ。


 蹴りを終えた反動で跳躍し、敵に背を向けて残心を取る二人。


 背後で起こる大爆発、悪は滅んだ。


 特殊空間を解いて現実へと戻り、変身を解除した二人。


 「お疲れ様、進太郎♪」

 「勇子ちゃんも♪」


 進太郎と勇子は勝利のハイタッチを行う。


 「ひと悶着あったけど、次の映画行くわよ♪」

 「今度は何見る?」

 「ポップコーンとコーラ買ってから決めるわ♪」

 「いや、ノープランかい!」

 「ほら、引っ張ってあげるから私の手を離さないでよ?」

 「わかってるよ♪」


 戦いを終えて手を取り合い、フードコーナーへ向かう二人であった。


                   悪魔の王子は戦隊レッドを離さない・完

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悪魔の王子は戦隊レッドを離さない ムネミツ @yukinosita

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