無題2

@s15097d2k3

第1話

2年前、僕の母の葬式の時からその一部は見えていたけれど僕は見ないふりをしてしまっていた。



「あなたには気遣いってものが足りてないと思うの。なぜだと思う?」

「わからないな。結局のところ自分にしか興味がないからかな」

「そういうところだよ。それって彼女に言って良いこととかわからないかな」

「君と過ごすうちに自分の欠点を改善する、そうすることで君との生活もうまくやれそうな気がするんだよ。」

「それってその中に私はいる?君だけの世界で完結しようと思ってない?」

「他者を介して自分の輪郭を掴もうとしているのかもしれない。結局のところ僕は」


僕の言葉を最後に互いに喋ることなく車は目的地についた


えらく若いのに大変ね______


親戚の言葉はなにも入ってきていなかった。

僕はこの街が嫌いだ。何もなくて人との距離が近くて窮屈で息が詰まりそうになる。


母の死がなければこの街に再び来ることはなかっただろうと思う。


みんなに挨拶する父の丸まった背中や随分と細くなってしまった指


僕はまたこの街に来ることになるだろう。そう考えると次が最後なのだという安堵を感じた


そしてまた自分が冷たい人間なのだと自覚することになりこの街も自分のことも嫌になる


なにがどうしてそんなことになってしまったのか考えたくなる時がある。大人になるのではなく大人の世界に飲み込まれていってしまう。

そしていつしか抜け出せなくなっている。蟻地獄のように


僕は考えることで生活をこなしてきたと思っていたが実際には答えを避けて考えているふりを楽しんでいるんじゃないのか

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