第2話 腐り煮詰めた黒いモノ

〜車内〜


『にしても真句、お前いつの間に車買ったんだよ』


『いや、この車は先輩から貰った車なんだ、それに今じゃ欲しい人が少ないガソリン車だからくれたんだろうよ』



数年前はガソリン車などの化石燃料が主流だったが、"魔石"を使用した車が登場してからは逆に

ガソリン車の需要が減少した。



魔石と言うのはポルタにしかない文字通り魔力と言うエネルギーを持った石である。



ある科学者集団が魔石の魔力を電気に変換する技術

を開発しその技術を電気自動車に組み込んだ結果、



欠点であったバッテリーの劣化がかなり抑えられ

しかも機構も単純だった為、値段も安くなり最終的には安くて性能がいい電気自動車が世に広まった。



そしてこの技術は発電機やその他の物にも利用された。



『お!村が見えて来たぞ』



真句がそう言うと俺と坂東は前に視線を向けた。

そこには多少なりとも草が生い茂っているが昔と

変わらない俺達の故郷があった。



『懐かしいなー、よくあそこの公園で遊んでたっけ...』


坂東の声は何処か嬉しそうな感じがした。


『懐かしい気持ちになるのは解るが印をつけた場所を思い出しとけよ!』



そうして車は峠道を下った。




『ん?なんか車が変な方向に停まってないか?』



峠道を下った途端坂東がそういった。

坂東が指刺した方向には、グシャグシャに壊れた

車があった。



『まだ中に人が居るかもしれねぇ、早く行こう!』



急いで俺達は車を降り、事故車の方へ行った。



案の定運転席には人が居た、しかもかなりの

重症だ。



『おい!大丈夫か?!』


『.......ぅ..ぁ....』



俺の呼ぶ声にその人はただ弱々しく答えるだけだった。

直ぐにドアを開こうとしても何故か開かなかった。



『ドアからじゃ駄目だ!窓から脱出させろ!』




真句が言った手段も出来るが窓は中途半端に割れており、しかも車の窓は強化ガラスで出来ていて脱出させるのは不可能に近かった。

そして坂東は救急車を呼び必死に場所を言っていた。




『俺の....事は.......良いからッ....トランクの...中身を...取ってくれッ...そして真実を知ってくれ.......』



そう言い運転席の彼は不自然なぐらい静かになった。



『おいッ!まだ死ぬなよッ!今救急車呼んでるか

ら!!』



俺の問い掛けにも反応しなかった。

内心では『助けられない』とわかっていたのかも

しれなかった、だがそんな事は考えたく無かったんだ。



そして俺は死の罪悪感と言う気持ちを抱えながら、

車のトランクを開けた。


中には、人の身長位ある横長のアタッシュケース

5つと1つのノートパソコンがあった。



そのタイミングで坂東の呼んだ救急車が来た。

救急隊が駆け付けたが時すでに遅しだった。



そして死亡が確認されると次は警察が来た。

事情聴取を受け、遭った事すべてを話した、

そして俺達は事情聴取が終わり、真句の車に乗ってその場を後にした。



『なぁ真句、さっき俺達が助けようとした人が言っていた事まだ覚えてるか?』


『覚えてるけど、それがどうしたんだ?』





『あのトランクの中身の内身全部、

持ってきちゃったんだよね....』


『『ハァッ!!?』』



何故かその人の話を聞いていない坂東も反応した。



『お、お前!何やってんだよ!!』


『何で人の遺留品取ってきてんだよ!』



『えぇ....だって話の流れ的に俺達が取っていた方が良いかなーって』



予想以上の反応に俺は動揺を隠せなかった。

そして俺が取ってきた物はノートパソコンだった。



『なんかこれまだバッテリーあるみたいだからさ、

見てみないか?』



『お前....非常識過ぎるぞ......』



『ま、まぁ良いじゃんか...少しくらい大丈夫だって』



以外にも坂東が俺に賛成した。



『はぁー、じゃあちょっとだけだぞ』



真句も心の芯が折れたのかすんなり諦めてくれた。

そして俺達はノートパソコンの電源を入れた。



『結構ファイルとか色々あるな』


『とりあえずデスクトップの右上から順に

見ていこう』




坂東のが言ったように俺は右上の映像記録をクリックした。

クリックした途端映像が始まった。



『何だこれ?真ん中の台に子供が仰向けで寝てるの

か?』


『いや、よく見てみろ、なんか拘束されてるぞ』



床と壁一面コンクリートで出来ており、窓は一切

無かった。

唯一ある出口らしい扉は閉まっていた。



『ちょっと待て、誰か入って来るぞ』



すると、扉の鍵を開けた様な音と共に扉が開いた。



扉から出て来たのは、スーツを着た男と汚れた

エプロンを着けた男の2人だった。



『ん?あのエプロンの人....なんか見たことある様な気がするんだが....』



真句がそう言ったのも頷ける、何故なら俺も見覚えがあったからだ。

俺と真句思い出そうとしていると、エプロンの男が

話し始めた。



『"ほう"、"今日は"中々"いい"品物"ですね。"

"アル"ビノ"の獣人"族しか"も!少年"で欠損が"無く

健康"状態も悪"く無い、うー"んPerfect!!

何も"かもがPerfect!!

............です"が、少"し臭い"ですね...そ"れが少し残念

"ですが、まぁ"でもそ"れは目"を瞑りま"しょう』



『申し"訳あり"ません藤本様、今度"からもう少"し

質の良い"業者を使"います。』




所々聴こえ辛かったが、話の流れ的にエプロンの人が客で、スーツ姿の男が提供者らしい。



『藤本?...........あ!思い出した!

こいつあの藤本羽加須だ!』



藤本羽加須、大企業「FMT」(藤本魔術工具)の

1代目藤本樫木の息子で2代目社長である。



10年前、魔石が発見され大企業や中小企業は魔石を取るためポルタに進出した。

魔石はポルタにしか生息しない魔物を倒す事で入手する事が出来た。



だが、魔物はアフトにある現代兵器では到底敵わない程に強かった。



実際、ある国が軍を率いて魔物を駆除しようとした事例があったが、結果は惨敗だった。



生き残った者によると、銃が効かなかったらしい。

幾ら魔物に銃弾を撃てども弾き返され、逆に仲間に当たるなどの事があった為、無暗に撃てずにいた。



だがポルタの人々は、軍があれだけ撃っても

倒せずにいた魔物をあっさりと倒してしまった。



そこで当時研究者だった1代目藤本が直接ポルタ人と交渉し、何とか魔物の毛皮と魔石を手に入れた。


そこからと言うもの1代目藤本は研究に明け暮れた。

彼の寝る間も惜しむ研究によって魔物が現代兵器で

倒せ無い理由が解き明かされた。



以外にも答えは単純で、魔物は魔力が宿っている

攻撃以外受け付けないと言う事だった。



彼はこの研究結果を世に伝えようと試みたが、不眠不休の研究によって心臓病を患ってしまい、

そのまま永い眠りについた。



そしてこの事実は実の息子である藤本羽加須に

よって公表された。

公表した内容は当然、他企業の耳にも入っていた。



それからと言うもの企業は魔石を埋め込んだ剣や斧等のポルタにある様な武器を作り、魔物に対抗していた。

だが、どれもこれもポルタ人が作った、武器の下位互換でどれも全く売れなかった。



一方で藤本側はこの事態を読んでおり、既にポルタ人と協力関係を築き、あっと言う間に使いやすく強い武器を量産し、今の地位を築いた。



『..............何でそんなお偉いさんがこんな場所に来てんだ?』



坂東が独り言の様に声を漏らした。



『この" ま"ま餓死"させるの"もイイで"すが、それでは"芸が"無い...久し"ぶり"の息抜"きですし"こん"な上物。じっく"り味わいな"がら"楽しませ"てもらいます』


そう言い羽加須は持っていた鞄の中からペンチを取

った。

そしてスーツの男が獣人の目隠しと耳栓を取った。


『い"い目"をしていま'すねぇ〜、まだ"貴"方の目に

は光がある、希望と言'うありも"しない"光がねッッ!!』



羽加須は、獣人の目玉をペンチで思いっきり潰し

た。

獣人の男は酷くもがき苦しんだ声を発した。


『う〜"んや"はりこの"瞬間は病み"つきになりま

す!久し"ぶり"のこ"の感触!血の"匂い!全てが私の本"能を掻"き立て――――』

『これ以上見るな!!』



すかさず真句は、映像を停めた。


映像を停めた瞬間、俺は吐気が込み上げ車を飛び出し、吐いた。



『ゔ、ゔぇぇぇぇぇ!』



今まで平和ボケしていた俺には、羽加須がやっていた事がまるで理解が出来なかった。

俺と同じ人間があそこまで化物になるなんて......

そう思いながら胃の中が空っぽになるまで吐いた。



一頻り吐いた俺は少し落ち着き、車に戻った。


『大丈夫か?薬都』

『あぁ.......多分...』



俺は坂東に視線を向けた。


坂東は酷く怯えていた、体は震え上がり目には若干涙が浮かんでいた。



『家まで送ってやるから着くまで少しは休んでてくれ』

『.......わかった、ありがとう』



そう言い真句は、車を走らせた。


































































































































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