第12話 竜が飛びまわる

やったぜ。






空を飛びながら、俺は幸せな気持ちに包まれていた。

この異世界に来てから、今が最も気分が良いと言ってもいい。

あまりに嬉しくて、外で踊りだしたい気分です!


しかし、俺が覚えていた唯一の攻撃系以外の魔法……やっぱり回復魔法だったか。

【朗報】俺氏、人間の役に立つ魔法あった

いや、マジで良かったぁ~~~~


……と、俺は幸福感に包まれながらも、同時に安堵もしていた。

他がことごとく何かを破壊することしかできない能力のラインナップの数々だったので、これもやっぱり攻撃魔法じゃあないかとやっぱり本気で心配したからな。これで赤ん坊が爆発四散なんぞしてたら心折れてたかもしれん。ウンコがところ狭しと並んでいる中で、唯一カレーを見つけることができたことのような驚愕めいた喜びを感じる。


これならば、うまくいけば人間と関わることももっと容易になるだろう……回復魔法とか何をどう考えても有用だからな。戦闘とかなくても、事故とか事件とかで負傷する人はいくらでもいるわけだし。


とはいえ……最初の1回目の出会いがマジで最悪だからなあ。

出会頭初手宣戦布告こんにちは、死ね!してるのと大して変わらんわけだし……今回はうまくいったからって、次もそうなるとは限らないし、あまり調子にのって顔を出すのは考えものだ。

あの開拓村だって、剣とか槍とか持ってる人いたしな……もし襲い掛かられてたら逃げるしかなかっただろうし。

ちょっとずつ、ちょっとずつ……時期とかタイミングとかを見ながら、地道にやっていくしかなさそうだ……ゲームで言う辻ヒールみたいな。でも、そう考えると都市の病院とかに突撃して大規模範囲にヒールぶっぱとかはやめといたほうがいいか……一気に治療できるけど絶対に攻撃される。

時間は相当かかるだろうけれど……ま、ガチで攻撃魔法しかないより大分マシだし、仕方ないね。



さて、次はどうするか……。



……ああ、そうだ、そういえば前に王城みたいなものを見つけたけれど、他にもあるんだろうかな?

壊しちゃった都市の近辺は避けておこう、って思ったけれど……開拓村との出会いはうまくいった、と思うし、今後もちょっとづつ関係を深めていきたいし。


それなら、やっぱりこの大陸での地位を確立していくのが得策だろう。

ただ、そうするとこの大陸の地理とか、都市の場所とかを把握しておかないといけなしな……海の向こうに行くのは後にして、ぐるっとこの大陸を回ってみるか。

もっと高度を上げて、雲に隠れるようにして……余程のことがない限りは、さっきみたいに降りていくってのは避ければ、地理関係の把握くらいならこの位置からの観察で十分だろう。

よし!じゃあ出発するか。




えーと……最初に壊しちゃった都市を中心に考えて……。


北東にあるのが、お城と、その先に港町があったところだな。

百合と剣のエンブレムがあったところだ。



よし、じゃあ次は北西に向かっていって行こう。



そう思って俺は翼を動かし、空を飛ぶ。


空は青く青く澄み渡っていて。

あまりの青さに目が痛くなるほどだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る