不登校について考える の巻②

◆◆夫の葛藤◆◆


今日も子どもたちが、学校に行かないことを選択する。欠席の選択と、ほぼ同時にYouTubeをつける。


夫は、重々しい空気で「止めてくれ。」と言った。

そして、子どもたちに切羽詰まった様子で語りかける。


「学校が苦手で、行けないことは分かったよ。だけど、時間は確実に過ぎて行ってる。君たちは必ず大人になる。パパとママは、先に死んでしまう。分かっているかい?」


たこはswitchの画面を停止した。ぴこは、YouTubeを区切りの良い所でとめようとしているようだ。テレビ画面と夫を交互に見ている。ちぃは、朝食が足りなかったようで、パンに塗るブルーベリージャムを探していた。


夫は続ける。

「家に居たって、勉強はできるはずだよ。スマイルゼミだって用意してる。パソコンだって家にある。ドリルも学校からもらってるでしょ。自分に必要な知識を、自分で取りに行かなきゃ。自分のペースで良いんだよ。何か、学んでくれ。頼む。」


ちぃが母に話しかける。

「ママ?ブルーベリーないよ?冷蔵庫見えないから、一緒に探して?」


夫からも、深いため息が漏れる。

母の心にも空虚な空間が膨らんで来る。ちぃの反応に対してだけではない。夫の思いが、子どもたちに届いていないのではないか、という悲しさもあった。


そして、一番、母としての自分が、どんどん風化していく虚しさを覚えた。


私は、この子たちに何もしてあげられない。


夫は、出勤した。

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