自分の怪我の話ってなんでしたくなるんだろうね?

小春凪なな

ささくれから始まった





「最近ささくれが酷くってさ~。いつまでも痛いんだよね」


 話ながら指先を触っている女性。


「あー!ささくれって気になって触っていると酷くなって治りが遅くなるよねー」


 向かいに座る女性が同意して頷き、紅茶を飲んだ。


「そうそう!あと、ささくれって絆創膏を貼るか迷う時あるよねー」


 フライドポテトを飲み込んで会話に入った女性。


「「あー。確かに」」


 ファミレスの店内で3人の女性が話をしていた。


「ささくれって絆創膏を貼るかどうか迷う時ない?」

「ある。微妙な時あるよねー」

「パックリいっちゃった方が大手を振って絆創膏を使えるのに」


 ささくれを気にしている女性の言葉に眉を潜める2人。


「いや、パックリはイヤ」

「そうだよ。普通に怪我するのも嫌だよー。この前買ったハサミの刃を触って指切っちゃった時も慌てたし」


 向かいに座る女性の怪我の話に、2人は場面を想像して嫌そうな表情をする。


「でもそれって、刃を触らなければ良かっただけじゃない?」


 カフェオレを飲んで落ち着くと、そもそもの原因に気が付いた。


「それは、ほら、『よく切れそうだな』って、ちょっと触ってみただけで、まさか本当に切れるとは思わなかったんだよ」

「それ、ハサミの広告とかにありそう」


 抗議の声は、フライドポテトを口に運びつづけている女性の一言で広告の一文と化した。


「…でも痛かったは痛かったんだよ?」

「自分からいかなきゃその痛い思いもしなかったんでしょ」

「うんうん。私なんて小学生の時に、棚に置いてあった画ビョウに気が付かずに手を置いちゃって怪我したことあるよ。不意討ちでスゴいビックリしたなぁ」


 ここで、新たな話がフライドポテトの女性からされた。


「うはぁ、それは痛そう」

「嫌だねー」


 方や紅茶を飲んで、方やフライドポテトを食べて嫌がる。


「…なんで口々に怪我の話をしてるんだろう?」

「自慢話的な感じで話したくなっちゃうんじゃない?」

「それはちょっとある」


 女子会はダラダラと続く。

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自分の怪我の話ってなんでしたくなるんだろうね? 小春凪なな @koharunagi72

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