第9話 二人の気持ち。

 「最近は晴れたり雨だったり嫌な天気だなぁ。」いつも慰めてくれる上司の人との休憩中にそんな話になった。それに会社のあちらこちらでも同じ様な会話が聞こえてくる。


 「香苗さんは昨日、一昨日と一緒で疲れ切ってるなぁ。」そうボソッと呟いた。


 「なんだ?亮太、岩田さんのこと気になるのか?まさかぁ〜?(笑)」


 「そっ、そんなことはないですよー!けどまぁ。最近疲れてるなぁって思って。」


 「よく見てるなぁ。好きなんか??最近ずーっと見てるもんね。知ってるよ(笑)」


 上司の人が僕のことを揶揄からかってってくる。そんなに分かりやすいんだろうか。凄く恥ずかしい……

 「本当ですか…?恥ずかしいですね。来週、ご飯に誘ったので少し聞いてみようと思います。」今、凄く顔が赤いのだろうなぁ。


 2人だけの秘密にしていたことが会話の流れで秘密でもなんでもなくなる。


 「話変わりますけど先輩はずっとこと会社で働きますか?子供の頃の夢とかなんだったんですか???」恥ずかしすぎて話を無理矢理にでも変える。


 「うーん。そうだなぁ。ずーっと働くのかな?分かんないや!でももう10年近く働いているからね。居るんじゃない?今また0からってなれば気持ちが乗らないしさ。(笑)小さい頃の夢は消防士かな。友達の家燃えちゃったことあって俺ん家も近くでその友達が泣いてる所慰めてた消防の人がかっこよかったんだよね。亮太の夢とかは何だったの?」


 「そうなんですね。そんな光景見たら消防士になりたくなりますね!僕の夢は…飛行機のパイロットでしたかね。先輩はどのエピソードって無いですけど世界を飛び回るってかっこいいなぁって思いまして!今でも海外で仕事したいなぁって思う時ありますよ?(笑)」こんな話、中学か高校の時にしたのが最後だ。友達と夢を語り合っていつかなってやろうな!って約束したっけ。


 「かっこいいじゃん!後悔しない様に“夢”追いかけなよ!別に辞めろって言ってるわけじゃ無いからな!(笑)」


 そんな先輩の言葉には応援してくれる気持ちと自分の好きなことしな!と言う無関心の意見も混じっているのだろう。そろそろ休憩が終わる。デスクに戻ろう。僕は今でも海外で仕事したいのかな。そう思いながら自分のデスクに戻った。


 次の休憩で僕は【日本人 海外 仕事】で検索をかけていた。ヒットしたのは“日本語講師”、“通訳”、“日本食職人”等々。意外と多いことに驚いた。新しい人と関わるのが好きな僕には日本語講師がやりたいと強く思ってしまった。その後、色々と調べ物を仕事中にしていて僕は自分の仕事をほんの少しだけ後回しにしてしまった…


 「日本語講師?何?亮太くんなりたいの?」耳をみせる様に髪をかき上げながら一人の女性が僕のパソコンを覗いてきた…








 「!?」





 驚いた。そんなこと言ってきたのがまさかの香苗さんだったからだ!!


 「ふぅ〜ん。良いじゃん。日本語講師。アジア圏とか仕事あるんじゃ無い?ヨーロッパも少しはあるのかな。海外で仕事ってかっこいいよね。日本人が日本という島から出て外の世界で頑張ろうって言う姿勢。私、尊敬しちゃうな。じゃあ、私は先に上がるからね。来週、楽しみにしてるね?お疲れ様〜。」


 「………」


 正直、怒られると思った。そしたらまさかの共感してくれた。嬉しい。「香苗さんも何か別の事したいって思ってるのかな。そんな時、前に見た風俗サイトの女の子が頭に浮かぶ…まさか…ね。」

 そうだ。来週は香苗さんとの食事デートだ。どこに行こう?自分の夢とか語ってみようかな?そしてその勢いのまま告白しちゃったりして????

 また1人で妄想している…さてと。残りの仕事片付けて家帰って良いご飯屋さんでも調べよっと!!!








 「店長。来週はお休みで再来週からの出勤で良いですか???」


 「いいぞー?慣れない内に一気に入っても生活リズム崩れて体壊したりするからな!大丈夫よ〜」


 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」



 「お疲れ様でした。それではまた再来週からよろしくお願いします。」

 亮太くんとのご飯。少し楽しみだな。調べてくるのかな?会社の近くかな…亮太くんのことを考えながら勝手に妄想している私がいた。


 「どんなこと話すのかな。いつも挨拶程度だったしな……」会社上がる前のちょっとした会話を私は思い出していた。





 日本語講師…海外…かぁ。仕事辞めて日本からも居なくなっちゃうのかな。良い子なのにな…って考えすぎかな。


 寝ようかな。そうして電気を消した。

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