箱入り娘猫ミームは突然に

沙月Q

猫の気持ち 人の気持ち

 友達から聞いた最近の猫ミーム。


 箱入り娘猫がいきなり人間になる……?

 あるある……って、そんなことあるわけないじゃない。


 ……と、思ってたらあった。


 うちの箱入り娘猫ユカが、いきなり人間になったのだ。


「リンちゃん、おはよー!」

 猫耳はそのままで明るくあいさつするユカ。

「いきなり話せるようになったのね」

 いつも何を考えてるんだか、気持ちもわからないような箱入り娘猫だったのに。

「さ、朝ごはんにしよう」

「タイミング、いいじゃない。ちょうど食べたいと思ったところよ」

 食事の時間なんか、おかまいなしだったユカが私の分をしっかり用意してくれる。

「ごちそうさま」

 食器を下げようとした私に先んじて、ユカはさっととりあげてくれた。

「気がきくじゃん」

 

「お掃除しますよー」

 これまた気のきくところを見せてくれるユカ。

 私はおとなしく部屋のすみに行って、彼女がテキパキと部屋をきれいにする様子をながめた。

 うんうん、これならルームメイトとしてかなり頼りになる。


 ユカの便利さはこれにとどまらなかった。

 パソコンに向かって仕事しようとした私の席を、彼女は有無を言わさず先取りした。

「はいはい、お仕事しますよー」

「え? そんなこと出来るの?」

 見れば、私以上にテキパキと仕事をこなしてみせる。

 大したもんだ……とは思うけど、こんなにめんどうかけていいんだろうか?


 ま、いいか。

 おかげでこっちはひねもすゴロゴロしていられるというものだし……


 昼寝から目覚めると、ユカの友達が遊びに来ていた。

 私にはわからない言葉で、お話ししてる。


 楽しそうなので、混ぜてもらえないものかと二人の方に近づいてみる。

「あ、お目覚めですかー」

 ユカは私の肩に手を伸ばしてマッサージを始めた。

 肩から首にかけてのほぐし方が気持ちいい……

 そのまま私は気持ちよく、再び眠りに落ちていった。

「ああ、ずっとこうしていてほしいよ……」


 ………


「気持ちよさそうに鳴いてるね」


「そうなの。リンちゃん、前はろくに返事してくれなかったんだけど、最近気持ちがわかるようになったみたい。心が通じてるっぽいの」


「猫耳つけて努力した甲斐があったね。写真も撮ってるの?」


「撮ってる撮ってる。これこれ。面白いんだよ。食事が終わるとボウルを押して、片付けようとするの。それから部屋の掃除してる間、すみっこでじーっと監視してるとこ。よしよしみたいな顔してるでしょ!」


「このパソコンの前に座ってるとこ、ホントに仕事始めそうな雰囲気だね。もしかしてリンちゃん自分は人間だと思ってるんじゃない?」


「じゃあ、あたしの方が猫? おっかしー! でもなんの見返りもないのに食事出したり面倒見てるんだから、向こうの方が立場上だよね」


「それにおっきくなったよねー。一人と一匹でもこの部屋手狭じゃない?」


「そーなの。リンちゃんをのびのびさせてあげるためにも、もう少し広い部屋に引っ越そうと思っててさ。ここ、ホントに箱みたくちっちゃい部屋だから。二人で箱入り娘卒業よ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

箱入り娘猫ミームは突然に 沙月Q @Satsuki_Q

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ