第4話 この非リアな僕に祝福を
「いったいどこの野郎がこんなふざけた物を入れあがった!」
投げつけた手紙を力の限り何度も踏みつける。
「ネカマのふりして5時間放置した木村かぁ、それともこのあいだ俺にチンチロに負けた野村か?」
考えてみても身に覚えが多すぎて、いったいどれが恨みを買ったのか全く分からない。
やったことに対してこの煽りならまだ安い物か…。
少し気持ちが落ち着き、とりあえず手紙を机の上に置く。
紙にはきれいな模様がオシャレに並んでいて紙の材質もそれなりに上等だ、そこまでして俺に嫌がらせしたかったのか。
大学に入学して半年ちょっと、初めは心配していた大学生活だが何だかんだ友達もできて、サークルに入ってとても楽しんでいる。
書き途中の小説の自分は今とは正反対の自分のような気がする。
好きなラブコメ作品を書き始めようとして何であんな物語を書いたのか自分でも分からない。
おかげで物語の続きは全く出て来ないし、書いた物語を消すのも何だかんだか嫌でずっと作品の中の時が動いていない。
「これからどう物語を書けばいいんだよ」
空から女の子が降って来るとか、それともなんか大きい陰謀に巻き込まれて、やれやれハーレムになっちゃったぜ感じか?
それともなんか大きい陰謀に巻き込まれて、やれやれハーレムになっちゃったぜ感じか?
いや無理!
もう意識遠のいているのに女の子が降ってきた所でスルーだし、今から死のうとしてるやつがそんな大きい事件にはどうやっても巻き込まれるのは不可能!
「うーん…」
ピンポーン
聞きなれたいつものチャイムが鳴る。
「空いてるよ」
そうだ隣の家に美少女が引っ越して来て、挨拶しに来たことにしよう!
「珍しい今日はゲームしてないのね?」
「脅迫文と今後の小説の展開について考えていてな」
「その2つってどうやっても一緒に考えなくない?」
慣れた手つきで彼女は冷蔵庫にスーパーから買って来た食材を入れていく。
「今日のご飯は?」
「あなたの好きなオムライス」
「今夜はご馳走だな」
「安上がりでいいわね、お酒も買って来てるから後で飲みましょ」
「お、いいね今日は何サワー?」
「レモンとグレープフルーツ、あなたも生ビール飲めるようになりなさいよ」
「舌が子供なんだ、許してくれ」
「私は許してあげるけど社会は許してくれないわよ」
「会社の飲み会とか想像したくないな」
気が知れた仲間とやるから楽しいのであって、会社での強制された飲み会は想像したくない。
「最近はとりあえずビール飲む文化も少なくはなってきているらしいけれど、飲めるようになって損はないわ」
「その通りなんだけどな、正論は聞きたくない」
ささやかな反抗として、とりあえず小説の続きを書き続ける。
一度詰まると乗り越えるまでが大変だが、乗り越えるとスラスラと進む。
憧れの琴音とは小、中、高と同じ学校で過ごし、さらに大学も同じ学校になった。
なったというのはおかしいな、彼女の行く学校のレベルに頑張って毎回追いついて何とかここまで来た。
いや~頑張った。
下心とゆうのは偉大である。
勉強が死ぬほど嫌いで嫌な俺でもおかげで名前を出せば驚かれるくらいの大学に入れた。
おかげでたまにオタク趣味や、アニメのリアタイ視聴が出来なかったのは辛かったが何とか彼女の可愛さにより、MPとHPを回復させバフを掛けることによって勉強の攻撃に耐えることができた。
「私が持ってくる食材以外、全然食材が増えないわね」
「普段はレトルトばっかりだな作るのめんどくさくて」
「全くもー、家事の出来ない男はもてないよ?」
「俺にはもう嫁がいるから問題ない」
「はいはい、画面から出て来ない恥ずかしがり屋さんね」
高校を卒業して関東のそこそこ広い新しめのアパートを借りたのだが、俺が住むと
1週間でゴミだらけになり、趣味のゲームやグッズで溢れてしまった。
たまたま様子を見に来た彼女が見るやいなや悲鳴をあげ、3日に一回くらいで料理や家事の面倒を見てくれるようになった。
来てくれるのは嬉しいが、好きな人にだらしないのを見られるのはやはり恥ずかしい。
「実際どうなの、彼女とか出来そう?」
「難しいな、さっき彼女を作らないと死ぬとかゆう頭のおかしい脅迫文が届いたから破り捨てようとしてた所だ」
「その人相手にホントに頭おかしいわね、家族でも人質にされて出したのかしら?」
「あれ心配とかじゃないの?てか俺をもはやけなしてない?」
「どうせいつも一緒にいる人達のいたずらでしょ」
「たぶんな、しかしここまで手のこんだ事をするとは流石にドン引きだな」
さっきの可愛らしい手紙を彼女に見せる。
「以外といいセンスしてるじゃない」
「これが女の子からで、脅迫文じゃなかったら俺も嬉しかったよ」
「じゃあ、彼女実際に作ればいいじゃん」
「だから作れないから困ってるんだよ」
ため息を吐き、集中も亡くなったのでパソコンを閉じると肘をつきながら彼女がこちらを眺めていた。
意表をつかれ、一瞬どきっとする。
「誰か気になる人はいないの?」
「伊織ちゃんとか結構あなた好きそうだけど」
「そんなことはないさ、あの手の子はみんな男の子にそうなの」
「そうは見えないけど」
「じゃあさ逆にお前はどうなんだよ」
鼓動が烈しく高鳴り、顔が熱くなるのを感じ、必死に悟られないようにする。
「…どうだと思う?」
彼女は真っ直ぐに僕を見つめた。
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