<KAC2024お題作品>私の彼は・・・

口羽龍

私の彼は・・・

 七重(ななえ)はマシューとの同棲生活を楽しんでいた。マシューは数年前から交際していて、ようやく一緒に暮らすようになった。すでに互いの家族も了承していて、結婚も近いだろうと2人とも思っていた。


「ただいまー」


 マシューが仕事から帰ってきた。七重はすでに夕方に帰っていて、晩ごはんを作っている。今日はマシューの大好きなハンバーグだ。愛情を込めて作ろう。


「おかえりー」

「今日はハンバーグか」


 マシューはにおいだけで今日がハンバーグだとわかったようだ。七重は笑みを浮かべた。明日は休みだから、今週の仕事を頑張ったマシューのために奮発してみた。


「うん」


 ハンバーグだとわかって、マシューは喜んだ。


「おいしそうだなー」

「そう? ありがとう」


 マシューはリビングでぐったりした。今週の仕事の疲れが出ているようだ。疲れたけど、ハンバーグを食べて、元気を出してほしいな。


「はぁ、今日も疲れたな」

「そう?」


 七重は心配そうだ。マシューの身に何かがあったら心配だ。これから幸せになろうというのに。


「うん。今日はやらかしちゃってね。色々と大変だったんだよ」

「そう。でも明日は休みだから、ゆっくり休んで、また来週から頑張ってね」


 七重は励まそうとしている。


「ああ。週末は一緒にどこかに行きたいよ」

「本当?」

「うん」


 と、七重は何かに気が付いた。中指にささくれができているのだ。仕事から帰って来た時にはなかったのに。


「あっ!」

「どうしたの?」


 マシューは七重の表情が気になった。指に何かがあったんだろうか?


「ささくれができてるの」

「本当?」

「うん」


 七重はマシューに、ささくれを見せた。確かにそれはささくれだ。


 七重はささくれをむこうとした。ささくれを見たら、むこうとしてしまうのは本能のようだ。


「いたっ・・・」


 だが、七重はむきすぎて、血を出してしまった。どうしよう。


「どうしたの?」


 その声に気が付いて、マシューは七重の元にやって来た。


「むきすぎて血が・・・」

「大丈夫?」


 マシューは心配そうな表情を見せた。大丈夫だろうか?


「何とか」


 そろそろハンバーグができる頃だ。電子レンジで中まで火を通していたが、アラームが鳴った。


「さてと、晩ごはんにしよう」

「うん」


 七重は出来上がったハンバーグを皿に盛った。これで今日の晩ごはんの準備ができた。それを見て、マシューがやって来た。


「いただきまーす」

「いただきまーす」


 2人は晩ごはんを食べ始めた。食卓には、瓶ビールもある。明日は休みだ。ビールを飲んで疲れを取ろう。


「おいしい!」


 マシューは喜んだ。やっぱり七重の作るハンバーグはおいしいな。疲れが一気に吹っ飛ぶよ。


「本当? ありがとう。マシューのために頑張ったのよ」

「ありがとう」


 マシューは以前から考えていた。明日はデートだ。東京ディズニーリゾートに行こう。


「明日のデート、楽しみだね」

「うん」


 食べ終わった七重は、リビングでぐったりしていた。七重も、今週の仕事を終えて、疲れ切っているようだ。お互い疲れているようだ。だけど、明日は休みだ。デートで疲れを取ろう。


 ふと、マシューは七重を見た。すると、七重は寝ている。疲れて、寝てしまったんだろう。


「あれ? 疲れて寝ちゃったのか?」


 と、マシューは七重の傷が気になった。何とかしたいな。だけど、どうしよう。


「あっ、そうだ!」


 マシューは何かに気が付いた。マシューの顔がだんだん変わってき、ドラゴンになった。


「グルルル・・・」


 マシューは七重の傷口をなめた。すると、傷口は何もなかったかのようにきれいになった。それを見て、マシューは元の姿に戻った。


「よし、治った」


 それから数分後、七重は目を覚ました。まだ寝る時間じゃないのに、起きてしまった。


「あれ?」

「ちょっと寝てしまっていたんだ」


 マシューは笑みを浮かべた。マシューは何もなかったかのような表情だ。


「そっか。ごめんごめん」

「いいよ。疲れたんでしょ?」

「うん」


 と、七重は気づいた。ささくれのできた部分が全く痛くない。七重は中指を見た。だが、ささくれなんてなかったかのようにきれいだ。


「あれっ?」

「どうしたの?」

「ささくれが治ってる」


 マシューは喜んだ。自分が治したんだが、喜んでもらえただろうか?


「本当だ。どうしてだろう」

「フフフ・・・」


 と、七重はマシューの背中に羽が見えた。錯覚だろうか? それとも、本物だろうか?


「えっ!?」

「いや、何でもないよ」


 七重は焦っている。マシューは笑みを浮かべている。

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