第4話 全ての真相が明かされる

 美咲の告白は止まることを知らなかった。


「父を殺したのは私よ。1年前、翔太君の調査で全てを思い出したの。45年前に祖父を殺した犯人が、私の父親だって知ってしまったから…」


 言葉を振り絞るように、美咲は事の顛末を話した。幼い日の記憶を封印していた美咲だったが、真実を知った怒りから父親を手にかけたのだ。


「叔父さんも父の犯行を知っていた。だから私は…」


 ナイフから滴る血が、真っ赤な告白を物語っていた。


「美咲…」


 健太は言葉を失った。疑念は確信に変わり、全てが繋がった瞬間だった。


 後日、警察の調べにより翔太の行方が判明する。美咲に脅されて姿を消していたのだ。日記の続きも発見され、そこには美咲の家族の秘密を知った翔太の葛藤が綴られていた。


「もし真相を暴けば、美咲の人生は狂ってしまう。けれど、隠し通すわけにもいかない。僕は、何をすべきなんだ…」


 駆けつけた健太を見て、翔太は安堵の表情を浮かべた。


「健太、待っていたよ。結局、俺は何もできなかった。真実に向き合えなかったんだ」


 翔太は拳を握りしめ、目に涙を浮かべる。


「俺も同じだ。親友を信じることができなかった」


 2人は無言で握手を交わした。


 美咲の裁判の日、健太は傍聴席で固唾を飲んだ。情状酌量の余地はないと判断された美咲に、懲役15年の判決が下る。


 収監される直前、美咲は振り返って健太を見つめた。


「私は償わなきゃいけない。翔太君を、そして健太君も巻き込んでしまったから…」


 その言葉に翔太は首を振った。


「俺は君を待ってる。15年後、君が出所する日を」


 力強く言い放つと、美咲の瞳に光が宿った。


 やがて季節は巡り、1年が過ぎようとしていた。冬の街に初雪が舞う中、健太と翔太は美咲との面会に向かう。


「この1年、俺は考え続けてきた。真実と向き合うことの意味を」


 翔太が切り出すと、健太は微笑んだ。


「真実は重い。だけど、それでも前を向いて歩いていかなきゃならない。人生は、まだやるべきことがあるんだ」


 2人の背中に差す夕日が、雪に反射して煌めいていた。遠く、冬の空が晴れ渡っている。


 「美咲、待っていてくれ。俺が君を迎えに行くから」


 翔太は空に向かって誓った。辛い過去も、複雑な真実も、全て抱きしめて生きていく覚悟を。


 健太は、翔太から箱を受け取り、秘密は解き明かして、2人の人生を大きく変えたことをこれからも背負い続けることを決意した。


 それが、親友・翔太を想う彼なりの誠意だった。


(完)

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箱に秘められた真実【KAC20243】 藤澤勇樹 @yuki_fujisawa

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