第9話 ギルド会議

このアバロニアという世界には大きく分けて

7つの地名が存在する。


1つ目がアバロニア最大の国、マーブルシティ。


そこから東には隣国の第二の世界都市である

ゲルニアシティが存在する。


3つ目がマーブルシティから南西に位置する

エルフィア。

森林が多く、人が立ち入ることが困難だが、

その森林の中にエルフの住まう集落が

点在している。


4つ目がダンジョンの上層。

ドワーフが文明を築いている地底国家。


5つ目がマーブルシティから南西。

エルフィアの巨大森林を超えた先の荒地。

そこには国を追われた難民、盗賊、

悪に手を染めた冒険者などが群れをなし、

とても国とは呼べない国家が広がっている。

人々はそこを無法大陸と呼ぶ。


6つ目がダンジョンや、モンスターが多くて

未だ開拓されてない土地を総称して

未開の地という地域が存在する。

また、稀少な種族が生息している

地帯もそう呼ぶ。


7つ目が歴史書に記された都市、幻の都。

それがどこに存在するのは不明で多くの

冒険者達が探し求めていたが、

発見されることはなかった。

現在の研究者たちは幻の都は既に滅んだか、

古来の人々が考えた想像上の都市ではないかと

見解を述べている。


この7つの地名にもマーブルシティの

周辺には多くの小国家が隣接している。


マーブルシティ、エルフィア、ゲルニアシティ、

地底国家。隣接した小国。

これらは連合同盟を結成しており、

災害や紛争時の援護や、教育支援、食糧供給、

闇ギルドから被害を受けた場合の救援要請、

互いの不戦条約など平和を目的とした

約束や条約を結んでいる。


そして、その連合同盟を結成し、

運営しているのが、俺が所属している

世界最強のギルド【アブソリュート・ルーラーズ】

らしい。


グレイスさんが半年前に言っていた

「世界を平和にしたい」という思いが

この連合同盟に凝縮されている。


「皆! 待たせたな!」


意気揚々と会議室にグレイスさんが入る。


誇らしい。

このギルドマスターの下で働けることが。

この巨大な背中を見るだけで勇気が出る。

早く俺もこの人の力になりたい。


_______________________


明日に控えた31層以下の合同攻略ミッション。


それに参加するのはホーリーガーディアンズ、

アブソリュート・ルーラーズ、雲隠れの衆。


「ハンターさん。なんで序列4位の

ギルドがいてギルド序列3位のギルドは

呼ばれてないんですか?」


「序列3位のホーク・アイっていうギルドは

毎回こういうのには参加しないんだよ。

あそこのギルドマスターが中々人前に姿を

現さなくてさ。人前に姿を現しても、毎回

フードを被ってるから誰もあのギルドマスターが

どんな容姿なのか知らないんだよ」


「正体不明のギルドマスター。

名はロビン。職業はアーチャーで

SSランクの冒険者らしいですね。

その方がいなければ、ハンターがSSランクに

なれたのに。なんと嘆かわしい」


珍しくベルニアさんが口を開いたと思ったが、

絶対嘆かわしいなんて思ってない口ぶりだった。


「おい、騒がしいぞお前ら」


「はい! すみません」


グレイスさんに叱られて反射的に謝罪する。


「それでグレイス。

このミッションでの班の編成は

これでいいのかい?」


鎧を纏った金髪の男が資料に目を通して話す。


【聖騎士ルンベル】

冒険者ランク SS

職業 魔法使い

種族 ヒューマン

イーター 能力は不明


ローズさんに注意されてから、自分なりに

他のギルドの人物を調べた。


ぱっと見、あの人は剣士に見えるが

魔法を主に使うらしい。

グレイスさんとも昔からの仲だとか。


「ああ、大丈夫だ。

雲隠れの衆は?」


「問題ないが」


【青焔】

冒険者ランク SS

職業 アサシン

種族 不明


不気味な雰囲気を漂わす男がそう答えた。


俺と同じアサシン……

もし俺がSSランクの冒険者になるには

あの人を超えないとだよな。


「ただ……獣臭い獣人と

組まされなきゃならないのは嫌だ」


その青焔の言葉に餓狼さんが迷わず抜刀した。


会議室に鋭い一風が吹く。


その斬撃を青焔が双剣で受け止めた。

その直後、餓狼さんが青焔の元に跳躍する。


カキン!


物凄いスピードでお互いの刃が混じり合った。


「また始まった……」


グレイスさんが眉を歪めながらそう呟いた。


「おい! やめろ! 餓狼!!」


グレイスさんの言葉に餓狼さんの

追撃がピタリと制止した。 


「冗談だよ〜気を悪くしたのなら謝る。

アサシンジョークさ」


なんだよアサシンジョークって。


「次その臭い口を開いたら殺すぞ」


そう言い残して餓狼さんは刀身を収める。


「あの二人っていつも会うと喧嘩するんだよ」


ハンターさんがこそこそと教えてくれた。


「相性が悪いのかな。

まさかに、犬猿の仲ってやつ」


「なるほど……」


仲が悪い……?

なんだろう。

その言葉は相応しくないような。

なんだ、この違和感。

気のせいか?


にしてもやばかったな。

二人の剣さばきが見えなかった。

これがSSランク同士の戦いなのか。


「あールンベル。やっぱ班編成は別にしよう。

餓狼と青焔は別の班で」


グレイスさんがため息交じりに言うと、

ルンベルさんはその苦労を悟ったかのように


「わかった」


と苦笑しながら答えた。


そんな様子を眺めているときだった。


誰かに見られる気がした。


はっとその方角を見る。


誰もいない。


いや、何かが………


やっぱいないか。


何だったんだ?








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