【KAC20243】落しもの
風雅ありす
落としもの
冷たい風がふく、まだ寒い日のこと。
僕が道を歩いていたら、箱が落ちているのを見つけた。
手のひらに乗せるとすっぽりおさまるくらいの小さな箱だ。
桜色のきれいな色で、赤いツルツルしたリボンが
これは、きっと
それだけこの箱は、とてもピカピカで、きらきらと
だから僕は、それを交番へ
きっと、これを
交番に届けたら、お
「ありがとう。ちょうど良かった。今、箱を落としたという人が来ているんだ」
その人は、赤い服を着て、赤いとんがり
おじいさんは、僕の持って来た箱を見て言った。
「いや、これは、わしが落とした箱じゃあない。わしが落としたのは、もっと大きい箱じゃ」
すると今度は、男の人が
「恋人にプロポーズするために買った
そこで僕が、持っていた箱を見せると、その男の人は悲しそうに首を横に振った。
「ちがう、これは僕が落とした箱じゃあない。僕が落としたのは、バッファローのマークがついている」
それじゃあ、この小さな桜色の箱は、一体誰の落としものなんだろう。
その時、僕たちの耳に小さな声が聞こえてきた。
「ここから出して」
声は、箱の中から聞こえた。
僕たちは、顔を見合わせて、どうしようかと迷った。
でも、
桜色の箱の
地面には、色とりどりの花が咲き、
僕たちは、いつの間にか、空気が暖かくなっていることに気付いた。
春がきたのだ。
この箱は、春の落としものだったのだ。
【KAC20243】落しもの 風雅ありす @N-caerulea
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