第10話 出会い

いよいよだ。

ダンジョン30層。

並の冒険者なら到達するのが困難な階層に

合計100を超える冒険者が集った。


昨日の会議の末、この100人を超える

冒険者たちがギルド問わずに3つの班に

編成された。


【1班】

餓狼、聖騎士ルンベル、その他


【2班】

ローズ、青焔、黒衣のベルニア、その他


【3班】

グレイス、ハンター、エリシア、俺、その他


やった!

最高の編成だ!!

全然気まずくない!!


「よーし!

皆! これから俺達は誰も踏み入れたこと無い

未開の地へと足を踏み入れる!

誇れ! その輝かしい歴史に俺達の名は

永久に刻まれるんだ!」


おおおおおおおおおおお!!!!!!


グレイスさんの言葉に

ギルド問わずここにいる冒険者たちの

声がダンジョンに響き渡る。


す、すげぇこの化け物みたいな人たちの

トップに立ってる……


相変わらずうちのギルドマスターは凄い。


「行くぞ!!!!

お前らああああ!!!!!」


―――――――――――――――――――――――


31層。


構造的には30層とは変わらないが、

出てくるモンスターが強い。


「グレイスさん!

来ました!」


ホーリーガーディアンズのギルドメンバーが

そう叫ぶと、


「エリシア! 俺に防御力強化の魔法を!」


「ええ!」


【ブラックスパイダー】

星8

25層のダンジョンボスとして出現したとされる

モンスターが普通に31層を徘徊していた。


ブラックスパイダーが酸の含んだ糸を

グレイスさんに巻きつける。


じゅーとグレイスさんから蒸気を上げる!


「グレイスさん!」


「落ち着け! レオ!

俺はこんなんじゃあああ!!!

死なねえええええ!!!」


直後、グレイスさんがその糸を掴み、

繋がったブラックスパイダーごと

ぶんぶんと振り回した。


キイイイイイイ!!!!

とブラックスパイダーが金切り声を上げる。


「ハンター!!!」


ぶんっ!


グレイスさんはブラックスパイダーを

ハンターさんに投げる。


ハンターさんは言われる前に準備ができていた。


「神の雷」


放たれた矢が放電をしながら

ブラックスパイダーを貫く。


瞬間、ブラックスパイダーが吹き飛んだ。


す、凄い……

何度も見てきたけど、やっぱ技術も連携も個々の力もずば抜けてる。


星8クラスのモンスターを

ほぼこの3人で倒してしまった。


「よし……じゃあレオ。他の二班に報告頼む。

討伐モンスターと現在位置な」


「わかりました!」


対して俺は他の2班と連携を取るための

連絡係だ。遠隔で連絡を取る手段がないため

これしかない。


ダンジョンの地図作成を効率よく行うために

3班に分散し、その都度報告し合う。

お互いの位置と接敵した敵の情報を逐一。


それを繰り返しながら、

ゆっくりダンジョンを攻略するのだ。


本来はハンターさんがいつもこの役目を

担ってくれているが、ハンターさんは

印をつけた所にしか

ワープができないため、

今回の31層内ではワープはしにくい。


それなら、まだ未熟なアサシンの俺が

やった方がいいということで今回は連絡係を

担当している。

俺が通る道は他の班がモンスターを討伐した

後の道だから安全だし。

戦闘面ではあまり役に立たないからむしろ

仕事をもらえて嬉しい。


「報告してきました」


「おお、お帰り。どうだった他の班は」


「他もブラックスパイダーと接敵したそうです。

あと、星8クラスのモンスターが何体か

視認したと」


「そうか。まだ星10以上の

モンスターは現れてないか」


星のランク付けは冒険者たちが討伐した

モンスターの情報を元に行う。


人類が最も苦戦したモンスター。

30層のボスである鬼神。

鬼の頭と龍の体。

鬼神の強さを星10としたときの、

他のモンスターの強さを星で表している。


つまり、それより深いこの地では鬼神以上の

星10を超えうるモンスターが現れる

可能性があるのだ。


それから3時間。

俺達は31層の攻略を進めて

休憩を取ることにした。


「レオ。俺達がここで休憩していることを

他の班に報告してくれ」


「了解です」


地図を渡してもらったが、まるで蟻の巣のような

構造がはっきりとしてきた。


「3班のレオです。報告に来ました」


他の班への報告を終えて、

帰ろうとしたそのときだった。


聖騎士ルンベルさんの頭の上に何かが見えた。


「どうしたんだい?」


「い、いえ……」


あれ? 気のせいか?

これって会議室でもあったような。


俺は報告を終えてグレイスさん達の元へと急ぐ。


なんか……ついてきてないか?


俺は足を止めてその視線の先を見た。


目を凝らせ。

集中しろ。


次第にその浮かび上がってくる。


「な!?」


俺はたまらず声を上げてしまった。


その浮かび上がってきたシルエットは妖精だった。


「よ、妖精!?」


【妖精】

小さな体と小さな羽。

このアバロニアに存在した7つの種族の

うちの1つ。

その美しさから大昔に観賞用として人間が乱獲し、

絶滅したと言われている。


「どぅええええええええ!?

君僕が見えるの!?」


驚いた様子で妖精がその姿を現す。


可愛らしい緑髪の女の妖精だった。


「み、見える!! ほ、本物!?」


驚いて腰を抜かしてしまった。


「ぎゃあああ!!! 見つかった!?

どうしよう!? 目がよく合うからまさかと思ってつけてみたけど! やばい! 

ルンベルに他の人には絶対見られるな!

って言われてたのに!

ねぇお願いだよ! 僕のことは内緒にして!?

ね? いいでしょ? おねがーい!」


「え、え!? い、いや別にいいけどさ。

どうして妖精がこんなとこに?」


「なんでって僕がホーリーガーディアンズの

一員だからさ!」


「ええええええ!?」


【フェアリン】

冒険者ランク SS

職業 ヒーラー

種族 妖精

イーター 透明








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