KAC20244 こいつをどうするべきか?

久遠 れんり

彼女は素で人を傷つける

 彼女はバイト先で知りあった。

 店長に言われて、調子よく深夜番まで延長したと思ったら、人に泊めろという。


「中根君。どうせ彼女がいないんでしょ」

「ああ。まあいませんけど」

「じゃあ、良いじゃ無い。泊めて」


 途中でコンビニに寄り、お泊まりセットとか言う物をなぜか買わされる。

 お菓子山盛りにゴム?

 まあいい。


 カウンターの、どこかの国の人はにんまりだ。


「マネーカードで」

 支払うと、彼女は早速肉まんにかじりつく。


 どういう気だろうか?

 さっき買った物が気になる。

 彼女は中村麻衣なかむら まいと言って大学三年。

 俺と違い、土着民。

 家は、駅三つくらい。つまり歩いて帰れる距離。

 夜は物騒だけど、ほとんど話したことの無い、男の部屋へ来るなんてどうなんだ?

 でも、さっきの。

 する気、満々なのか?


 そんな心配は、話の中で理由がわかった。

「結構良いところね」

 彼女は、遠慮など知らないようだ。


 ずかずか入ると、片っ端から色々なところを開ける。

「やめてくれないか?」

「なんで、興味があるのよ」

 イラッとくる。


「あんまり、見られたくないものだってあるんだ」

「なあに? 死体でもあるの」

「そんなものは無いけど」

「じゃあ良いじゃ無い」

 ある程度パタパタして、今度はベッドの下まで覗く。


 こっちからは、スカートの中身が見えるけれど良いのか。


 疲れていたが、風呂を洗い、湯を溜める。

 その間にコンビニ弁当を開き、チューハイを飲み始める。


 貧乏だし、濃い奴。


「何それ?」

「チューハイ」

「へー。飲みたい。分けて」

「グラ……」

 グラスは台所と言おうとしたら、カンでそのまま行きやがった。


「へー、すっきりして美味しい」

「濃いから飲み過ぎるなよ」

「そうなの?」

 そう言いながら、グビグビ行く。


 そして買ってきたお菓子類を開き始める。

「晩飯は買わなかったのか?」

「うん。夜は炭水化物はひかえて、お菓子で済ますの」

「はっ? どういう事?」

 思わず真顔で聞いてしまった。


「いやあねえ。夜に炭水化物は脂肪の元になるのよ」

「菓子は良いのか?」

「ほら薄塩だし、だいじょうぶ」

 ジャガイモの栄養素は何だ?


 気になって調べるとご飯の半分程度。じゃあ良いのか?

 そしたら、チョコとか色々開かれる。

「食べて良いよ」

 見ていたら、欲しがっていると思ったのか進めてくれる。


「ああ、弁当が終わったらな」

「ねえ。もう一本」

「冷蔵庫にある」

「やた」

 動きの速いこと。


 プチッとモニターを付ける。

 配信サービスで見かけていたアニメを流し始める。


「何それ?」

「異世界うどん繁盛記」

「へーそんなのあるんだ」

「そう色々問題が起こるけれど、うどんを打つと解決する。前回は国家間の問題が起こったけれど、山が多い国は薪を供給して、海が多いところは、昆布やいりこと言ってカタクチイワシの煮干しを提供。真ん中の国は小麦という事で、うどん一つで三方良しで決着をした」

「へー」


 そんは感じで、まあ穏やかに進んだが、彼女は酔い。

 饒舌になっていく。

「それでさあ、幼馴染みがいるんだけどさあ、最近別の子のことばかりなのよ。それを聞かされる私の気持ちわかる?」

「まあ、想像は付くけど、君ら付き合ってはいないんだろ」

「そう。はっきりとは、言ってないけど。態度を見てればわかると思ったのに。彼女が出来た。彼女とキスした。彼女とエッチした。そんな報告されても。怒れないし、良かったわねとしか言えないじゃない」

 そう言って、ぐだぐだと言い始める。


 そして、彼との思い出を語り始める。

 小学校の時にキャンプに行って楽しかったとか。

「ちょっとたんま。お風呂行ってくるから」

「うー。さっさと出てきてね」

 そう言ってお菓子をまたかじり始める。


 だけど、予想はつくと思うが、奴は来た。

「ねえねえ。私ってそんなに悪くないよねえ」

「えっちょとま。何してんの?」

 体を洗っていたら、入ってきた。


「見て。答えて」

「うーん。良いんじゃ無い」

「何それ。どう良いか言ってよ」

「いや、丁度くらいだと思うし、ウエストは一応あるし」

「もう何それ。タオル貸して背中を洗ってあげるから」

 そう言って洗って貰い、その後。


「洗って」

 そう言って、いきなり手を広げる。

「正面も?」

「そう」

 その時、かなり無理しているのがわかる。


「何かの罰ゲームとか?」

「違うわよ」

 そう言って赤くなる。


「じゃあ」

「あなたのことが好きなの」

「はっ?」

「あいつのことを忘れようとか思って、周りを見たけど。今まであいつしか見ていなかったから、ろくな男がいないこに気が付いたのよ。まあその中で、ましかなって見ていたら気になって、気が付けば好きになっていたの。それでまあ。あいつのこともあるし、他の女が出てくる前にキープをしようかと思って。今日の計略を練ったのよ」

「ほう。計略ね。でも流石に幼馴染みとの話を延々というのは」

「他に話題が無いから、自己紹介がてら」

 ちょっと考える。

 一応彼女の体を洗いながら。


 つまり何かい? 共通の話題となると全くないから自己紹介だけど、すべてに幼馴染みが関わっているから、先に彼の現状を教えて? と言う事かい。


「ほら背中」

 そう言ってくるりと彼女を回転させる。


 しゃこしゃこ洗っていると、彼女が膝をつく。


「うん、どうした?」

「ちょっとゾクゾクして。その、内股はあまり強くしないで」

「わかった」

 そう言って、結局考えながら足まで洗った。

 流して、先に湯船に入って貰う。

 彼女は浸かって、なんかぶくぶくしている。


「ねえ。私の事どう思う?」

 聞かれたので素直に答える。


「不器用なおバカ?」

「なっ」

「幾ら言っても、夜中に男のところへくるのもダメだし、話題が無いからって他の男のことを愚痴る。元々知り合いならまだしも。こっちだって困るし」

「だってそれは、そう言うことで、今フリーだと言っておかないと」

「そんなもの、事細かに言わなくても、フリーですで良いじゃ無いか」

 そう言うと何か悩み始める。


「いや付き合って貰ってから、あいつの話が聞こえてきたらいやじゃ無い?」

「でも別れているというか、距離を空けているんだろ?」

「空けてない。ご飯を食べに来るし、泊まっても行く」

「おい」

 なんだ、ズキッときたぞ。


 好きって言われたので、意識をしたのか?


 まあその後、せっかくだからすることはし、付き合うことにはしたんだけど、朝から声が聞こえる。

 こっちを見て、真っ赤になりながら声を出さずにおはよーと言う。


 相手は奴だ。

 けさ、講義があるから、起こしてくれと通知が入っていたようだ。

「おい、おかしいぞ。そんな用事なら彼女に頼め」


 そうして、色々グチグチゴタゴタがあったのだが、彼女の気を引くために、奴は仮想彼女を作ったと。


 そして、麻衣を焦らせ、告白させるつもりでいたら、男を作ったと。


 奴らは、お互いにバカだった。

 幼馴染みをこじらせると、素直な告白が出来ないらしい。


 そして、俺の立ち位置が微妙になる。

 だが今、麻衣を奴に渡す気は無い。

 おバカなところが気に入ったからだ。

 多少心がささくれる現状だが、その位は我慢してやろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20244 こいつをどうするべきか? 久遠 れんり @recmiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ