第1章 不登校児の親の思い

【第1話】 不登校について考える の巻①

◆◆自分の心を整える◆◆


長男たこ・長女ぴこ・次女ちぃは、不登校だ。

不安定登校をしていたが、もう、2週間、誰ひとり、1ミリも学校に行っていない。

立派な不登校だ。


夜は、「明日は行こうかな」とたこは言う。

「明日は心の相談員さん来る日だ!ちぃ、行く!!」とちぃも言う。

しかし、朝にはホットカーペットに張り付いて、惰性的にテレビをつける。

任天堂SWICHの電源を入れてプレイしだす。


母だって、そんな様子を怪訝に思わない訳はなかった。

「昨日の夜の、挑戦する気持ちはどこに消えた?メディアを許可してることが、登校の足を引っ張ってしまっているのか?」

とても葛藤していた。


メディアフリーの提案は母からだった。家で3人の子どもたちをメディア無しで、平穏に過ごさせることは、とてつもなく難しい。

アニメにも、YouTubeにも、ゲームにも、なにか心が動いたり、学べることがあるのではないか、そんな小さな期待もあった。


夫は、はじめから反対した。「メディアには、制限時間を設けるべきだ。」と。

「勉強、運動、社会との交流、今、この時期にやらなければいけないことは沢山ある。その時間を確保するために、メディアは制限して、子どもたちを外に出そう。」


夫の言う事も、母はとても理解できた。しかし、

「どうやって?どのようにして、勉強時間、運動時間、社会との交流を確保するのか?」

その方法を考えた時に、子どもたちを導ける大人は、実質、母しかいなかった。母一人の肩に、平日昼間の3人の子どもたち、全ての責任がのしかかっていた。


3人兄妹はとてもマイペースだ。我も主張も強い。おりこうさんに、いつも抵抗なく親のいう事を聞いてくれる子は、一人もいなかった。

子どもの意にそぐわない事を、親のタイミングでさせようとすれば、母は子どもと闘わなければならない。


今まで、『登校させる』という最低限の目標を達成させるために、行き渋りを2年ほど闘って来た。そして、親子ともに、ストレスの病気になって、今に至っていた。

とても闘う体力も精神力も無い。


しかし、今、母は自分自身に注力することに、目を向けられるようになっていた。子どもを変えようとするより前に、自分を整えよう、と。


自分の為に、家をリラックスできる空間にしよう、と。


子どもが勉強をしていなかろうが、くだらないYouTubeを見ていようが、私には関係ない。声をかけた洗濯干しに、誰ひとり来なくても。部屋の散らかりを誰ひとり片づけなくても。私には関係ないんだ。

私がやりたければ、洗濯を干せばいいし、片づけたいなら片づければいい。やりたくないと思ったら、私もやらない。


私には関係ない。今、この家の中で過ごす母子4人が穏やかなら、私はそれでいい。誰もいがみ合わない。誰も誰かを責めない。それが出来れば、もう、それだけでいい。

とにかく、私自身の心を落ち着けることが先決。そう念頭に置いて日々を過ごせるようになっていた。


舞い上がった海底の砂が、静かに少しづつ、また海底に戻っていって、海の水が澄んでいくように、私は、自分に集中していた。


子どもたちの事と、自分を一旦切り離して。

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