第3話:好きになれるよう努力する。

俺はビールをぐびぐび飲んでるピンクを見て思わず言っちゃいけない

ことを口走った。


「ピンクが飯も食えるってことは・・・食費代がひとり分かかるんだよな」

「ガイノイドだったら、そんな心配いらなかったのにさ・・・」


そしたらピンクは「なによ」みたいな顔をして言った。


「琢磨・・・セコい・・・めっちゃセコいから」

「ご飯をしこたま食べる女で悪かったわね、おしっこもウンチもするよ」

「私がいたら公共料金上がるよね」


「あ・・・」

「いやいや・・・本気でそんなこと思ってる訳じゃないから」


「思ってるから、クチに出るんだよ」

「じゃ〜さ、琢磨はなんで私を琢磨んちに引き取ってきたの?」


「そりゃ、彼女が欲しかったからな」


「ロボットとかガイノイドなら、そうインプットすればいいかもしれないけど」

「バイオロイドはちゃんと感情があるんだから、すぐに彼女になれって

言われても無理だよ」

「その人のこと本気で好きにならないと無理」


「そんな夢も希望もないこと言うなよ」

「じゃ〜どうすんだよ、ピンクはどうしたいんだよ」

「俺と一緒にいるのが嫌なら出て行くのか?」


「って言ったけどぉ」

「私、行くとこないからね・・・琢磨んちにお世話になる」

「ここで琢磨と一緒に暮らしてたらもしかしたら琢磨のことが好きになるかも・・・少なくとも、まだ夢も希望もあるよ」


「そうか・・・よかった」

「なんかいまいち納得いかないよな・・・恋人同士でもいないのに同じ部屋に

住んで・・・これって同棲じゃなくて同居って言うんだよ」


俺のところにいる理由は他に行くところがないからだって・・・。


まあ、高い金払ったんだから、出てってもらっても困るけどな。


俺の目論見は、思ったとうりにはならないみたいだな。

本当はガイノイドを手に入れて俺の彼女になってもらって楽しい朝を迎えて

るんるんで彼女を横に置いて漫画を描いて、るんるんで夜をしめやかに迎える。

それだったんだけどな・・・。


「それじゃ〜さ・・・ピンクは料理とかできたりするのか?」


「うん、できるよ、前のオーナーのところでハウスメイドしてたから」


「ハウスメイド・・・へ〜そうなんだ」

「じゃ〜なんであんなジャンクの店にいたんだ?」


「前のオーナーが亡くなっちゃったからだよ」

「オーナーの息子がセコいやつで、オーナーの財産相続したら私もついて

来るからって・・・でも私はいらないからって売っぱらわれちゃったみたい」


「ね、散々つくしても人ってそんなもんだよね」

「世の中ってそんなもん」

「人間不信になっちゃうよ」


「そうだったんだ・・・可哀想に・・・」


それで一気に俺の感情がピンクに動いた。


「ずっと俺のところにいていいからな・・・飯も食いたいだけ食っていいから」


「うん・・・ありがとう」

「私も考えてみるね」


「考えるってなにを?」


「琢磨のこと好きになれるように・・・」

「嫌いじゃないんだよ、私を見つけてくれた人だからどっちかって言うと

好きだけど・・・もっと好きになれるよう努力する」


「そう言うのって努力するもんか?」


「この人のこと愛してる〜って毎日、自分に暗示かけてたら、いけんじゃないの?」


「なわけないだろ」

「そう言うのはなにかのきかっけで好きになったりするもんだよ」

「ピンクは誰かを好きになったことないだろ?」


「あるよ・・・あるから思うの」

「幸せや愛を求めても世の中や男に裏切られることのほうが多いじゃん」

「傷ついたり悲しい思いをするくらいなら誰とも恋愛しないほうがいいって

思わない?」


「悲しいな・・・もう悟ったようなこと言ってるじゃん」

「夢のないこと言うなよ・・・」

「今は無理かもしれないけど、できればいつか俺に心を開いてくれたら

ピンクのためにうなると思うけどな」

「ピンクの人生だから無理に強制も強要もしないけどさ・・・」


人の過去なんて聞いてみないと分からない。

生きてきた過去に誇りを持てる人ってどのくらいいるんだろう?

普通は挫折したり汚点を残した人のほうが多いだろう?

ちょっと考えさせられたかな。


っていつまでもナーバスになってる場合じゃなかったわ。

俺も頑張って売れる漫画家にならないとな。

今度の漫画コンテストに応募でもしてみるかな。

応募しなきゃ前に進めないもんな。


そう思えたのもピンクのおかげか・・・そういう意味じゃピンクを買って

正解だったかな・・・まあ今の所マイナスにはなってないし。

ピンクの食事代のことをつい口走ったは俺のミスだけどな。


つづく。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る