順番が七転八倒

 そのまま話を聞いてみると、どうやら遊野先生と陽子ちゃんはカウンセリングみたいな形になったらしい。正式なものかどうかはわからないけど、遊野先生は話しやすい先生であることは間違いない。


 ……間違いないんだけど、どうもわざわざ騒動を起こしてるんじゃないか? っていう疑惑があるのよね。

 ちなみに声は桑島法子さんに似ている。


 ええ、声が死亡フラグと呼ばれるほど担当キャラが命を落とすことが本当に多い声優さん。私はロボットアニメ見ないんだけど兼ね役二人が死んでしまって、その続編でもやっぱり死んじゃう。


 あと回想でもよく死んでる気がする。

 「鬼滅の刃」とか「RELEASE THE SPYCE」とか。


 もっとも江上が「保険医なんだから死なないと思う」とかいう謎な理由で賛成してくれるように、うちの学校の桑島ボイスの持ち主は、殺したって死にそうにない生命力の持ち主って感じではある。


 で、その溢れんばかりの生命力で生徒を焚きつけてしまう。

 そういう印象が私にはあるわけだけど、死んじゃうよりはその方が良いのは間違いないだろう。


 ……判断基準がおかしいという異論は受け付ける。


 で、生徒会に行けだの、古尾に尋ねろだの、よくわからないけど神幸先生に相談しろだの、陽子ちゃんの不可解な行動を操っていたのは遊野先生であるらしいことが判明した。


 ええ。

 わかってます。


 陽子ちゃんの話す順番がとにかくおかしい。

 それがようやくの事で判明したわけだけど、それが整理されると後に残ったのは――


「で、次に俺たちに相談しろって言われたって事?」


 ――そういう事になるよね。

 江上の推測は「当たり」に違いない。


 ただ陽子ちゃんは少しだけ、それに修正を加える。


「江上君たちじゃなくて薫ちゃんに、だけど相談にに乗ってくれるなら、それはとっても助かるよ!」


 そう言って、陽子ちゃんはニコパっと満開の笑みを浮かべる。

 ……まったくこれだから、陽子ちゃんには敵わない。


 陽子ちゃんの顔の広さの最大の理由は、この笑顔にあるのかもしれない。

 さらに我々オタクにとっては、その声で威力は倍増。何という健気さだろう、思ってしまう。


 ……だからこそ負けヒロイン役を任されてしまうのかもしれないかもしれないけれど。


 それはともかく、そういえば遊野先生は私を名指ししてたんだった。

 という事は――私に恩を返せって事なんだろう。


 それはつまり親身になって、陽子ちゃんの相談に乗れって結論ことになるわけだ。

 それについては言われるまでもないし、現にこうして陽子ちゃんの七転八倒する説明を聞き続けたことでわかってくれると思う。


 ただそれでも……一介のアニメファンオタクに何ができるというのだろう?

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