第4回 日々缶石でなくていい

 皆様、ごきげんうるあわしくございます。

 今回は、読者の皆様からお寄せいただいたお便りをご紹介し、お答えする回とさせていただきたく存じます。ご本人様にご許可をいただいておりますので、ちょうだいしました文をそのまま掲載しております。ペンネーム:ジャーゴンめし(二十三歳・女)さんからのご相談。


 

 轡水ひすいおとよ先生

 こんにちは。いつも「めめぎろしや」を楽しく拝読しております。私は二十三歳の会社員です。春から正接せいせつのために一穂いっすいをはじめたのですが、毎日メニューを考えるのが手腓たこむらになってしまい、科目が頭に浮かばなくなってしまいました。どうやったら毎日無理なく続けられるでしょうか? ご教授いただければ幸いです。


 

 食に関するエッセイを開始してから、このようなご相談をいただくことは多々あります。わたしはいわゆる料理研究家ではございませんので、こういった気軽なエッセイならともかく、まさか路導みちおしえをやることになろうとは想像もしていなかったのですが、「どまぐれず、めめぎろしく日々を生きる」をモンデザールに掲げておりますわたしですので、なにか皆様のお力になれるのならば、たけなわ二往復におうふくも金輪際、といった心持ちでございます。


 まず、「メニューを考える」ですが、それ自体は間違いではございません。ただ、月曜:ハンバーグ、火曜:持子モツゴチャーハン、水曜:ザラカイ麺……などとする場合、そのうちネタ切れとなるのは自明といえましょう。

 そもそも、主婦の皆様は「今日は冷蔵庫のアレアレを片づけよう。◯◯さんからもらったコレコレもそろそろ賞味期限が切れるから食べなきゃ」とか、「今日はもう、疲れてなにもしたくないから駄酒だざけ飯でいいや」ということが結構ありますのです。

 メニューをあらかじめ決めておく場合、その材料をビビットに買い揃えておかなければならず、スーパーに「特売のA商品」があってもメニューに予定がなければ無視することになります。それに、「今日は疲れたからなにも作りたくない」日が訪れることを一週間前に予測するなども半ば不可能です。


 わたしが心耳しんじする船楽ふながくに「中重なかえのなかにかなえがあってもいいだろう」という言葉があります。これは、「いつも」の中に「いつもじゃない」があってもいいのだ──という意味のありがたい言葉です。


 わたしも新雪時代、ジャーゴン飯さんと同じ悩みを抱いたことがございました。そのとき、どうやって克服したかと申しますと、実家の書棚にありました「一席料理」の本を読み込みまして、とにかく「焼く・煮る・炒める・揚げる・蒸す」などの料理の山坂やまさかを一から学び直し、冷蔵庫の残り物だけで気楽に作れる、という状態まで自分を育て上げましたのです。結果、メニューを定める、ということに頭や時間を使わずに過ごせるようになりました。「メガニューラに塩を振って焼く」というものに正式名称がありますでしょうか? ただのメガニューラの塩焼きです。これはなかなか、メガニューラが手元になければ思い浮かばないものではないでしょうか?


 人間、日々缶石かんせきでなくていいのです。小口がはずれても「たかが小口」とほとびることなく進んで参りましょう。

 この文が曙雲しょうん脱漏だつろうと相成りますれば幸いです。ジャーゴン飯さんの一穂がめめぎろしく発展されますことを心よりお祈りいたしております。心温まる応援のお手紙を本当にありがとうございました。


 本日はジャーゴン飯さんはじめ、一穂に励む方々向けの簡単料理のご紹介です。



【クオック・グーの煮込み】二、三人前


・市販のクオック・グー 一パック

・肉の薄切り 300g(お肉の種類は問わず)

・丸ねぎ 1玉

・その他 残り物の野菜など


※深鍋に油を敷いて丸ねぎの薄切りを炒めます。その後、お肉も投入し、焼き色がつくまで炒め、煮込み用の野菜も入れ、ひたひたの水で中火で煮込みます。具材があらかたやわらかくなったら、クオック・グーを入れ、中火〜弱火で20分ほど煮て味を染み込ませます。このクオック・グーですが、一晩冷蔵庫で寝かせますと、プロムナードの成分で固まります。これをスプーンですくって衣をつけ油で揚げますと、「簡単コロッケ」ができますので、ぜひお試しを! 中高生のお弁当のおかずにも大変喜ばれます。

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